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ドイツのインディー開発者のGreenGuy氏は、自身が音楽と翻訳を除きほぼ単身で手掛けたSRPG『Our Adventurer Guild』について、2024年12月9日の日本語翻訳実装後、半月程度における売れ行きを明らかにするとともに、その翻訳に至った内情についての報告を行いました。
ファンタジー世界を舞台にした同作は、亡き友人の遺志を受け、冒険者たちが集うギルドのマスターに就任したプレイヤーが、様々な冒険者を集めてパーティを結成させ舞い込む依頼を攻略、やがては友人の死の真相やその裏にある陰謀へと立ち向かっていく、ターン制の戦闘が特徴のシミュレーションRPG。
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キャラクターの死亡が永久的なもの(オプションで無効化可能)であったり、大半の冒険者や、ストーリーに関わらない依頼はランダム生成であったりなどでリプレイ性が高く、冒険の合間には限られた資金の中での冒険者やギルド自体の強化や、冒険者たちに起こる様々なトラブルの対応などマネジメント要素も含んでいます。
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弊誌の取材に対し「世界で2番めに日本人に何故か熱い注目あびたため」として翻訳に至った経緯を説明していた同作ですが、今回氏が新たに明らかにしたところによれば、実は最初の検討時点では日本からのウイッシュリスト数は“世界で2番め”とはいうものの実数としては3000程度だったとしています。そしてゲーム内の文章量はおよそ20万単語(この数字は規模の大きめなタイトルに近いものです)。
相当な翻訳費用がかかる事も併せ、この規模では「一般的には避けるべき」選択肢だろうと考えられうる日本語への翻訳ですが、実現したのは2024年4月12日のゲーム正式版の売れ行きがウイッシュリストからの想定の数字以上に好調であったため「賭けに出た」結果だと氏は語りました。
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なお、この際決め手となった理由のひとつは「人気のあるSRPGタイトルは日本産のものが多かった」。同作が日本人に受ける可能性が高いと睨んだからなのだとか。結果として日本語への翻訳計画が明らかになったあと、日本語実装直前の段階ではウイッシュリスト数は4倍近い11000超えに。日本語実装後3週間ほどの12月末の段階では日本からの売上本数は7千本近くで売上額も計画時の7倍ちかく、ゲーム全体の売上に対して10%を超えるほどになったとしています。
参考として、2024年12月段階のSteamにおける日本語使用者は2.53%であり、10%という数字はSteamの人口分布に対し大きく上回る結果です。
8月21日から3ヶ月半ほどで行われた翻訳作業は当初簡単に終わると考えられていたものの、予想に反し多数の技術的な問題に直面してしまったのだそう。一方で翻訳面では同作のプレイヤーでもある日本人のジャーナリストの紹介を経て「素晴らしい翻訳会社」に恵まれたとしており、投稿のコメントではLQA(編注:Linguistic Quality Assurance/言語品質保証。実際にテキストデータ収録後のゲームをプレイし、翻訳の質向上や不具合修正を図ることを指します)を通じ素晴らしいフィードバックを得られたことを語っています。
(編注:翻訳を担当したのはMatsurika Games。『鳥類弁護士の事件簿(ニンテンドースイッチ版)』『Critter Cove』『Mirthwood』などのほか、同じくドイツ産のコアゲーマー向けのインディー宇宙SLG大作『X4: Foundations』も手掛けています)
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努力の甲斐もあってか、2025年1月11日の段階でSteam上の同作の、日本語実装直後で日本人の多くのレビューが含まれるだろう直近30日の評価数は150件、94%好評の「非常に好評」。
内容面では翻訳の質の良さや、それが引き出すメインストーリーの王道的な楽しさ、ランダムイベントが生むキャラクターへの感情移入、クリアまで70~100時間近くになるボリュームだけでなく、そもそものSRPGとしてのバランスの良さについて語る声が多く、SNSでは「神ゲー」の声も複数がみられます。
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すでに翻訳費用も日本からの売上で回収しきった、とする氏。他の非英語圏向けの翻訳の計画も新たに進行中であるとしています。同作では日本語実装以降も翻訳修正を含め精力的に更新が行われており、本日1月11日にも聖騎士・盾騎士系クラスの強化やさらなる翻訳修正を行うアップデートが実施されています。
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今後きっかけがあればさらに話題になりそうな『Our Adventurer Guild』はSteamにて1,700円で配信中。Mod機能が今後予定されている他、その後にDLCの開発も検討される予定です。なお、弊誌では同作のプレイレポを掲載しておりますので、併せてご覧ください。
※UPDATE(2025/1/12 12:41):内容がよりわかりやすくなるよう、いくつかの編注を追記しました。