2025年2月3日に開催された第67回グラミー賞授賞式にて、初代『ウィザードリィ』のリメイク作品『Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord(ウィザードリィ 狂王の試練場)』がゲームサントラ部門で受賞しました。
同作は早期アクセスでは、ファミコン版の羽田健太郎氏の楽曲アレンジを使用していました。2024年の正式リリース時には、タイトル画面以外の音楽がWinifred Phillips氏の楽曲に差し替えられるなど、リメイク版ならではの要素も盛り込まれています。
そんなグラミー賞授賞のニュースから数日後、筆者は地元の中古屋でファミコン版『ウィザードリィ』を発見。なぜかリーズナブルな価格となんとも不思議な偶然に奇妙な縁を感じて購入し、プレイしてみることにしました。
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3Dダンジョンが苦手という思い出
『Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord』や『Wizardry Variants Daphne』、そして2025年1月30日にニンテンドースイッチ版がリリースされたイード版『Wizardry外伝 五つの試練』など、令和の時代にさまざまな展開を見せる『ウィザードリィ』。筆者はこれまでほとんどシリーズに触れる機会がありませんでした。
その理由(言い訳)のひとつに「3Dダンジョンが苦手」というものがありました。幼少時に『ポートピア連続殺人事件』『がんばれゴエモン』などの作品に登場する3Dダンジョンでも大いに迷った記憶もあります。自身が方向音痴であると認識してからは、漠然と“苦手なジャンル”として回避するようになっていました。
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そんな自分が歳を重ね、あらためて3Dダンジョンに向き合ったのが『世界樹の迷宮』でした。ここでマッピングを学びながら、少しずつジャンルに慣れるよう努力し、その後はSteamなどでいくつかの同ジャンル作品をプレイしましたが、やはり根本の方向音痴のせい(という言い訳)で、投げ出すこともありました。
今回ファミコン版『ウィザードリィ』をプレイするにあたり、全力で楽しもうと決意。先人の知恵に倣い、方眼紙ノートなどを用意して挑むことにしました。ちなみにこの作品の内容に関する細かい知識はほとんどなく、吉田戦車氏が描いていた4コマ漫画でいくつかネタにされていたな……というくらいです。
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そしてリーズナブルだった理由ですが、カセットを確認してすぐ納得。
今回中古屋で発見したカセットには、改造して外付けでボタン電池を付けるという工夫がなされていました。シリーズに詳しい編集者にそのことを話したところ「(持ち主は)ガチな人ですね」と言われ、そんな気合の入った人の後継として、対称的なガチ初見の自分がプレイしていいのかとちょっとばかり緊張……!
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いざ迷宮!早くも洗礼を受ける
さて、いよいよ37年前のゲームであるファミコン版『ウィザードリィ』プレイの始まりです。メニューオプションで、名称の日本語/英語切替や画面表示などの設定があるのが印象的でした。イード版『Wizardry外伝 五つの試練』でも同じような設定があるのはこういうことだったのか!
さっそくキャラクターを作成します。種族と属性を決め、ステータス割り振りして職業を選択。6人パーティーなので、戦士2人と盗賊、魔法使い、僧侶、ビショップを作って酒場でパーティーを組むことに。しかし、善と悪の属性で同担拒否されてしまいます。仲良くしてよ!仕方なく属性を善と中立で統一しました。
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ボルタック商店で最低限の装備を購入。今回の秘策である方眼紙ノートの準備も万端です。カトウ・オオキ・タキ・ヤマダ・コウノ・タカハシのパーティーでいざダンジョンへ挑みましょう!(ネーミングセンスがないのは大変申し訳なく思います)
最初の通路や近くの部屋を探索してモンスターと戦います。しかし、3戦目で奮戦虚しくタキとヤマダが死亡。泣きながら城へと戻り、寺院で蘇らせてもらいます。なけなしのお金が早くも無くなった上に、タキは灰になりました。有名すぎる展開を早くも体験できてテンションも上がりますね。
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お金がないので新しい冒険者としてウエノを作成。タキの犠牲を心から反省し、まずはより慎重に、探索よりも育成を優先することにしました。レベルアップは必要な経験値を稼ぎ、城の宿で寝ることで行えます。少しの成長でも本当に心強いですが、ステータスダウンすることもあるのですね。怖い。
こうしてぼんやりとした知識でスタートし、早くも1人の犠牲を出した冒険が始まりました。
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マッピングって難しいですね
ゲーム中はダンジョンを一歩進むたびに方眼紙ノートに道を書きながらプレイしていました。しかし、なにぶんこういった作業をまともにやったことがない筆者は、どう書いていいのかわからず、とりあえず『世界樹の迷宮』方式で道やドア、イベント位置などを描いていきます。
しかし、ここで問題が発生。筆者の記念すべき最初のマップは、たった数十歩進んだだけでもう書けなくなってしまったのです。これは「最初の階だしマップもそんな広くないだろう」などと、ぬるい考えだった筆者が、ノートの中央から書き始めるという判断の上で発生した事故でした。
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その後も何度かマップを書き直しながら、少しずつ冒険を進めていきます。便利だったのが位置座標を示してくれる魔法「デュマピック」の存在で、この魔法のおかげでループなどのギミックなどもある程度理解できました。測量のための冒険なども行っていましたが、これって一般的ですかね?
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慎重に進める中で「退却すべきポイント」「倒せる敵のときに全力で、逃げるときは逃げる」などの自分なりのセオリーを見つけ出し、確実にマップの開拓と育成を進めていきます。何度か仲間が死んだりしたものの無事に蘇生できることが多く、なんとか初期パーティー(タキ以外)で冒険を続けています。
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強敵との戦いやトレハンが面白い!
ファミコン版『ウィザードリィ』を遊んでいて驚いたのが、マップ内に宝箱がないというものでした。イベントで入手できるアイテムなどはあるのですが、他の財宝は基本的に敵との戦闘後に入手できるもので、リスクを負わなきゃリターンは得られないんだな、と感じます。
宝箱の解除はシーフのヤマダ、アイテムの識別はビショップのウエノが活躍してくれます。序盤はどんなアイテムでも嬉しく、冒険の収入と回復や蘇生の出費のバランスがプラスに転じたあたりからゲームがだいぶ安定してきました。いかにして相手の攻撃を無力化するかが大切なんですね。カティノとモンティノが大好きです。
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プレイを重ねていく中で、強敵と戦いで試行錯誤し、宝を得て、より強くなった上でさらなる冒険や戦闘に挑むという、RPGの基本的な楽しさが詰まっているのを少しずつ感じています。敵の種類やマップ構成、ギミックなども驚くほど多彩で、これが1981年に(オリジナル版が)出たんだな……と驚きを隠せません。
不意打ちでパーティーが半壊滅したり、死ぬ気で手に入れた装備が呪われていたり、レベルアップでステータスが下がりまくったり、プレイ中はトラブル続き。それでもゲーム性を理解していくことで、確実に進められるのは実に面白いなと思います。
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なお、プレイしていく中で、友人から多少アドバイスを貰ったり、ワンダースワン版の公式サイトで呪文名を学習したりなどしたことを白状しておきます。それでも普通に難しく、本当にやりごたえしかない……!
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今回、初見でファミコン版『ウィザードリィ』をプレイしました。じっくりと遊べるゲーム性は成長を実感でき、それでいて一瞬の油断で壊滅しかねない冒険は、とても緊張感のあるものでした。
末弥純氏によるモンスターデザイン、そして羽田健太郎氏による音楽なども印象的です。特に戦闘勝利時のBGMが達成感が抜群で、現時点では“2025年一番好きな音楽”になっているかも知れません。成功体験って重要ですね。一方で、最初に描いたマップの酷さは忘れることはないでしょう。
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今回中古屋で発見したのは、ファミコン版のシリーズ3作品です。いずれ他の2作品もプレイして、自分なりの成長が描ければいいな……と思っています。その時は、結局お蔵入りになった悪属性の仲間や、かなり後半まで灰で放置していたタキの活躍に期待したいところです!
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◆余談
今回プレイ後に編集部のシリーズガチ勢に報告しましたが、そこでファミコン版のとんでもない事実が明らかに……!
筆者:すごい難しかったけど面白かったです!
編集:良かったですね。ちなみにですが、ファミコン版の初代特有の不具合がありまして、プレイヤー側のACは回避率としては一切機能してないんです。
筆者:は!?
編集:特殊効果は限定的に機能してますが、ACのためだけに装備しているものは、全部無駄です。
筆者:え、じゃあACの値に一喜一憂しながら装備を考えてた俺が馬鹿みたいじゃないですか……?
聞けばこの“種明かし”をするのを楽しみにしていたとか。でも、そんな不具合がありきでもしっかり最後まで楽しめるファミコン版『ウィザードリィ』の凄さを教え込まれたということでしょうね!