ビデオゲームに秀逸なシナリオが盛り込まれ、それを読み解くことも遊びの一部として受け止められるようになった現代……本連載記事では、古今東西のビデオゲームを紐解き、優れたゲームシナリオとは何かを考えていきます。第21回は『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』を取り上げます。
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ついに出ました「シヴィライゼーション」最新作。歴史ストラテジーといえば本シリーズですね。あらゆる時代に登場した指導者や偉人たちを選んで、自分だけの歴史を紡ぎあげていくゲームです。
前作から9年ぶりとなる本作は、システムの簡略化や、レガシーパスといったメインミッションに相当するメカニクスなど、大きな変更点がいくつかあります。ゲーム部分については他の記事に任せるとして、今回もいつも通りシナリオに注目していきましょう。
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といっても、本作に決まったシナリオはなく、プレイヤーが選択をしていくことで、ひとつの物語が浮かび上がっていくという極めてナラティブなつくりをしています。いつどこでどの勢力と戦うか、それとも同盟を結ぶのか、どんな資源を掘り当てて、どんな技術を開発するのか……すべてはゲームを始めるたびに変わっていきます。
特に今回は文明を時代ごとに変更できるようになりました。クセルクセス1世で漢王朝を興したり、マヤ文明を率いたりすることもできます。歴史のIFにしては遠くない? という無理矢理な設定でも遊べるのが面白いですね。
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時代ごとにバラバラに文明を選んでいくこともできますが、その際に都市の位置や建造物などはリレーすることができ、それもまた面白いところです。
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この手のストラテジーでロールプレイをしようとすると、散逸的に起きていくイベントに対して自分で考えたロールプレイの制約が当てはまらず、結局は戦争をするのが得なので、なし崩し的に戦ってスコア勝利する流れになりがちですが、本作はレガシーパスがあるおかげで、大まかに四つのシナリオに沿って進行していくことができます(逆に言えば、レガシーパスに関係ない行動を取る意味がないとも言えますが)。
ローマ人らしく武力にものを言わせて大陸を制覇しようとしたら、思いのほか立地が悪く、戦争による早期解決は望めないという状況になったとします。すると、適当にこなしていた内政が上手くいき、交易路を伸ばしたほうが得になることに気づきます。そこでまさかまさかのローマ人によるシルクロード建設の夢が始まる……そんなことがよく起きるわけです。
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という具合に、今作も世界史クラスタが骨の髄まで楽しめる仕様にはなっていますが、皆が皆オタクというわけではありません。筆者も特定の時代や文化が好きなだけで、全体を理解しているわけではないです。
そこで参考になるのが、シヴィロペディア。ゲーム内のチュートリアル機能と、史実をとりまとめた百科事典です。
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シリーズ伝統のシステムであり、本作でもたっぷり用意されています。指導者や文明の基本的な理解が得られるだけでなく、政治制度や文化についても学ぶことができます。
そこそこ固い文体ですが、しっかり読んでいくと笑えないレベルでエグいジョークが入っていたりして、書き手の作家性も感じられます。初期の「アサシン クリード」シリーズのロアには、仲間キャラクターで皮肉屋のショーン・ヘイスティングスによるツッコミが入っていましたが、あれに近いものを覚えました。
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また、本シリーズはマルチプレイも面白いもの。友達と同盟を組み、お互いの目先にある邪魔な国家を攻め滅ぼしたり、逆に友達が気づかぬうちに伝道師を派遣して自国の宗教に染め上げたりと、こちらもワンプレイごとにシナリオが生まれます。言うなればこれはGM不要のTRPGセッションです。
これから何年もかけてDLCが山ほど追加されていくことでしょう。まだ遊んだことがないという人は、これを機に「シヴィライゼーション」の世界に足を踏み入れてみてはいかがですか?
『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』は、PC(Steam/Epic Games ストア)/Mac/Linux(Steam)/PS5/PS4/Xbox Series X|S/Xbox One/ニンテンドースイッチ向けに発売中です。