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弊誌から2名の記者で取材にあたったビット・サミット。「海外の人がたくさん来そうだ」程度のイメージしか描けていなかったため、実地の熱気には終始圧倒され続けました。参画していたのは基調講演に登場した企業やインタビューしたデベロッパーも含め60社以上に上ります。
主催者James Mielke氏へのインタビューにもありましたが、このイベントが開催された動機を一言で表現するなら国内外で散見される「"日本のゲームは終わった"説への反論」です。その主張を既存の大規模な展示会を通じて発信するのは、やはり無理があるでしょう。自説を構築するにあたり自ら新しいカタチのものを企画し、人を集め、そして成功させたMielke氏の積極性から学ぶべきところは実に多いといえます。
日本のゲーム業界の構造的問題についてもしばしば言及されました。一側面から判断して糾弾するのは適切ではありません。しかし、そうした問題意識が共有されているという事実は変わりなく、特にパブリッシャーとデベロッパーの関係がどうあるべきかについてはいくつかヒントがもたらされたのではないでしょうか。
イベントは大盛況のうちに終わり、第2回の開催が期待できる成功ぶりでしたが、いくつか課題も見受けられました。まずMielke氏インタビューでも言及されていたとおり、会場があきらかに手狭だったこと。早期締め切りしてこの賑わいだったのですから、誇張抜きで次回以降は数倍以上の会場が必要かもしれません。同じ理由から、各デベロッパーのブースが小さく、コンタクトを取りづらかったのも改善点でしょう。
また、これは仕方のないことだったのかもしれませんが、プレス向けの場所が整っておらず、特に無線ネットワーク環境が地下会場だったこともあってか全滅気味だったのも気になりました(会場のWiFiスポットも使用不能でした)。さらに、現場の熱気を伝える手段が少ないのももったいないところ。関係者向けイベントであることを踏まえても、状況の一部をストリーミング配信しても良かったかもしれません。
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日本のインディーゲーム界は特殊で、いわゆる「同人ゲーム」と区別して認識される傾向にあります。その正誤や良し悪しは語れません。ただ、両者間にあえて境界線を引く前向きな理由もまた、特に思い当たりません。日本のカルチャーはすでに世界に認知されています。グラフィックの傾向やゲームジャンルを理由にインディーシーンへの挑戦を避けるのは、宝の持ち腐れです。日本が誇る同人シューティングや同人格ゲーはSteam Greenlightで成功し得ないと論理的に説明できる人が果たして存在するでしょうか? すでに不動の地位を築いた組織にとっては喫緊ではないでしょうが、そうでない場合に新航路としてインディー路線を目指すことが間違いとは思えません。
また、日本のゲーマー側にもほんの僅かでもストライクゾーンを広げることが望まれます。どのゲームが良いだとか悪いだとか、このジャンルだからダメだとか、自ら狭量になることなく、あらゆる作品の「面白さ」「楽しさ」を受け入れられる感受性を磨く必要があるでしょう。ゲーマー全員が文化の発信者なのです。
今回は関係者限定のイベントでしたが、国内での認知度も高まったであろうビット・サミット。日本のインディーシーンとゲーム業界にとって、魁にして旗印となるのかもしれません。今後の展開に注目です。
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