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コーエーテクモゲームスから、PS5/PS4/スイッチ/Xbox Series X|S/Steamでリリースされた『無双アビス』は、「真・三國無双」シリーズと「戦国無双」シリーズでおなじみの英傑たちを召喚して亡者たちと戦い、地獄の最奥を目指すローグライト無双アクションゲームです。
「発表と同時のリリース」、「見下ろし型ローグライトアクション」、そして「ミドルプライス」という、同社としては新しいものづくしな本作はどのようにして生まれたのか? プロデューサーを務める平田幸太郎氏に話をうかがいました。また、インサイドではプレイレポート記事も掲載していますので、あわせてご覧ください!
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◆「無双」×ローグライトというありそうでなかった組み合わせが実現!
――まずは簡単に自己紹介をお願いします。
平田幸太郎氏(以下、平田)コーエーテクモゲームス、ω-Force(オメガフォース)の平田です。ゲーム「進撃の巨人」シリーズにおいてリードプランナーとディレクターを務め、その後に和風ハンティングアクション『WILD HEARTS』でもディレクターを務めました。プロデューサーを務めるのは『無双アビス』が初となります。
――『無双アビス』が企画された経緯を教えてください。
平田『WILD HEARTS』が一段落して、次はローグライトのゲームを作りたいなと企画を立てたのがきっかけです。企画当初はまったく別のキャラクターや世界観を考えており、「無双」シリーズと組み合わせるという発想は対案のひとつにすぎませんでした。
しかし、いざ思いついてみるとローグライトと「無双」はとても相性がよいことに気が付き、この案を推し進めて制作されたのが本作です。
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――近年、ロープライス~ミドルプライスの価格帯でローグライトは人気ジャンルのひとつになっていると思います。平田氏が実際にプレイして印象に残っているタイトルはありますか。
平田『HADES』、『Vampire Survivors』、『バックパック・バトル』などはすばらしいゲームだと感じました。ただ、私が最も大きな影響を受けたのは『Slay the Spire』だと思います。この1本だけで数百時間は遊んでいるんじゃないかな……。
――それはかなりハマっていますね! ローグライトの魅力というのはどういうところにあると感じていますか。
平田やはり「リプレイ性の高さ」にあると思います。この魅力はどのような要素から生まれているのかを分析し『無双アビス』にも取り入れています。
――「もう1回だけ」、「次こそは」とついついやり込んでしまいますよね。その「リプレイ性の高さ」というのは、どういうところから生まれるのでしょうか。
平田具体的には3つあり、「プレイの戦略性が高いこと」、「次はクリアできそうだという期待感を抱かせてくれること」、そして「達成感や爽快感を定期的に与えてくれること」だと考えています。この3つ要素がうまくかみ合うと、高いリプレイ性を生み出してくれるのではないかと。
――人気のローグライトゲームを見ると、先ほど名前が挙がった『Vampire Survivors』はボタンを押さずとも攻撃が自動で行われます。それに対して『無双アビス』は従来の「無双」シリーズのようにボタンを押して攻撃するシステムですが、そこはすんなりと決まったのでしょうか。
平田実は、初期の試作段階では『Vampire Survivors』のように、アクション操作を最低限にする操作性も検討していました。しかし、「自分で攻撃している」という実感や感触がないと「無双」シリーズを題材にする意義が薄くなると考え、ボタンを押して攻撃するシステムを採用しました。
ただ、従来の「無双」シリーズとは少し異なる操作もあり、『無双アビス』は「攻撃ボタン押しっぱなしでも連撃(コンボ)がつながる」ようになっています。連打でも押しっぱなしでも、繰り出す攻撃の性能に違いはないので、お好きな操作スタイルで気軽に遊んでもらえればと思います。
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――『無双アビス』ならではの広報戦略や価格設定についても教えてください。発表と同時にダウンロード専売でリリース、ミドルプライス(税別2,700円)に分類される価格設定は、コーエーテクモゲームスのタイトルとしては珍しいように思えます。
平田「低価格帯のローグライト」というジャンルはコーエーテクモゲームスとしては異色のタイトルになるので、広報展開にもサプライズを持たせたいというのは当初から考えていました。
また、当社は低価格帯のタイトルを制作することはほとんどないのですが、ローグライトはロープライス~ミドルプライスで提供されるタイトルがほとんどですよね。だから『無双アビス』も多くの方に遊んでもらうには、それに準じた価格設定にするのは必須条件であると考え、このような価格になりました。
◆ローグライトファンと「無双」ファン、それぞれに刺さる『無双アビス』の魅力とは?
――『無双アビス』は、ローグライトファンと「無双」シリーズファンのどちらもが楽しめるタイトルではと感じました。「ローグライトファンに向けた無双シリーズとしての魅力」と「無双シリーズファンに向けたローグライトとしての魅力」をそれぞれ教えてください。
平田ローグライトファンの方に向けては「100人に及ぶプレイアブルキャラを使った爽快アクション」を楽しんでいただければと思います。これは「無双」シリーズを長年展開してきたコーエーテクモゲームスだからこそできることで、それぞれモーションやアクションがしっかりと作り込まれたプレイアブルキャラがこんなに多く登場するローグライトタイトルは、なかなかないのではと思います。また、ローグライトアクションは自分(操作キャラ)をビルドアップしていくゲームが多いと思いますが、本作は「英傑と呼ばれる仲間を集めてパーティーとして強くなっていく」ので、そこも新鮮に感じられると思います。
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「無双」シリーズファンの方に向けては、「クォータービュー(見下ろし型視点)での「無双」アクションもこんなに面白いんだよ」という感覚を味わっていただければと思います。「無双」といえば爽快アクションですが、本作では本家「無双」シリーズには無い、オーバーでド派手なエフェクトなどを盛り込み、まるでマンガやアニメのように敵が吹っ飛びまくる、新しい爽快アクションを実現しています。
一方で、本作はローグライトならではの「ミスや全滅を繰り返しながらキャラとプレイヤーの両方が少しずつ成長していく」スタイルのゲームになっています。本家「無双」シリーズと比べると、最初は難しいと感じてしまう方もいるかもしれません。
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本作はプレイヤーの腕前を上げるより、道中で出会う英傑たちのパーティ編成を工夫することで、一気に強くなれるような仕組みになっています。英傑たちはそれぞれ固有の攻撃方法や能力を持っていますので、自身の戦略にあった英傑を選ぶのが重要です。
とはいえ、「そんなことを言われてもよくわからない」という方もいらっしゃると思います。そんなときはパーティー編成時に選択できる「エンマのおすすめ編成」を活用してください。パーティーの強さを示す「戦闘力」が最大値になる編成を自動的に組んでくれます。遊んでいくうちにやがて「エンマのおすすめ編成よりも、こちらの編成の方がよいのでは」と考えられるようになると思います。そこが、本作のローグライトの魅力にハマる瞬間です。ローグライトならではともいえる戦略性や試行錯誤を是非楽しんでいただきたいです。
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――“おすすめ編成よりもよくなる編成”は、具体的にどのようなキャラや構成が挙げられるでしょうか?
平田キャラの例をひとつ挙げるなら「戦国無双」シリーズの石川五右衛門ですね。石川五右衛門は「特定条件で敵を倒すとお金が大量に手に入る」という固有戦法を持っています。彼を仲間にすればお金が大量に手に入るので、ビルドを長期的に成長させる作戦を取れます。
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――しかし、石川五右衛門自身は攻撃面や防御面に大きく優れているわけではないので「戦闘力」には反映されず、おすすめ編成ではなかなか選ばれない……というわけですね。
平田そういうことです。本作には、このように隠された戦略が無数に散りばめられています。我々開発陣としても、SNSなどを通じて「このキャラが強い」、「このパーティー構成が強い」というような情報が、ユーザーの皆様からたくさん発信されることを期待しています。おすすめ編成に出ないどころか、こちらが想像しなかったような組み合わせが出てくるかもしれませんからね。
――100キャラクターの中から操作キャラ1人・召喚キャラ6人の計7人を選ぶとなると、ざっと160億パターンはある計算になります。事前の想定はしきれない数ですよね。
◆今後も無料アップデートでプレイアブルキャラが続々追加!
――設定面についても教えてください。仏教に基づくイメージの地獄は日本人にとって親しみがあるとも言えますが、舞台設定はどのような経緯で決まったのでしょうか。
平田既存のローグライトゲームにはあまり見られない世界観にチャレンジしたかったからです。制作当初は舞台設定をどのようにするかテーマを詰めきれていなかった時期もありましたが、プレイヤーの相棒キャラクターとしてエンマの案が挙がった時に「世界観を含めて要素がうまくハマった!」という感覚があり、舞台を「地獄」にすることを決めました。
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――エンマはかなり中性的に描かれていますが、人間でいうところの男性・女性どちらなのでしょうか。
平田私たちの中では明確な設定がありますが、ここでお伝えするのも野暮かと思いますので、プレイしてくださったみなさんに自由に想像してもらえればと思います!
――そう言われると、ますます性別が気になりますね!
平田エンマについてもう少しお話しますと、プレイヤーに上の立場から指示を出すのではなく、お互いに助け合う対等な存在にしたかったので、先代から閻魔の座を受け継いだばかりでまだ経験が浅いことにしようというのは当初から決まっていました。
そこから「プレイヤーと助け合える、若きエンマはどのようなデザインであれば魅力的なのか?」の答えを求めて20や30ではきかないくらいのラフデザインが制作されました。中性的なルックスというアイディアは、その過程で出てきたものです。
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――プレイアブルキャラではないながらも、力が入ったキャラになっているということですね。それでは、これから遊ぶ人に向けた“開発スタッフのおすすめキャラ”を教えてください。
平田序盤から使えて強いのは、「真・三國無双」の関羽と張飛です。攻撃範囲が広い上に、威力が高く、操作時の特性や初期パラメータが優秀なので、他に推しキャラがいる人も、推しまでのつなぎとして十二分な活躍をしてくれるはずです。また、業蛍火で解放する英傑では「真・三國無双」の曹仁と「戦国無双」の武田信玄もオススメです。彼らを召喚すると「鉄壁」のスキルでバリアを張ってくれるので、倒されるリスクを大きく下げられます。
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あとは、変わったところであげると、「戦国無双」のお市と阿国ですね。お市は固有戦法を発動すると一度だけ復活できて、阿国は一斉召喚を発動すると体力が20%回復します。本作は回復手段が少ないので、どちらも発動条件を揃えられれば大きな助けになります。
また、同じ勢力同士、実際に親交があったとされるキャラ同士などは、本作でも組ませるとシナジーを得られますので、そうした要素も楽しんでいただければと思います。
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――「無双」シリーズのファンであれば、そうしたシナジーに当たりを付けやすいので、大きな強みとなるわけですね。最後に、今後のアップデート予定があれば教えてください。
平田まず、無料アップデート第一弾として「真・三國無双」の晋に所属するキャラクターたちをプレイアブルで追加します。2月末から3月初頭ごろの配信を目指しておりますが、正確な配信日は決まり次第『無双アビス』公式SNSなどでお知らせします。無料アップデートはその後も予定されており、3月~4月頃にも新たなプレイアブルキャラを追加予定です。
英傑を召喚して戦ってもらうという『無双アビス』の設定は“「無双」シリーズ以外のキャラも自然な形で参戦させられる”と思っていますので、ご期待ください!