中国のAI企業・DeepSeekの低コストなAIアプリが世界的な注目を集めている影響で、ゲーミング向けのグラフィックボードメーカーと知られる、NVIDIAの株が米国株式史上最大となる時価総額・約5,900億ドル(約91兆円)減少の暴落を見せました。
米国株式市場から最大1兆ドル流出か
DeepSeekは2023年に設立されたばかりの中国新興企業です。1月10日にリリースしたアプリに搭載された生成AIモデル・R1は従来のものより高い精度を出すにもかかわらず、主張されている開発費用は約560万ドル(約8億6,500万円)、運用コストも数分の一と、これまで米国企業が巨額の投資を行ってきた裏で非常にローコストとなっています。
中国は米国からの最先端AI半導体の輸出を規制されるなど、AI開発能力を制限されると思われましたが、R1は旧型の半導体で開発されたためコストを抑えられた模様。DeepSeekのアプリは生成AI大手・Open AIが手掛けるChatGPTを抜きiOS App Store無料アプリランキングで1位を獲得しました。ただし、なかにはAIが扱える内容における中国的な「規制」を懸念する声も。(ただし、これは欧米的な規制のもとにある既存AIでも根本的な意味では変わりません)
中国に出し抜かれた形の米国ですが、株式市場にも大きな打撃を与えています。AI半導体市場を牽引していたNVIDIAは17%下落し、5,900億ドル(約91兆円)の暴落。Google親会社のAlphabetが4%安、マイクロソフトが2%安、ソフトウェア企業・オラクルが14%安、半導体企業・ブロードコムが17%安となり、米国株式市場全体では1兆ドル(約150兆円)規模が流出したという見方もあります。
NVIDIAは先日発表された「Geforce RTX50」シリーズにおいてもAI対応能力の向上を謳っており、同分野へは全力投球の様相を見せ続けています。一方で、今回の件によりこれまで高い優位性を持っていたNVIDIAを大きく脅かすライバルの出現により、関連需要が大きく減少する可能性があります。A需要の減少は近年グラフィックボードの高価格化や品薄に苦しみがちだったゲーマーにとっては良し悪し、といったところかもしれません。
※UPDATE(2025/1/28 11:45):本文中最初の日本円換算が間違っていたため修正しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございます。