今まで、Irrational Gamesで作ってきたゲームのほとんどがLinear Narrative (直線的物語)であることをLevine氏は説明しました。スタートとエンドがあらかじめ決められ、プレイヤーがそれに沿って物語を体験することしかできなかったです。
「しかし、この一直線でゲームを作ってしまうと、どうしてもプレイヤーと壁が出来てしまう。プレイヤーは本当はゲームと触れ合って、自分のものにしたがるので、それを提供できるようになりたい。何度もプレイできる、プレイヤーの選択肢によるナラティブに挑戦してみたい」
この新しいナラティブを、Levine氏は「Player-Driven Replayable Narrative」と言いました。
■Linear Narrativeとは何か?その欠点について
Linear Narrativeは様々なゲームに使用されています。Levine氏の『Bioshock』シリーズもこのLinear Narrativeの例の一つです。ストーリーが一直線に進み、誰がやっても同じ結論に至るはずです。多少分岐をしていたとしても、全体的な物語の流れにさほど影響がありません。「このようなゲームには、プレイヤーによる影響が全くないです。感情的な影響を与えることがあるが、プレイヤーの選択肢による影響がない」とLevine氏が言います。
プレイヤーの選択肢が反映されない限り、本当にユニークなゲームを体験することができず、ゲームのポテンシャルを最大限引き出すことができません。
■Non-Linearに変更するため、根本的なところから考え直す必要がある
◆キャラクターAI
Non-Linear(非線形)な物語を作るには、まずAIの捉え方を改めなくていけないとLevine氏が続けました。今までのゲーム業界では“人間”を真似ることに必死でしたが、もはや、「人間」よりも「映画キャラクター」として考えて作ったほうがうまくいくのではないかと、問いかけました。
映画のキャラクターは「人間」ではなくて、人間と同じくらいの複雑さを持っていないが、「人間じゃない」と感じるところもほとんどない不思議な存在です。このようなキャラクターにどうやって自然な人間性をもたらしているかというと「Passion(パッション)」を与えているから、とLevine氏は指摘。この「パッション」からキャラクターを作って、そのパッションが人間性を与えてくれます。
■Passionとは何か
パッションは、自分にとって大事なことを表します。人間はいろいろな想いで出来ているが、根本的なところで私たちを動かしているものは数少ないでしょう。
■Passionを基にゲームキャラクターAIを作るのがNon-Linearへの一歩
Levine氏は、『The Elder Scrolls V: Skyrim』と似たようなゲームワールドの構造を例にとって、この考えを説明しました。
そこには、オープンワールドで村がいくつかあります。それぞれの村には「Star(AI化する、大事なキャラクターを表します)」が5人ほどいます。Starの一人一人にPassionを与え、そのPassionはプレイヤーの影響により変化できるものです。
■ゲームコンセプトの紹介
◆MicroPassion (ミクロパッション)の構造提案
オークの村にフランクという鍛冶屋がいます。彼のPassionは「エルフが嫌い」「古い神々への神殿の構築」と「デボラーオークを口説くこと」です。
プレイヤーがエルフに悪いことをしたら(殺したり、村を破壊したりなど)、フランクが喜んで、そのPassionによるプレイヤーの好感度があがります。逆を言えば、プレイヤーがエルフに良いことをしたら(クエストを達成したり、お金をあげたりなど)そのPassionによるプレイヤーの好感度が下がります。好感度を上げたり下げたりすることでプレイヤーへの態度が変わり、高くなると物を安く売ってくれたり、特別なアイテムを提供してくれたりしますが、低くなると敵になって戦いになることもあります。
フランクの「Passion」はすべてプレイヤーの選択肢の影響によって動かされ、逆にプレイヤーの選択肢無しで動かないものです。
◆MacroPassion(マクロパッション)の構造提案
Starには3つのPassionが用意され、それぞれがプレイヤーの選択に委ねられます。その3つと別に、総合的な「Macro Passion」もあります。Macro Passionのある一定量を超えるとイベントやダイアログ変化が起きます。
■Zero-Sum Game(ゼロ和ゲーム)理論
「Zero-Sum Game」とは、勝ち負けは総和的にゼロとなる理論です。「全員を満足させるわけにはいかない」仕組み。さきほどの村の例だと、フランクと仲良くしていてることでエルフに怒られることになり、同じオークの村内でも「新しい神々への神殿」が欲しいピートの好感度をさげたりする可能性があります。
このように、一人を喜ばすことでもう一人を怒らす、というパターンを繰り返し、自分でプレイスタイルを決めていきます。誰とアライアンスを組めば有利なのか、不利なのか。一人のプレイヤーがゲームの中で体験できるストーリーの可能性は、“Passion”の構造を組み込むことで無限にも近いものとなるのです。
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- スパくんのお友達 2014-03-23 11:05:42MenuAIゲーと言えばガンパレだよなあ1 Good返信
- スパくんのお友達 2014-03-23 0:02:05Menu結局のとこゲーム最大の長所である部分を活かせないんじゃ、他のメディアと同等には評価されないからな
AAAゲーム生き残りの為にも、ゲーム業界全体のステップアップの為にも、そろそろリニアナラティブからの脱却は必要なんだろう
勿論それでもリニアナラティブの居場所が完全になくなるわけじゃないし、既存のリニアナラティブな傑作の功績が消えるわけではないがな7 Good返信 - スパくんのお友達 2014-03-22 22:16:01Menuこの人の事を天才だと思った
なのでBIOSHOCKシリーズのコンプリート・ボックスをお願いしますお願いします。11 Good返信 - スパくんのお友達 2014-03-22 19:28:09Menu早くこのゲームを作ってくれ!!0 Good返信
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