精神疾患当事者から見た『Senua’s Saga: Hellblade II』インプレッション。心を巡る物語は、より苛烈な世界へと広がる【プレイレポ】 | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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精神疾患当事者から見た『Senua’s Saga: Hellblade II』インプレッション。心を巡る物語は、より苛烈な世界へと広がる【プレイレポ】

精神疾患を持つ女戦士「セヌア」を通じて見えてくるもの

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精神疾患当事者から見た『Senua’s Saga: Hellblade II』インプレッション。心を巡る物語は、より苛烈な世界へと広がる【プレイレポ】
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Ninja Theory開発の『Hellblade』シリーズは、精神疾患を持つ女性戦士「セヌア」の戦いを描いた作品です。また、本記事でシリーズ新作『Senua’s Saga: Hellblade II』の先行プレイをお届けする筆者は、精神疾患の当事者です。よって、本記事でもその視点から本作をとらえています。

長患いしたもので、20年ほど「双極性障害」という気分が上がる躁期と落ち込む鬱期を繰り返す病におかされています。今回はいくらかの病歴の知見から『Senua’s Saga: Hellblade II』がいかなる体験をもたらしているのか、本作において独自の観点から述べたいと思います。

今作では人間とも交流し、あるいは戦う

前作『Hellblade: Senua's Sacrifice』では敵はモンスターに限られていますが、今作では「人間」も敵となります。物語は、奴隷船に乗せられているセヌアが脱出するところから開幕。そして奴隷商人をやり込め、ともに旅立つことになります。

今作では人間とのやりとりも描かれるため、セヌアの孤独な戦いにもどこか救いを感じられるでしょう。他者という客観的存在に対してやりとりができている分、セヌアが“病み”をいくらか乗り越えんとする様がうかがえます

作品の舞台

本作は10世紀のアイスランドを舞台とし、フォトグラメトリーを駆使して実際のロケーションを再現したものがマップデザインに表れています。実在の場所をもとに圧巻の緻密さで再現された、10世紀のアイスランド全土で繰り広げられる壮大な旅を味わえるでしょう。

より重たく苛烈になった戦闘は痛みを伴う

カットシーンのような戦闘シークエンス

本作ではモーションキャプチャーを活かした戦闘アニメーションが用いられています。今作では1作目のように軽やかな戦闘ではなく、鈍重で重たい戦いが繰り広げられます。戦闘は内心の戦いの暗喩でもあり、その重みがより増したということは、真剣さや緊迫感が更に高められたとも言えます。つまり率直に言って、戦闘シーンは辛く感じる表現となっているのです。

本作の戦闘要素は「内心の戦いは過酷である」ということを表現していると言えるでしょう。また、戦闘からシームレスにカットシーンに入る展開も没入を促しており、素晴らしい出来です。

セヌアの病みとはいかなるものか

セヌアは統合失調症を思わせる幻聴を体験しますが、躁状態や鬱状態にも陥る点から、実際に開発元が取材したさまざまな精神疾患当事者の持つエピソードから膨らませたものとうかがえます。

統合失調症には「休息期」という意欲が出ない鬱の時期もありますが、セヌアは多様な精神疾患が当てはまるようデザインされているのです。また前作からの大きな違いとして、セヌアは戦いの果てに、自身の持つ幻聴や幻視に対して受け入れ折り合いを付ける姿勢を獲得していることも特筆すべきポイントです。

しかしながら残念な点も

本作は戦闘パートとパズルパートの2つをこなしながら進行していきます。しかしながら、パズルパートは冗長かつFoVが狭くプレイしにくいため、非常に進みづらいです。また直感的ではないマップ、行ける道と行けない道の区別が付きづらいため不要な迷いを生みかねません。没入感を削ぐこの設計には、閉口気味になってしまいました。

進化した点

今作では幻聴に字幕が付いているので、物語を理解するとっかかりとして機能しています。「アクセシビリティ」の項目では字幕サイズを特大にすることもでき、幅広いプレイヤーに対するアプローチとなっていて好印象です。

『Senua’s Saga: Hellblade II』はどのようなゲーマーに刺さるのか

本作は精神疾患を持つ方はもちろん、そうではなくただストーリーや世界に興味がある方も含めて、アイスランドの旅に誘ってくれます。セヌアという重たい精神疾患当事者の目線で進むので、プレイすることで相互理解の種にもなるでしょう。本作は「病んでいてもだいじょうぶ、世界の美しさは待ってくれている」と伝えてくれます。

本作をプレイすると「精神疾患当事者」を表す4文字の俗語を使うのがためらわれるようになるでしょう。内心の戦いを映す本作は、まさにどれだけ精神疾患が過酷なものなのかを見事に表現していました。心の病が身近な疾患となって長い時が過ぎましたが、本作が様々な方にとって相互理解の為の新たなきっかけになることを願います。

また、前作に引き続き『Senua’s Saga: Hellblade II』もドキュメンタリー映像を収録。ここまで述べたように深いバックグラウンドを持つ作品ですので、シリーズファンや本作に興味を持った方なら必見です。


『Senua’s Saga: Hellblade II』は、Xbox Series X|S/Windows(SteamMicrosoft Store)向けに5月21日に発売予定。Game Passにもリリース日から対応します。


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《SHINJI-coo-K(池田伸次)》

FPSとADVを偏愛しつつネトゲにも造詣のあるフリーライター SHINJI-coo-K(池田伸次)

「Game*Spark」誌に寄稿しつつも「IGN JAPAN」誌と「GAMERS ZONE」誌にも寄稿。「インサイド」誌にも寄稿歴あり。今はなき「Alienware Zone」誌や「週刊Steam」誌にも寄稿していたフリーライター。 そしてヒップホップビートメイカー業も営む音楽家兼ゲームライターの兼業家。通称シンジ。

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