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【eスポーツの裏側】「忍ism Gaming」から「ZETA DIVISION」へ。事業継承と新たな”忍ism”イズムで描く未来とは―代表取締役百地 祐輔、取締役百地 裕子インタビュー

新たな挑戦を求め、「忍ism Gaming」から「ZETA DIVISION」へ移行します。選手たちの未来に期待が高まります。

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【eスポーツの裏側】「忍ism Gaming」から「ZETA DIVISION」へ。事業継承と新たな”忍ism”イズムで描く未来とは―代表取締役百地 祐輔、取締役百地 裕子インタビュー
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eスポーツに携わる「人」にフォーカスを当てて、これからのeスポーツシーンを担うキーパーソンをインタビュー形式で紹介していく【eスポーツの裏側】。前回の連載ではBlizzard Entertainmentの『オーバーウォッチ』eスポーツトーナメント「オーバーウォッチ チャンピオンズシリーズ」でシニアプロダクトマネージャーのベイリー・マッキャン氏とAPACリージョンのプロダクトリーダーのクレイグ・チョン氏に、シリーズの現状や各国での活動、目指している姿について伺いました。

今回は、2025年2月1日に「忍ism Gaming活動終了」の報告をした株式会社 忍ism 代表取締役の百地 祐輔(ももち)氏、同社取締役の百地 裕子(チョコブランカ)氏に独占インタビューを実施。これまでの同社の軌跡と「ZETA DIVISION」への「忍ism Gaming」の事業継承、また選手や関わる人達に廻る「”忍ism”イズム」について、その裏側に迫りました。
※インタビューはオンラインにて実施しています。記事内で利用している画像は過去インタビュー時に撮影した素材になります。


ーーー簡単にお二人の自己紹介をお願いします

ももち「忍ism Gaming」オーナー、株式会社 忍ism 代表取締役の百地 祐輔です。プロゲーマー「ももち」として、選手としての活動をしながらも、イベント運営やゲーミングチームの運営をしています。2015年に会社として株式会社 忍ismを二人で起業し、「不動 Fudoh」、「花鳥風月 Kacho-Fugetsu」、「忍ismストリーマー&プレイヤー」というゲーミングチームを立ち上げました。2019年に3つのチームを統合して「忍ism Gaming」に改称しました。また、2023年からeスポーツにおける「選手会」の理事も担当しています。

チョコブランカ株式会社 忍ism 取締役の百地 裕子です。同じく「チョコブランカ」として、プレイヤー兼タレント的な活動をしながら、ゲーミングチームの運営、株式会社 忍ismのイベント事業、また大会運営やコミュニティ向けのイベント運営をしています。

ーーー今年で10周年を迎える株式会社 忍ismですが現在までの活動を簡単に教えてください

ももちチョコブランカと二人で業界を盛り上げたいという想いから始まりました。自分たちの得意分野である「イベント運営」と「後進の育成」に力を入れようと意思決定をして、2015年に”弟子企画”をスタートしました。”弟子企画”からは、現在も活躍しているヒグチ、ヤマグチ、ジョニィの3名が育ちました。彼らは全員、SFL(ストリートファイターリーグ)にも出場している現役プレイヤーです。ヤマグチとヒグチは中学2年生の時から参加していました。

【ももチョコ主催イベント】 TokyoOfflineParty vol.0  レポートムービー

株式会社 忍ismはイベント「TOP(Tokyo Offline Party)」を開催し、『ストリートファイターIV』シリーズから現在の『ストリートファイター6』まで続けています。コロナ禍以降はオンライン開催に切り替え、直近では約3,000人以上の参加者が集まりました。

<【ももチョコ主催イベント】TokyoOfflineParty vol.0 レポートムービーより抜粋>

チョコブランカ「スタジオスカイ」というスタジオも運営していて、コミュニティへの貸し出しや自社イベント、指導会を開催しています。コミュニティのメンバーがモチベーションを維持し、友達を作りながら楽しく格闘ゲームに触れられる環境を提供したいという想いで開催しています。

<設立当初の「スタジオスカイ」>

ーーー「忍ism Gaming」活動終了についての背景、また先日発表された「ZETA DIVISION」への事業継承までの流れ、その意思決定をするまでの流れを教えてください

ももち先ほどの活動と重複する部分もありますが、”弟子企画”のコンセプトや目的は業界の発展に若いプレイヤーが必要だという危機感から生まれました。当時の『ストリートファイターIV』の時点でプレイヤーの平均年齢が上がっており、『ストリートファイターV』が出る頃にはゲームセンターの閉店が相次いでいました。『ストリートファイターV』はゲームセンターで稼働するのも遅かったため、若い子たちが格闘ゲームに触れる機会が減っていました。そこで私たちは自分たちができることを考え、”弟子企画”を始めました。この”弟子企画”の次のステップとしてイベント運営や後進の育成に加え、プロゲーミングチームの設立も視野に入れました。

<ひぐち氏卒業インタビュー>

タイミングが良かったこともあり、ハイタニや藤村、大谷と共に「忍ism Gaming」を始めました。時を経て『ストリートファイター6』が登場し、大いに盛り上がっています。『ストリートファイター6』では若い子たちが自然に格闘ゲームに触れるようになり、ファン層もVTuberやストリーマーなど多様化しています。私たちがやってきた活動が、ほんの小さな影響かもしれませんが、何か一つ花開いたように感じています。自分たちの活動がこの盛り上がりに少しでも影響を与えたのではないかと思っていますし、そうであれば嬉しいです。

<藤村氏インタビュー>

このような状況の中で「忍ism Gaming」としての役割は一旦終わったのではないかと感じています。自然発生的に若い子たちが格闘ゲームに興味を持つようになった今、次のステップとして新しいことに挑戦したいと考えています。

ーーーなぜ「ZETA DIVISION」に事業継承先に選んだのでしょうか

<東京ゲームショウ2024 「ZETA DIVISION」ブース取材より>

チョコブランカ上記の理由に加えて、「ZETA DIVISION」さんは私たちが大事にしてきたことを理解し、それを引き継いで大切にしてくださるとおっしゃってくれました。これが事業継承を決めた大きな理由です。「ZETA DIVISION」のオーナーである西原 大輔さんはプレイヤーファーストで、コミュニティを大切に思ってくださる方です。思いが似ていることもあり、安心して一緒にやれそうだと感じました。

<ZETA DIVISIONを運営するGANYMEDE株式会社 代表取締役を務める西原大輔氏>

ーーー『ストリートファイター6』が発売されたのは2023年6月です。今回のような事業継承については経営層のお二人でよく議論をしていたのでしょうか

チョコブランカ「忍ism Gaming」の活動については、常にどう進化させるかを議論してきました。続けていく素晴らしさや良さを感じながら、ファンや企業の皆さんの協力のおかげでここまで来ることができました。2025年1月に開催されたeスポーツアワードでヒグチ選手の「ガイル村」がeスポーツ流行語大賞を獲得し、彼のコメントを見て、私たちの活動が繋がっていると強く感じました。

一方で、試合の結果が思うように出ていないことや、時代の速さについていけていないという思いもありました。自分たちの力不足を感じたり、次のステップに進むことができず、歯がゆい思いもありました。私たちは”村”のようなコミュニティに寄り添った活動を大切にしてきましたが、「ストリートファイター6」の登場で”街”のように急発展してきました。今後は”街”の力を借りつつ”村”の良さも引き続き大切にしながら、より大きなことに挑戦したいと考えています。

ももちこのまま続けていく道もあったとは思いますが、時代の変化の流れに乗りつつ、所属してくれているチームメンバーのみんなの今後を考えて、より良い選択をしたいな…という想いは強いです。「忍ism Gaming」に所属してくれている選手たちの中には、他のチームであればもっと良い条件で活躍できる可能性を持つ選手もいます。しかし「忍ism Gaming」を大切に思ってくれている選手が多く、私たちもその選手たちを大事にしています。お互いに思い合っている結果、現状維持のままでは次のステップに進むことが難しいと感じることもありました。

<株式会社 忍ism、設立当初のインタビューより>

10年前の株式会社 忍ism設立当初は、現状維持ではダメだという思いが強く、新しいことに挑戦し続けてきました。しかし、組織が大きくなるにつれて守るべきものが増え、現状維持も大事だと感じるようになりました。それでも、選手たちの可能性を潰してしまうのではないかという思いもありました。

このタイミングで『ストリートファイター6』が盛り上がり、「ZETA DIVISION」さんが『ストリートファイター6』部門を持っていないこともあり、新しいことに挑戦する良い機会だと感じ、「一度、お話をしてみよう」という形になりました。

ーーー「忍ism Gaming」には様々なジャンルの選手やストリーマーが所属していました。格闘ゲーム以外の選手の今後は?

ももち他のチームに所属が決まった選手もいますし、引き続き活動を続ける選手もいます。「忍ism Gaming」を離れるから引退するわけではなく、新しい道を進む選手が多いです。選手や活動者としての行動を辞める人は、今のところは一人もいません。例えば、あばだんごは株式会社 忍ismの「資格の学校TAC(タック)」企画を通して獲得した日商簿記検定資格を活かして経理の仕事に就き、麻雀のプロとしても活動しています。

<資格の学校TAC×忍ism共同企画「シカチャレ」>

<チョコブランカ氏、Xの投稿より>

「忍ism Gaming」に所属しているメンバーの次の動きについても、私たちがサポートしているので、読者のみなさんにも気にしてもらえると嬉しいです。「忍ism Gaming」はここで一旦終わりますが、所属していた選手は引き続き活動していくので、応援よろしくお願いします。

チョコブランカ「忍ism Gaming」は無くなりますが、会社としての株式会社 忍ism自体は今後もしっかりと続いていきます。イベント運営事業を積極的に今後も続けていきます。この点についてSNSなどで質問を頂くことが多いので改めてお伝えできればと思います。

ーーー企業として今はイベント事業がメインで、チーム運営は行わない状態になると思いますが、何か新規事業は考えていますか?

ももち例えば「ラーメン屋を始める」とか、とかでしょうか?笑

ーーーそういったものも含めてお伺いしたいです

ももち現状は元々やっていた活動にリソースを集中させる予定です。チーム運営に割いていたスタッフのリソースをイベント運営やコミュニティに対して色々な動きがより注力できるようになります。また「ZETA DIVISION」さんと連携して、もっといろいろなイベントをやっていけそうだという楽しさやワクワクもあります。そういったところで、広がっていくかなと思います。

ーーー最後に読者に向けて、メッセージをお願いいたします

チョコブランカこれまで裏方やバックオフィスの仕事や会社の経営にリソースを割いており「プレイヤー・チョコブランカ」としての活動があまりできていませんでした。今後も経営は続けていきますが、チョコブランカとしても新しいことに挑戦し、活動を頑張っていきたいと思っています。

ももち「忍ism Gaming」の解散発表をした際にたくさんのメッセージをいただきました。「「忍ism Gaming」のイベントがあったから今もゲームを続けられている」、「ありがとう」といった、自分たちの活動がいろんな人に影響を与えていたんだなと感じさせてくれるメッセージが多く、思った以上に反響がありました。続けてきてよかったなと思いますし、やってよかったと報われた気持ちになりました。「忍ism Gaming」が一旦終了するということで、寂しい思いはありますが、自分も含めて前向きに捉えています。選手それぞれの活動は引き続き行われますし、私自身もプレイヤーとして現役で続けたいと思っています。また「ZETA DIVISION」さんと一緒に、今までできなかったことや新しい活動に挑戦していきたいと考えていますので、新しい活動に期待していただければと思います。


ゲーミングチームとしての「忍ism Gaming」は形としては解散となりますが、メンバーそれぞれに宿った「忍ism"イズム"」が受け継がれていき、今後どのような活躍を見せてくれるのか、これからの忍(しのび)たちの動きにも注目です。

《森 元行》

森 元行

海外のゲームショウにてeスポーツの大会に出会い衝撃を受け、自身の連載「eスポーツの裏側」を企画・担当。プロプレイヤーはもちろん、制作会社や大会運営責任者、施設運営担当者など「eスポーツ」に携わるキーマンに多くのインタビューを実施。 2022年3月 立教大学大学院 ビジネスデザイン研究科 博士課程前期課程(修士/MBA)修了。

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