目まぐるしく移り変わる世の中、ゲーム業界も光の速さで進歩し、どれが自分に合うゲームなのか見極めるのは誰にとっても悩みどころです。懐の予算や遊ぶ時間と向き合いながら、いますぐ新作ゲームの情報が知りたい。そんなときのための「爆速プレイレポ」でございます。
今回は、フランスのインディーゲーム制作者のAntoine Aubin氏が開発し、2022年10月24日に配信された『PHOBOS Project』をプレイして気になる内容を紹介します。
『PHOBOS Project』とは

本作は、実験と称して、様々な恐怖体験が襲いかかる一人称サイコロジカルホラー。プレイヤーは被験者と思われる人々の症例を追体験し、モンスターや正体不明の霊的な存在と対峙しながら、謎解きを通じて恐怖から逃れる方法を探していきます。
ストーリーは一本道のようですが、レベルごとに用意されたフィールドは広大。わずかな手がかりを頼りに、キーアイテムの捜索や突発的な敵との遭遇に対処し、精神をすり減らしながらゴールを目指しましょう。


ただのホラーではなく、実際にトラウマとして認知されている暗闇やクモといった複数の具体的な恐怖要因を採用した構造となっており、その手のジャンルが苦手だという方には特に突き刺さる内容となっていました。なお、本作は残念ながら現時点で日本語には対応していません。
一番正気じゃないのは主人公

ゲームを開始すると、ずいぶん長い注意書きとVHS風の演出が流れた後、いきなり真夜中の深い森の中に放り出されてしまいます。



おそらくは被験者の記憶か、それを主人公が辿ってきたのだと推測できますが、たったひとりでこんなところに来てしまう怖いもの知らずの神経を疑います。具体的なストーリーや他のキャラクターとのやり取りもなく、詳細は不明。よっぽどの事情があるのかもしれませんが、興味本位のオカルトファンなら神隠しに遭ったとしても本望でしょう。
しかも、実際に幽霊が徘徊しているとなれば、あまりに危険です。ひとまず、操作説明が載っている足元の紙切れを辿りながら、踏み慣らされて茶色くなった山道を進んでいくことにしました。

全編英語でこれといった解説もないため、具体的な仕様は不明なものの、すでに安全ではない気配がします。フィールドが箱庭と言えるぐらい広いせいか、最初の手がかりである道案内の看板までけっこう時間が掛かってしまい、いつ何が襲ってきてもおかしくない雰囲気のせいで早くも精神を消耗していました。



この森ステージは広い代わりに、謎解き自体は簡単な造り。看板にも3つのロケーションが全て記されており、あとは行ったり来たりするだけで終わると思います。問題は、さっきも言ったように敵が配置されているので、何の攻撃手段も持たないプレイヤーがどうすべきか問われることになるでしょう。
ここにホラーの次世代形があった

ジャンルを問わず、これまで数えきれないほど大量のゲームに触れてきた筆者の中には、ある傾向のようなものが出来上がっています。ゲームロジック、あるいは、ゲームの常識とでもいうべきものです。
ゲームがプログラムの集合体である以上、敵が現れる場所や行動には、必ず法則性が存在します。しかし、この森ステージで遭遇した幽霊からは、そういったものを感じ取ることができませんでした。


本作を初見で何もかも理解できるわけがないのですが、実際の感想として、いつどこから敵が現れるのか特定できません。カギを取ったら後ろから襲ってきたり、決まった場所で待っていたりするのでもなく、まるでプレイヤーと同じように自律して徘徊しているかのような気さえします。
まだまだ理解が未熟なのもあってか、いつものやり方が通用しない敵が存在しているというだけでパニックです。いざ出会ってしまったら、執念深く追いかけてくるので、あまりに怖すぎて最初のステージでギブアップしようかと思いました。

幸い、接触の判定が狭いのと、走って逃げればそのうち諦めて消えるので慣れたらなんとかなります。それでも歩くだけで怖いというのは相変わらずだったので、ゲーム音を消して音楽でも流しながらプレイすれば、いくらかは恐怖も薄れるでしょう。
本作の敵が本当にそういう仕様なのかは分かりませんが、神出鬼没の幽霊は、これからの次世代ホラーゲームの標準となるべき先進的モデルかもしれません。


今も昔もホラーはインディーのもの

本作は日本語非対応ということもあって、ほとんど情報が出揃っていませんでした。かなり小規模で制作しているものと見受けられますが、本作がホラーゲームであるならば、それはハンデとはなりません。


実際、大規模IPのような派手さはありませんが、無機質で個人趣向に特化された作風はそれだけで恐怖を増幅します。リアルではないゲーム感のあるグラフィックや無音の環境、不便が難しさに繋がる部分など、ホラージャンルは開発規模に関わらず雰囲気を作りやすいのです。
本作も恐怖という一点に関しては間違いなく実力のある作品であり、筆者もゲーム内の不穏な空気に飲み込まれ、プレイ中は緊張して呼吸すら重たく感じることがありました。そういう意味でも、本作は開発者の期待を満たしていると思いますし、ユーザー側も望んでいたものを得られるのではないでしょうか。



幽霊やクリーチャーは単純に怖いですが、次のステージで大挙して出現するクモの大群は筆者に耐性があったため、拒絶するほどではありませんでした。気持ちは都会人なのでムシそのものは本当に苦手でいますが、クモは益虫とよく聞きますし、日本のものは小さくて細い種類ばかりなので慣れてしまったんでしょうか。
こればっかりは個人差なので、逆にクモは絶対に無理という方は、このステージで進退を考える必要が出てくるのかもしれません。ただ、それも全体でいえば序盤の話であり、さらに多様な形の恐怖がこの先に立ち塞がってくると考えられます。
ほぼワンコインの価格で実績の数も少なめであり、ストーリー的には短くまとまっているのだと思いますが、ホラーのボリュームは見た目以上に詰まっているようでした。

『PHOBOS Project』は、Steamにて配信中です。
タイトル:PHOBOS Project
筆者がプレイした機種:PC(Steam)
発売日:2022年10月24日
記事執筆時の著者プレイ時間:1時間
価格:620円
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