大きな期待を受けて発売した『Atomic Heart』は良いところと悪いところがはっきり分かれたゲームでした。共産圏的な建物や不気味なロボットたちのデザインなどは本当に素晴らしい部分でしたが、倒した敵がすぐ復活するオープンワールドや面倒なパズルの連続など退屈な時間がかなりの割合を占めていたことも否定できません。
そんなこともあって筆者は本編をクリアして以来本作から離れていましたが、この度パブリッシャーにプレイ環境を提供いただき、DLC第3弾となる「Enchantment Under the Sea」を先行プレイする機会をいただきました。
本記事では、このDLCのプレイレポートをお届けします。なお、記事中には本編からDLC第2弾までのネタバレが含まれるためご注意ください。
久しぶりでも大丈夫!最初にダイジェストあり
本DLCはこれまでのコンテンツと直接ストーリーがつながっています。冒頭のダイジェストがかなり丁寧に解説してくれるので、筆者のようにDLCを遊んでいなくても置いてきぼりにはなりません。
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本編のラストで、相棒だったチャー・ルズに裏切られてしまった主人公P-3。チャー・ルズには最初から人類を掌握しようとする企みがありました。チャー・ルズの企みが達成間近に迫る中、P-3は死んだ妻・エカテリーナ(コードネーム・ブレスナ)の意識に呼び起こされます。ブレスナは銀色ボディの「双子」の中にあったことが本編で判明しましたが、このDLCでは元々チャー・ルズが居座っていた左腕のグローブに入ることとなります。
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本DLCでのP-3の目的は、コレクティヴ・ニューラルネットワークのシステム全体を監視し、システムから姿を消すことができる”指輪”を探し出すこと。そして、チャー・ルズの企みを阻止することです。
なお、もし本編でチャー・ルズと別れる選択を取った場合は、世界線が分岐。その後P-3がどうなったかはDLC第1弾「Annihilation Instinct」で語られます。
ワイヤーアクションにあのボスとの戦闘も!!
目覚めてそうそう、都市は大変なことになっています。チャー・ルズによりすべての戦闘ロボットが起動し、それがすべてP-3を襲ってきます。そのひとつとして、トレイラーなどで確認できた「ロボ・ガール」とついに戦うことができます。
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「ロボガール」は笑顔と怒り顔が表裏一体と鳴っている顔面が不気味な巨大ロボット。なんとなく男の子かな?と思っていましたが、女の子だったんですね。リボンや羽など、可愛らしいパーツとのギャップも感じられます。
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戦闘中にたくさん話しかけてくるのですが、性格はサイコパスロボという感じ。「指もしゃぶっちゃいたい美味しさ!」「人間ひとりで一世帯分のお腹が満たせるんですよ!」といったセリフからわかるようになぜかロボットなのに人肉食推し。ベタな性格ではあるものの、ワクワクしますね。
この戦闘では、新たなアクションである「ウィップ」を駆使します。ロボガールは大きいため狭いフィールドで攻撃を避けることは困難。そこで、相手が攻撃の予兆を見せたら空中に浮いている小さな飛行ロボットにウィップを伸ばし、一時的に空中に退避して回避するという流れを行います。
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ある程度避けていると、オーバーヒートしたロボガールは弱点を露出。そこを狙って銃を撃つことでダメージを与えることができます。敵のターンと自分のターンを交互に行う一般的なアクションゲーム的ボスですね。こちらもありがちではありますが、ぴょんぴょん飛び跳ねながら避けるのはやはり楽しいです。
本編より良いかもしれないDLC
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本DLCの戦闘には、テンポの向上という進化を感じました。ウィップは敵を引き寄せることができますし、新たな近接武器「サンダークラップ」は本編の近接武器より威力高め。おまけに、ポリマーの炎を射出できる「ブレイズ」スキルも使えるようになるため、敵にすばやく近づいて効率的にダメージを与えやすくなっています。本編の戦闘は比較的地味で敵の耐久力も固く、ダラダラ続きがちでしたが、ここは良い変化と言えるでしょう。
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ウィップは近年のフックショットやワイヤーアクション……例えば『Apex Legends』のパスファインダーなどと比べると、自由度はかなり低め。フックは特定のオブジェクトや場所にしか使用できません。とはいえ、交互に電車が来る線路をウィップで行き来して避けるなど新たなアクションを活かした仕掛けはどれもスリリングで好感触です。
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ロケーションとしては既存エリアが多めですが、新規エリアとなる水中施設はワクワクさせてくれます。中には人語を喋れるようになったイルカが話しかけてきたり、イルカショーの舞台が特殊な形状をしていたりと、本作の大きな魅力であった独特の設定・デザインのセンスが再び楽しめます。
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筆者が今回最も気に入ったのは、元夫婦同士であるP-3とブレスナの掛け合いです。この2人は元夫婦なので、昔話を交えたり、皮肉を言い合ったりと、チャー・ルズと比べるとどこかくだけた会話が展開されます。
あくまで職務上の関係として早く任務を遂行させたいブレスナと、仲の良い夫婦を続けたいP-3の会話は少しだけラブコメチックな雰囲気もあり、思わずにやけてしまいました。
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他のキャラクターも見逃せません。本編からカムバックするとある名キャラにはクスッとさせられますし、本DLCの物語において重要な鍵を握る人物たちも魅力的。科学者「ナスティヤ」は独特な衣装と赤い髪がクールですし、「ハンター」のくたびれたシブい中年感も最高です。どのように物語を紐解いてくれるのかは、ぜひプレイしてお確かめください。
『Atomic Heart』本編は開発の長期化もあってか、どこかまとまりがない印象を受ける仕上がりでしたが、このDLCはかなりまとまりのある仕上がりになっていて、フィードバックを受け止めて開発したことがわかります。
本編の悪かったところを極力省き、良かったところだけを再び楽しめるようなこのDLCは、「がっかり」という感想を抱いた人も遊んでみる価値があると感じました。
DLC第3弾「Enchantment Under the Sea」は現在全プラットフォーム向けに配信中。DLCがセットになった「Atomic Pass」のほか、単体購入も可能です。
¥3,967
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)