意欲的な革新に取り組んだシリーズ最新作『シドマイヤーズシヴィライゼーションVII』がいよいよ発売となり、追い込みの卒論をぶっ飛ばしそうな大学生を量産するであろう今日この頃。良い戦略は十分な睡眠から、皆様、きちんと睡眠時間は確保していますか？
「シヴィライゼーション」といえば、技術や社会制度と共に語られる古今東西の引用です。今回は比較的アジア・アラビアからのものが多く、日本からもそこそこ採用されています。さて、今回の引用はどこから持ってきているのか、早速確かめましょう！
規律
「役に立たぬことをせざること」宮本武蔵
「五輪書」地の巻より。武芸者として弁えるべき9つの心得として以下の事柄を挙げています。
第一に、よこしまになき事をおもふ所。
第二に、道の鍛錬する所。
第三に、諸藝にさハる所。
第四に、諸職の道を知事。
第五に、物毎の損徳をわきまゆる事。
第六に、諸事目利をしおぼゆる事。
第七に、目にみヘぬ所をさとつて知事。
第八に、わずかなる事にも気を付る事。
第九に、役に立ぬ事をせざる事。
娯楽
「この世はすべて舞台、男も女も皆役者にすぎませぬ」ウィリアム・シェイクスピア
All the world’s a stage, and all the men and women merely players.
「お気に召すまま」より、皮肉屋ジェイクィズが言う台詞です。人生の年代を全7幕に例え、皆それぞれの出番におかしな役を演じていくのだ、と恋愛コメディに振り回される人物達を皮肉っているのです。
航海術
「遠くの船は、あらゆる人の望みを乗せている」ゾラ・ニール・ハーストン
Ships at a distance have every man’s wish on board.
アメリカのアフリカ系女性作家。アフリカの民間伝承の研究を行い、フロリダに生きる黒人コミュニティを描いた小説「彼らの目は神を見ていた」が有名。
紋章
「確かに。だが…旗は持っているのか？」エディ・イザード
Yes, but...do you have a flag?
エディ・イザードはイギリスの俳優兼コメディアン。「オーシャンズ12」「13」にも出演しています。この台詞はスタンダップコメディ「Dress to Kill」の中で「インドに英国の旗を立てる」大英帝国を皮肉る一幕で出たもの。
教育
「1年を費やすなら、穀物を育てるのが一番だ。10年を費やすなら、木を育てるのが一番だ。人生を費やすなら、人を育てるのが一番だ」管仲
一年之計莫如樹穀、十年之計莫如樹木、終身之計莫如樹人
春秋戦国時代の斉に仕えていた管仲は、桓公から国家運営について問われたときにこの言葉を発しました。つまり、時間を掛けて人材を育てることこそ国家の地盤を築くと主張します。これがいわゆる「百年の計」ですね。
地図作成法
「その地図は、それが表しているものの手本というより、それを表すための手本であった」トンチャイ・ウィニッチャクーン
The map was a model for, rather than a model of, what it purported to represent.
アメリカ在住のタイ人歴史学者。「地図がつくったタイ」で、ナショナリズムの形成に地図がどのように関わったかを著しました。
民主主義
「参政権は極めて重要な権利である」スーザン・B・アンソニー
Suffrrage is the pivotal right.
女性参政権を求める運動の先頭に立った人物。奴隷解放運動で黒人男性には参政権が与えられていたものの、女性が権利を得られたのは1920年、約50年近く遅れてのことでした。
無線通信
「世界は滅びたとお伝えしましたが…どうぞご安心を。これは作り話です。本当のことではありません」オーソン・ウェルズ
We annihilated the world before your very ears... You will be relieved, I hope, to learn that we didn’t mean it.
ラジオドラマが全米に混乱を起こした「宇宙戦争」事件の仕掛け人…とされていますが、実はパニックなど起こっていなかったのです。後に行われた心理学の調査で、「なんとなく不安に思った」とする回答を拡大解釈して、新興メディアのラジオを攻撃する材料として、「ラジオがトラブルを起こした！」と新聞が吹かし記事を書き立てた、というのが事の真相。パニック事件そのものが「作り話」だったのでした。
万国の門
「平和より戦争を望む愚か者がいるものか。平和な間は息子が父親を埋葬するが、戦争になれば父親が息子の埋葬をするのだ」リュディアのクロイソス
別名「クセルクセス門」はイランにある史跡。ペルシャ帝国の宮殿ペルセポリスの入り口に位置しています。クロイソスはペルシャに戦争を仕掛けて敗れたリュディア（現トルコ）の王。
トーレス・デル・パイネ
「月なき夜の静けき闇の中、昼のまばゆい光の中、雪はかの山に降り積もれど、それを見る物は一人とてあらず」パーシー・シェリー
In the calm darkness of the moonless nights,
In the lone glare of day, the snows descend
Upon that Mountain; none beholds them there,
実は全く違う山について描写した詩「モンブラン」からの引用。パーシー・シェリーは「フランケンシュタイン」のメアリー・シェリーの夫で、駆け落ち旅行中の1816年に両作が書かれている縁があります。
故きを温ね新しきを知る。古からの知恵に学ぶことこそ、我ら現代人が人類のレガシーを受け継ぐ唯一の手段です。今の時代を生きるヒントを遺産の中へ探しに行きましょう！
