文明を築き上げ、成長させ、他の文明を出し抜く。4Xストラテジーゲームの金字塔シリーズ最新作『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』が2月11日に発売されました。
「7」というナンバリングがついていますが、本シリーズの歴史は深く、初作は34年前の1991年に遡ります。本記事では、原点となる初代『シヴィライゼーション』の国内3バージョンをプレイして、歴史を振り返ってみましょう。
1作目から中毒性抜群!?
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日本への上陸は海外発売の翌年、1992年に発売されたPC-9801版でした。現代的な都市の下に眠るツタンカーメンを描いたパッケージは「時の試練に耐える帝国を築き上げろ」というキャッチフレーズに相応しく、クールですね。このパッケージは最新作の創設者エディションでもオマージュされています。
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パッケージ裏には「CIVILIZATIONはやみつきになりやすいので中毒に注意しましょう」という注意書きが。今ではもう定番フレーズですが、第1作目から中毒性押しだったことがわかります。
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中にはフロッピーディスク5枚と180ページ超えのマニュアルとテクニカルサプリメント、そして研究のチャートが書かれたプリントが同梱されています。
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1ゲームを通して人類の発展が味わえるのが『シヴィライゼーション』の魅力ですが、この表を見ているだけでもワクワクしますよね。
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マニュアルは非常に読み応えがあり、本作について詳しく知ることができます。巻頭にはオリジナル版を含めたスタッフクレジットが載っています。
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「シヴィライゼーション」も「レイルロード・タイクーン」と同じようにその製作作業は一大プロジェクトでした。実を言うと、ゲームがあまりにも面白いために作業もしばしば遅れがちになりました。「シヴィライゼーション」はここのMPS研究所のわれわれの仲間内でも異常と思えるほど人気があり、良い徴候と言えるものでした。沢山の冷徹な特長と興味ある決定事項や果てしない数の新しい世界を備えた「シヴィライゼーション」は他に類のない決定的ゲームです。しかし、われわれはこれでも満足いただけない人たちのために「シヴィライゼーション」が出荷されたらすぐに新しいものを始めるつもりです。
シド・マイヤー
ブルース・シェリー
1991年9月11日
巻末には本作の中心的クリエイターであるシド・マイヤー氏とブルース・シェリー氏による意気込みも記されています。
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ゲームを開始すると、5段階の難易度や他文明の数、民族を選択できます。最初から持てる知識はランダムに決定されます。今回は名前を「Supakun」としましたが……スパくんって髭をたくわえたワイルドな姿だったんですね(画像は難易度によって変化します)。
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ゲームが始まって最初に取るべき行動は、「開拓者」ユニットを動かして都市を建設すること。最低難易度である酋長を選択すると適宜チュートリアルも表示されるようになります。タイトル画面にはBGMがありましたが、ゲームが始まるとSE以外は無音に。少し寂しいですが、集中できる作りとも言えます。
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都市を作ったら、生産するものを決めます。最初は最弱戦闘ユニット「民兵」を作ることになります。これを作って周りの土地を探索して広げ、複数の都市を作ったり、敵を倒したりする……という基本的なゲームプレイは後の作品と変わらない味わいとなっています。
近年のシリーズではマス目がヘックス(六角形)ですが、本作ではスクエアと呼ばれる四角形です。しかし、攻撃や移動は8方位に行うことができます。
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第1作目ならではの特徴的なシステムとして「小部族」マスが挙げられ、家のマークが付いたマスに止まると小部族を訪ねることができます。小部族はお金をくれたり、古代の知識として研究を進めてくれたり、自国の軍に加わってくれたりとなにかと嬉しいことが多いのですが、たまに敵対ユニット「山賊」になることもあるのが悩ましいところです。
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後のシリーズ作品では「蛮族」とまとめられていた敵対ユニットですが、今作では山賊と海賊に分かれています。山賊は『VI』の蛮族と似た役割ですが、海賊はリーダーが現れます。
リーダーは子分が死ぬと数ターン逃げ回って消えますが、それまでに仕留めるとボーナス通貨が得られるなかなかオイシイ存在です。とはいえ、海賊が襲ってくるタイミングは読めないので、棚からぼた餅程度。戦略に組み込めるわけではありません。
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研究システムはそれほど変わりありません。もちろん後の作品のほうがより細分化されたり、素早く進めるシステムが搭載されていたりはしますが、「法律を作るにはアルファベットが必要」「大学を作るには数学と哲学が必要」「ロケット工学には航空工学と電子工学が必要」など、人類の技術の進歩が感じられるシリーズの醍醐味は今作でも楽しめます。
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筆者が数回プレイしたところ、初期状態では海に囲まれているケースばかりでした。ガレー船やコルベットの研究を早く行うことで別の大陸に出向き、他文明と交流することができました。
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都市から「情景」というボタンを選択することで、都市の風景を見ることができるというのも本作ならでは。施設が増えても、ちゃんと反映されます。わざわざ別のフロッピーディスクに変えなければなりませんが、それでもたまに眺めたくなるほど「自分が文明を育てている」という感覚を得られる良い機能です。
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さらなるPC版特有の要素として、ゲーム中に突如として「王(指導者)としての権威を懸けたクイズ」が問答無用で挿入されることがあります。このクイズが現れたらマニュアルを読んで照らしあわせ、正解の選択肢を選ばなければなりません。もし不正解してしまうと、民は呆れ返り、フィールドにいる兵士が全員消えてしまうという手痛いペナルティが待っているのです。
これは、ただ意地悪な仕組みを入れているというわけではありません。この仕組みを理解するには、当時の記録メディアと時代背景について知る必要があります。
フロッピーディスクが主流メディアだった当時、ゲームはコピーされやすかったため、各社がコピー対策を行っていました。ソフト的なコピーガードを施すソフトがあった一方で、本作をはじめコピーガードを採用していない作品も多数存在しました。
ただ、それらのソフトはまったく対策していなかったというわけではありません。その対策のひとつが「マニュアルプロテクト」と呼ばれる方法で、こうしてマニュアル必読の問題や仕掛けを施すことで、海賊版ではなく正規版を購入して遊んでいるかのチェックとして機能させているのです。なにかと時代を感じさせますね。
マウスも対応!スーパーファミコン『シヴィライゼーション 世界七大文明』
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スーパーファミコン版である『シヴィライゼーション 世界七大文明』は、アスミックより1994年に発売(海外では光栄が発売)。今回はカセットしか用意できませんでしたが、「スーパーファミコンマウス対応」の文字が確認できます。
クレジットを確認すると、本バージョンはアスミックが全体を監修して制作したバージョンである模様。そのためか、日本的なテイストがいくつか見られます。
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その代表例としてあげられるのが、ゲーム序盤に登場するこの女神。「灌漑して食料を作りなさい」「採鉱して多くの資源を得なさい」といった風に、序盤にやるべきことのアドバイスを行ってくれます。プレイヤーの目的を解説する役割なので本当にチョイ役なキャラクターなのですが、どこか日本のアニメ感があるデザインです。
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スーパーファミコン版もベースはPC版初代となっており、概ねやること自体は同じ。PC-98版に付属してきた研究チャートがそのまま使い回せるほどです。
しかし、スーパーファミコン用の鮮やかになったグラフィックや、RPGのフィールドミュージックのような壮大な楽曲が流れるようになった点はスーパーファミコン版ならではという感じがしますね。
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PC-98版ではマウス操作が遊びやすかったためコントローラーでの操作はどうなのだろう?と疑問でしたが、全ユニット行動後に「ターン終了」ボタンに自動でカーソルが合わさるなど、とても遊びやすく工夫されています。ゲームのテンポも良いため、こちらはこちらで熱中できるバージョンとなっています。
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ボードゲームチックなグラフィックに。PS/SS『シヴィライゼーション 新・世界七大文明』
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初代PlayStationとセガサターンでは、1996年・1997年に新バージョンとなる『シヴィライゼーション 新・世界七大文明』が発売。SFC版とはまた違った雰囲気に仕上がっています。解説書に記載されたクレジットによると、プロデューサーがアスミック、開発はシャングリ・ラ、CG制作はプラス・ワンと、日本の会社が主導していたようです。
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パッケージ内には厚い解説書に加え、インストラクションガイドが付属。解説書をパラパラとめくらずとも、1枚の印刷物で何をすればいいのかがわかりやすいのは非常にありがたい配慮です。
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CD-ROM機らしい進化として、プリレンダCGを用いた表現が特徴的。オープニングムービーは荒野を馬で駆ける開拓者が移された後、現代的な町並みに切り替わるという本作を象徴する内容となっているほか、難易度選択時のキャラ画像などもドット絵からプリレンダ3DCGとなっています。
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ゲーム画面は、斜め見下ろし型に変化。影がついて立体感がある見た目になっているほか、ユニット未踏の地が真っ暗ではなくテクスチャが貼られていることで、どこかボードゲームチックな雰囲気になりました。ユニット移動の際も、すごろくのコマを動かすようなモーションとなっています。
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研究選択時に賢者らしき人の画像が表示されるようになったり、ユニットの上に雲が流れるようになったりと、全体的に演出がリッチになりました。
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各指導者が3Dとなっているのは注目すべき点といえます。こちらもプリレンダではあるのですが、背景がおそらく実写、3Dモデルが口パクをするといったCD-ROMの大容量を活かした演出によって、臨場感が増しています。
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とはいえすべてが3Dになっているわけではありません。フィールド上のものはカーソル以外2Dですし、「情景」を閲覧する際もドット絵となっています。次世代を感じられる作品ではありませんが、面白さの核はそのまま受け継がれています。
筆者は本当に最近『シヴィライゼーション VI』でこのシリーズの魅力に気づいたため、ディープに触れているわけではありません。それでも第1作目をそれほど問題なくプレイできたのは、本シリーズがはじめからひとつの完成形を見せていたことの証左と言えるでしょう。
もちろん、いくつか近年の作品と仕様が違うところや、時代を感じさせる仕掛けが施されている箇所はありますが、大筋のゲームの流れや人類史を体験するという醍醐味はすでに備わっていて、シド・マイヤー氏らの偉大さに驚かされました。
最新作の『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』は、時代を3つに分割したり、蛮族を廃止したり、戦闘システムが刷新されていたり……と、大きな革新を感じさせる内容に。ある意味初代を感じさせるシンプルさに回帰しているので、初心者の方もぜひチャレンジしてみてください。