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Game*Sparkレビュー:『サガ エメラルド ビヨンド』―奥深さと煩雑さを感じさせる新時代の『Sa・Ga』

ヴィジョンの導きに従え……

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Game*Sparkレビュー:『サガ エメラルド ビヨンド』―奥深さと煩雑さを感じさせる新時代の『Sa・Ga』
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80年代から続く伝説のRPGシリーズ『サガ』の最新作がついに登場しました。その名も『サガ エメラルド ビヨンド』。5人のキャラクターが織り成すクセのあるストーリーと、何度遊んでも発見があるあまりにも奥深い戦闘システム、そしてその戦闘システムの根幹を成すこれまた重厚な成長システムが特徴です。

今回は8年振りとなるシリーズ作品を、シリーズファンの目線からPS5版にてレビューさせていただきます。また、先行プレイレポートも掲載していますので、良かったらそちらもチェックしてみてください。



サガといえばバトル……連携を主体とした深淵なバトルシステム

サガを批評するうえで最も重要なのは、やはりバトルでしょう。大昔からあるコマンドバトルRPGでありながら、ジャンル創成期から現代に至るまで、徹底してバトルの面白さを追求し続けてきた『サガ』は、本作で誰も到達できない高みに辿り着こうとしています。

基本的には『サガ スカーレットグレイス』を踏襲したタイムライン形式のバトルで、敵味方がひとつのラインに並び、順番に行動していく形です。

BPと呼ばれる行動に必要なコストはパーティー共通なので、ひとりが大技を打てば他の味方はおやすみとなります。これは敵パーティーも同じであり、大技を打つ相手さえ咎めてしまえば、そのターンは攻撃を凌げるわけです。このあたりのフェアネスを意識したゲームデザインは非常にボードゲーム的であり、『サガ』チームの持ち味だと感じますね。

技にはそれぞれ「連携範囲」があり、このバーを味方同士でくっつけて攻撃すると「連携」が発動します。基本的にはこの連携を用いて、細かい技を叩き込みまくり、敵を動く前に潰していくのがセオリーとなります。

しかし、当然ながら敵も連携してくるので、場合によってはインタラプト技(割り込み)やバンプ技(吹き飛ばし)といったタイムラインに影響を及ぼす技で邪魔することも大事です。ただ毎度連携を狙えばいいという展開になりがちだった以前のシリーズ作に対する反省が見られ、とても好感が持てます。

そして、本作から導入されたのが「独壇場」。周りに2マス以上敵味方がいない場合、自分一人で連携を始め、敵に大ダメージを与えます。つまり、味方と動くか・ひとりで動くかというジレンマがあり、常にタイムラインを管理して戦わなければならないのです(もちろん、敵も独壇場をしてきます)。

当然ながら、本作でも「閃き」のシステムはあり、キャラクターは戦闘中に突然技を閃きます。連携や独壇場の最中でも新しい技をバンバン使うので、殴れば殴るほど有利になるというオフェンシブなシステムはとても良いですね。今作から「我流技」といって、キャラクター固有の技を閃くようにもなりました。こちらは既存の技とモーションこそ一緒ですが、性能が微妙に違うので、普通の技と固有技のどちらを使うかもかなり悩めるポイントとなっています。

また、本作のユニークな点として(というかユニークじゃないところのほうが少ないのですが)回復魔法が一切ないという点が挙げられます。これはディレクターである河津秋敏氏が、バトルが長引く理由が回復魔法にあるんだとして削っているポイントです。負ける時は潔く負け、次のバトルに備えてビルドや編成を見直す楽しみに直結しているところであり、この当たり前を見直す技術こそ、RPG業界にいながらシーンを疑い続けてきた河津氏だからこそ作れたところなのではないでしょうか。

……と、つらつらと長文を書いてしまいましたが、こんなものでは全然足りないくらい『サガ エメラルド ビヨンド』のバトルシステムは奥深いものとなっています。

陣形や装備ひとつひとつに明確な長所があったり、敢えて連携に参加せずに攻撃を受ける防御役を作ってみたり、単純に戦闘回数をこなして技の練度を上げてみたりと、やれることは山ほどあります。RPGのコマンドバトルに魅入られてしまったジャンルファンへの、これ以上ないほど極上なフルコースとなっているので、そういうものが好きな方は是非とも触ってみてください。

モグラのモンスターから吟遊詩人のロボットまで……ヘンなキャラが暮らす奇妙な世界と、読みやすくなったストーリー

『ロマンシング サガ』シリーズこそ王道の中世ファンタジーでしたが、以降のシリーズ作品はその限りではありません。特に本作は「連接世界」と呼ばれる空間によって繋がれた17のエリアを行き来するというフィーチャーがあり、かつての『サガ フロンティア』の「リージョン」を思い出させます。この17の世界と、その住民たちが……とってもヘン!

たとえば、主人公のひとりであるボーニー・ブレアとフォルミナ・フランクリンは、キャピトルシティという現代風の大都市に住んでいましたが、彼女たちは謎のアーティファクト「三角形」を求めてあらゆる世界を飛び回ることになります。

世界といってもそこまで広くなく『サガ スカーレットグレイス』のような一枚絵の小さなボードのうえを行き来する程度のものなのですが、世界ごとにシナリオ・設定・ミニゲームがあり、それらが有機的に絡んできます。

たとえば、産業革命期のロンドンのような世界「アヴァロン」では、3つの交通手段を用いてイベントをこなしていくすごろく風の遊びになっていますし、モグラ型のモンスターが暮らす地下世界「コルディセップ」では、土の壁を引っ掻いて道を作り、途中で手に入れるミミズを通貨代わりにしてアイテムと交換してもらえるという仕掛けがあります。

それらの世界に暮らすキャラクターたちは独自の常識で動いており、紙芝居的なイラストとテキストのみの会話劇ではありますが、あらゆる事件が巻き起こります。選択肢は豊富にあり、主人公ごとにフラグも異なるようで、同じ展開に出くわすほうが珍しいのではと思うほど様変わりしていきます。

『サガ スカーレットグレイス』でもあらゆる地域を行き来することはできましたが、物理的な自由度が高すぎるあまりに、シナリオのつながりを脳内で補完するのが難しくなってしまって、今何をしているのかというのが理解できないという問題がありました。

本作では、ひとつの世界を救わない限り新しい世界に行けないので、TRPGの1シナリオをクリアするような感じで、短めのストーリーを連続して読んでいく形になっています。

そんなストーリーを補完するのが、サガ謹製の一癖も二癖もあるキャラクターたち。カカシ、モグラ、スライムあたりが仲間になるのなんてもはやシリーズファンからすると当たり前で、加藤という名前のいかにもモブキャラっぽい男ととある世界の女王が並んだり、特定のキャラクターの血を吸い上げて廃人にしてしまったりすることもできます。

誰をどうパーティーに入れて、どんな風に成長させても自由という点はシリーズ恒例であり、今回も種族ごとにしか装備制限はありません。誰もが活躍の場を与えられているので、めちゃくちゃな構成にすることが可能です。ただし、相変わらずストーリーのラスボスはめっちゃくちゃ強いので、それを倒すために思考を巡らす必要があるというのも同じですね。

いくつかの欠点……洗練に欠けるUIや、不親切なチュートリアル

そうは言っても、気になる点もいくつかあります。まず、本作はほぼすべてのコンソールとPCで同時発売していますが、スマートフォン向けにも発売されています(近年の『サガ』はそもそもスマホ向けの展開に熱心ですが)。

そのため、ゲーム画面上にデカデカとメニューに遷移するためのボタンが映っていたり、明らかにタップして動かすように作られたデザインになっていたりして、コンソール機またはPCで遊ぶと少々見栄えが悪いです。

スマホ市場を意識した展開は素晴らしい策だとは思いますが、コンソール用のビルドは洗練されたUIでも良かったのではないでしょうか。階層が深いのも気になる点です。

次に、前人未踏の領域に達したコマンドバトルの部分ですが、流石に複雑になり過ぎているきらいがあり、シリーズファン以外が触ったときには面食らってしまうと思われます。初めて「閃き」や「連携」を行った時に数行ほど説明が出るだけで、あとは全部Tipsに格納されており「何がどうしたら敵に勝てるのか?」という点はほとんど手探りです(長所の裏返しであるとも言えますが)。

せめて『ファイナルファンタジー』シリーズにある「初心者の館」のような場所を用意して、敵のパターンごとの戦い方の指南をしてくれても、このゲームの奥深さは削がれないのでは……と感じます。

最後に、『サガ スカーレットグレイス』の頃から感じていた点ではあるのですが、主人公キャラクターたちに比べて敵モンスターに魅力を感じられないのも残念な点です。『ロマンシング サガ』シリーズの美しいドット絵をもう一度見たいと喚くのは傲慢だというのはわかっていますが、アセットストアに並んでいるような見た目のツルツルしたモンスターたちをこの先何年も覚えていられるかは、正直怪しいです。

総評

いくつかの欠点はありますが、それを補って余りある究極のバトルシステムと、ユニークさは残りつつもコンパクトにまとまったストーリーだけで『サガ エメラルド ビヨンド』はマストプレイの名作になっていると思われます。

『サガ』を初めて遊ぶというプレイヤーもぜひ触ってみていただきたいタイトルですが、多少の気構えが求められるかもしれません。


Game*Spark レビュー『サガ エメラルド ビヨンド』PlayStation 52024年4月25日リリース

奥深さと煩雑さを感じさせる『サガ』シリーズ最新作

GOOD

  • 誰も遊んだことがないほど奥深いバトルシステムと、それを支える成長要素
  • 綺麗にまとまっていながらクセのあるストーリーとキャラクターたち

BAD

  • スマートフォン向けに寄せられたUI
  • 主にバトルシステムにおけるチュートリアルの不親切さ


《各務都心》

各務都心

マーダーミステリー『探偵シド・アップダイク』シリーズを制作しているシナリオライター。思い出の一本は『風のクロノア door to phantomile』。

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