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GDC 13: Q-Gamesディラン・カスバート氏の“アイデアを制限する”デザイン論

GDC二日目、「ゲームデザインの閉塞」というテーマで講演を行った、キュー・ゲームスの代表取締役 ディラン・カスバート 氏。京都を拠点にする独立系スタジオという立場でありながら、業界に長く身を置くベテランというだけあって、広い会場はほぼ満席。カスバート氏は

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GDC二日目、「ゲームデザインの閉塞」というテーマで講演を行った、キュー・ゲームス(Q-Games)の代表取締役ディラン・カスバート氏(Dylan Cuthbert)。京都を拠点にする独立系スタジオという立場でありながら、業界に長く身を置くベテランというだけあって、広い会場はほぼ満席。カスバート氏は、任天堂の宮本茂氏にまつわる興味深い開発エピソードを明かしました。


カスバート氏は、Argonaut Software時代に『Starglider 2(PC)』や『スターフォックス(N64)』『X(GB)』といった作品に関わり、2001年に創設したQ-Gamesでは、PSNの『PixelJunk』シリーズ、そして3DS『スターフォックス64 3D』などをデザイン。最新作の『Pixel Junk Inc,』は実に20作目に当たるそうです。


その長きにわたる開発経験で学び取り入れているのが、“既にあるデザインのアイデアを壊して制限(Occlusion 塞ぐ/閉塞する)し、そこから新たなアイデアを発見する”というもの。

まだ十代という若さで日本を訪れ、任天堂と共に新作スペースシューターをデザインしていたというカスバート氏。ゲームの内容は、氏がそれ以前(1988年)に手がけた『Starglider 2』を基にしたもので、一人称視点で3D空間をフリーローミング可能という、当時の技術レベルとしては最先端のシステム。


しかし開発の経過が思わしくなく、ある日、宮本茂氏が現れると、フリーローミングシステムを廃止してオンレールのスクリプトイベント型システムに変更するよう指示。さらに1人称から3人称視点に変更を要求。この結果、出来上がったのがSFCの名作『スターフォックス』です。

カスバート氏はその当時生意気な若いプログラマーで、宮本氏の指示を冗談じゃないと内心考えたそうですが、言語の壁もあり、仕方なく受け入れることに。こうしたデザインの制限によりゲームに以下のような変化が生まれました。

  • フリーローミング(3Dフライト) → オンレール(2Dフライト)
    • より洗練・調整された操作性が実現。
    • Barrel Roll(旋回)が誕生。
    • エピックなボス戦がより作りやすくなった。
    • 二次的効果: フレームレートが上昇
  • 一人称視点 → 三人称視点
    • 建物やオブジェクト間をかいくぐって操作。
    • 翼のダメージ。縦方向の翼の調節。
    • Barrel Rollが視覚的、直感的に。
  • 3Dマップ → イベントシステム
    • 敵のエンカウントをスクリプトする自由度が生まれた。
    • オブジェクト生成システムのトリガー。
    • 開発時間を早めた。




作ったアイデアを壊すのは一見不利なことにも思えますが、そうすることで、陰に隠れていたより良い新しいアイデアが見つかるかもしれない。壊したアイデアはいつでも復活することもできる。これがカスバート氏が『スターフォックス』で得た教訓です。



このデザイン論は、おなじみ『PixelJunk』シリーズでもしっかり取り入れられている点が紹介。講演の最後には、Q-GamesのSteam向け最新作である『PixelJunk Inc,』のティーザートレイラーが初披露され、会場は拍手に包まれました。



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Q-Games、PixelJunkシリーズ最新作『PixelJunk Shooter 2』を発表
《Rio Tani》
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