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弊誌であるところのGame*Spark Publishingが着々と準備を進め、ついに2025年1月30日(パッケージ版は2月27日)に発売の近づくニンテンドースイッチ版『ウィザードリィ外伝 五つの試練』。本記事では骨太3DダンジョンRPGとして長年知られる同作を改めてスイッチ上でプレイした試遊レポートに加え、ディレクターでありGame*Spark副編集長でもある堀江 陽氏へのインタビューをお届けします。
迷う、迷う、迷う。そして取り戻していく脳内のGPS!
2023年10月にSteamで正式リリースされた本作は、3DダンジョンRPG『ウィザードリィ』シリーズの、他作品から完全に独立した設定で展開する外伝作品です。『ウィザードリィ外伝 戦闘の監獄』でも用いられたゲームシステムをベースとしながら、複数の独立したシナリオを1本のソフト上でプレイできます。
このスイッチ版では、Steam版で実装されたデフォルトシナリオ「偽りの代償」に加えて、「旅人の財産」「満月王の子供達」「欠けた大地」「ガルヴァンの酢漬け男」「灼熱の車輪」を含む計6本のシナリオを収録。更にユーザーが制作した「ユーザーシナリオ」もダウンロードしてプレイ可能です。
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そんなタイトルの試遊会に参加した筆者は、20代のゲームライター。初めて触れたRPGと言えば、小学1年生の頃に購入した『ポケットモンスター ルビー(2002年発売)』です。ゲームをプレイし始めた頃から、常に手元には情報の詰まった攻略本がありました。やがて家にインターネット回線が繋がると、ゲームをプレイしながら「ゲーム攻略Wiki」を見るようになり、最近でも常に右下にゲーム内マップが表示される『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』などの作品を楽しんでいます。
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基本的なゲーム内容はシンプル。君は、まず町外れの訓練所で、ランダムな初期能力へのボーナスに一喜一憂しながら思いを込めて自分のキャラクターたちを作り上げる。次に酒場へ赴き、最大6名のパーティを結成するのだ。そこに至るまでの物語がゲームで示されることはない。ゲームシナリオが提示する目的を超えた、彼らが共に迷宮に挑む本当の理由を知っているのは君だけだ。(Steamストアページより)
しかし、本作はストアページの説明文にあるように“シンプル&ハードコア”なゲームです。「プレイヤーにとって便利な環境」が用意されたゲームをプレイしてきた自分にとって、古典的ダンジョンRPGの要素をそのままに残した『ウィザードリィ外伝 五つの試練』は、良い意味で「不便さが詰まった作品」でした。画面上に地図はなく、ひたすら同じような景色のダンジョンを進み続けなければならないため、迷う迷う迷う。どこへ辿り着けばいいのか、誰もヒントを与えてはくれません。
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ダンジョン探索中にパーティが全滅したら、王様的な人物が「教会」に引き戻してくれる……といったこともありません。プレイヤーは別のキャラクターを再び6人作成し、全滅した場所まで行って彼らを救出しなければならないのです。位置を覚えて少しずつ進もうとしても道中で敵に襲われるため、そうなれば戦闘に思考を切り替えなければならず、迷路のようなダンジョンに頭を迷わせながら敵と戦っていく感覚を、これでもかと言うほど味わうことになりました。
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「現在位置がわからない問題」に対し、昔からこのジャンルを遊んでいた先人たちは別途用意した紙に迷宮の地図を書いていたようなのですが、この時点ではそんなことを知る由もない筆者。そんな中、ダンジョン探索を続けていると筆者を救うありがたい要素を発見。「魔法使い」の「ウィザードアイ」という呪文を唱えることで、ダンジョン内にある「探索済みの空間の情報」と「パーティの現在位置」を把握できるのです。
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ようやく位置の手がかりを掴んだ筆者一行を立ち塞いだのは、鍵のかかった扉。「これは!」と気づいた筆者は、パーティのメンバー「盗賊」の力を使って鍵をこじ開けることに成功。何度も何度も鍵開けを試みなければならない扉もあり、本当にこれで開くのだろうか……と悩む場面もありましたが、10回ほど繰り返すことでようやく鍵を解除。ある意味でリアルな「鍵をこじ開ける感覚」を味わうことができました。
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他にも力やHP値の高い「戦士」や回復呪文を扱える「僧侶」といったキャラクターたちの特性をうまく組み合わせ、なんとか第一階層の探索をおおよそ終わらせることができました。
ニンテンドースイッチという手に取りやすいハードで、昔ながらのRPGを味わえる『ウィザードリィ外伝 五つの試練』。扉を開けたときに特別なエフェクトがかかることもなく、自動でダンジョンのマップが表示され続けることもない本作は、現代のゲームで当たり前な「遊びやすい環境」からプレイヤーを一歩引き離します。
自分の現在位置や方向を覚えて進んでいく感覚を少しずつ取り戻しながら、先へ先への進んでいくゲーム体験……それはまさに「脳内に地図を作る力」を失いかけていた現代人の筆者に、鋭く切り込みを入れてきました。何が飛び出るか分からない暗いダンジョンへ迷い込み、仲間と共にじっくりと奥深くまで進んでいく体験は「3Dアクション×オープンワールド」ジャンルなどの現代的なゲームでは味わえないものでした。
特色豊かなその他シナリオもぜひ楽しみたいところ!
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また、今回の試遊会ではもちろんキャラクター作成も体験できました。筆者は好きなアニメのキャラクター「葬送のフリーレン」より、知性の高い長命エルフ「フリーレン」を意識したキャラクターを作成。『バルダーズ・ゲート3』などのRPGに近い感覚で楽しめます。
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今回は初心者向けのシナリオ「偽りの代償」をプレイしていましたが、メインストーリーとなる「五つの試練」や、追加シナリオ「戦闘の監獄」「慈悲の不在」、そのほかファンが作り上げた特色豊かなユーザーシナリオをダウンロードして楽しむこともできます。
『ウィザードリィ外伝 五つの試練』ディレクター堀江 陽氏へのインタビュー
最後に、本作のディレクターである堀江 陽氏に実施したインタビューをお届け。Game*Spark副編集長でもあり、ニュースデスクとしての記事制作も担当している同氏に『ウィザードリィ外伝 五つの試練』について質問を投げかけました。
――Steam版は2023年10月にリリースされていましたが、その発売の際に感じた「手応え」についてお聞かせください。
堀江: ユーザーを楽しんでいるところを見られたことが、一番嬉しかったです。本作は「古典的なダンジョンRPGの魅力」をあえて残したままの作りになっているので、万人が楽しめるゲームではないことは承知していました。しかしながら、Steamでの評判やスイッチ版での予約状況を見ると、想像以上に多くのユーザーが期待を寄せてくれていることを実感でき、開発の励みとなりました。
そして「今までダンジョンRPGというジャンルに馴染みがなかったけれども、本作から興味を持ち、ジャンル全体に触れるきっかけになった」という声もいただくことができ、開発チームとしてもやりがいを感じています。
――Game*Sparkの運営と本作のパブリッシングを両輪で行ったことの相乗効果についてお聞かせください。
堀江: やはり、リリース時の他メディアに向けた対応等はGame*Sparkというメディアを運営していた経験が強く活きています。そして“ハードコアゲーマーはどのようなものに興味・関心を持つのか”と日々向き合ってきた経験は、ディレクターとしてゲームの仕様を提案する際に、大いに役立ちました。また、今回のパブリッシングを通して「実際にゲームを作ってみないとわからないことや思いがけない苦労」をたくさん経験することも出来ました。これらの経験をGame*Sparkというメディアの「ゲームを見る目」に活かしていきたいですね。
――ニンテンドースイッチ版『ウィザードリィ外伝 五つの試練』のリリースを期待しているユーザーに向けてコメントをお願いします。
堀江: 本作はニンテンドースイッチのソフトでは珍しく、非常に古い作りのRPGです。現代の他の作品ではなかなか味わえない「迷う感覚」や、用意されたギミックに頭をひねらせる体験が詰まっています。また、ニンテンドースイッチ版は更にたくさんのユーザーに手に取ってもらいやすいよう、ゲーム内マニュアルを加えたり、使用するボタンのガイド表示をより充実させたりしています。
今まで「ダンジョンRPG」というジャンルに触れたことのない方にも、ぜひこの体験を味わっていただきたいです。
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ニンテンドースイッチ向け『ウィザードリィ外伝 五つの試練』ダウンロード版は2025年1月30日に発売予定でニンテンドーeショップにて予約受付中です。パッケージ版は2025年2月27日にリリース予定です。パッケージ版の各販売店の予約特典詳細などは公式サイトをご確認ください。
『ウィザードリィ外伝 五つの試練』ダウンロード版『ウィザードリィ外伝 五つの試練』パッケージ版
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