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先月にアナウンスされていた学校法人・専門学校HALとPLAYISMによる産学連携プロジェクトの初回学生発表が本日ひらかれました。本プロジェクトは、HAL大阪とHAL名古屋のゲームデザイン学科・ゲーム開発学科・ゲーム制作学科の学生らにより制作された作品を学内で閉じることなく、PLAYISM関係者をはじめとするゲーム開発者の講評などを経て、最終的にPLAYISM配信を目指すというもの。
作成されているすべてのものが発表されたわけではなく、少なくとも現状で見どころがあると思われた作品と学生がピックアップされ、プレゼンテーションの場が与えられました。多少スパルタンですが、ゲーム開発がしばしば地獄めいたシチュエーションになることを考えれば当然といえば当然でしょう。
記者はあらかじめ全発表者の企画書(Powerpoint1枚*30)ならびに、関係各位による講評に目を通したうえで取材に参りましたので、まずは意見を差し挟まず、時間内に発表された作品についての学生VS開発者の様子をお伝えします。指導者はNIGOROから楢村匠氏、鮫島朋龍氏、Pixelから天谷大輔氏、片道勇者のSmokingWOLFから中野氏。ほかに、PLAYISMからJoshua Weatherford氏や水谷氏も。
1: 『チャックサモナー』
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網野美紀さんらによる、チャック(ジッパー、ファスナー)に着目した作品。フィールドにチャックを作り、「綿」を投入することでモンスターを召喚するというもの。ジャンルはRTS。三すくみや属性の概念などにくわえ、プレイヤーによる直接攻撃や、土地属性などの要素も。面クリア型。複雑な操作を排除することにより、RTSを敬遠してきた層にもアピールすることを価値としました。試作品も制作されており、「チャックを開いてモンスター」の流れを表現していました。
天谷氏:
まず着想が非常に良いです。「開け閉めできる穴」を説明するのにチャックを使えば、世界中の人に伝わります。その点、私が創った『洞窟物語』も同じような性質でした。説明書がなくても遊びやすい、ということです。せっかくですので、ビジュアルのキーにチャックを使うのはどうでしょうか。たとえば「チャックを開けたら次の世界」といった具合ですね。
1つ疑問がありますが、チャックに入れる「綿」はどこから生成するのですか? 無制限に入れられるのか、リソースがあるのか、マップ上に点在しているものを集めるのか、ということです(A: 「綿」のボタンを押す形式です。また、「チャックゲージ」には限りがあり、モンスターの大きさに応じて消費します) なるほど。操作感覚が企画書だけでは伝わりづらい部分がありましたから、そこは時間をかけて創りこんで欲しいです。
鮫島氏:
今のところ、チャックを開けることにリスクがない一方で、プレイヤーのチャック操作範囲制約もありえるなど、内容が結構複雑です。アイデアは非常に良いと思います。これは効果音勝負といえるでしょう。チャックの開け閉めの音が気持ちよくなければゲームが死にます。
気になるのが「綿」の詰め込みの部分です。種類によって性格が決まるくらいのほうが理解しやすくてよいですし、チャックも大きさで入る「綿」の量を表現するなど、視覚的な情報を重視すべきでしょう。ともあれ、「チャックを設置して開けて楽しい」くらいにまで持っていければ十分でしょう。また、RTSのお約束的なゲームバランス(小物を大量生産したほうが強い)をどう料理するかもポイントでしょう。
問題は、CPU対戦の部分です。AI製作はとても大変だということに気をつけてください。プログラム担当が今から泣きながらやる自信があるなら別ですが。その点においては対戦のほうがマシです。
Mr. Joshua:
タイトルの「チャック」については、英語圏では『Zipper Summoner』にすれば通じるでしょう。『ジッパーサモナー』、響きも良いです。
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2:『貧弱勇者』
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堀峻祐さんらによる作品。1人向けパズルゲームです。ブロックを切り取り足場を作り、主人公を上方へ移動させるというもの。綺麗に切れたかを判定するなどの要素も考案されています。プロトタイプはやや挙動が怪しかったですが、コンセプト通りでした。
楢村氏:
事前の資料を見た時、「ブロックの枠をノコギリで切る」となっていたので、これだ!と思いました。破壊ブロックやアイテムブロックなど、特殊なもの導入しやすいでしょう。しかし、プロトタイプではクリックになって平易でしたね? この手のものは『テトリス』が完全なものとして君臨しています。
ゲームシステムの部分も練り込みが必要です。たとえば『テトリス』にあるブロック回転のような駆け引きが必要です。そうでなければ、一番端から順番に落とすだけのゲームになってしまいます。そういった点をふまえて、一時的に2段登れるようなパワーアップであるとか、逆転の足がかりになるようなシステムを入れるとよいでしょう。「こうすればプレイヤーは焦る」という着想を忘れずに。
プロトタイプからは『ぐっすんおよよ』あたりを連想しますが、そうしたものが参考になるでしょう。前例を踏まえつつ製作していけば、細かいところは自然と決まってくるものです。最初のルール決めを重視してください。
中野氏:
まず、ブロックを切る自由度が高すぎるがゆえに、基本的なテクニックをプレイヤーが習得したらゲームが終わってしまうのではないでしょうか。「一筋縄ではいかせない」という点をきちんと考慮してください。ほかにはたとえばコンボボーナスだとか、そういったスパイスになるアイデアも欲しいところですね。
鮫島氏:
見た瞬間、逆『ミスタードリラー』、または『ぐっすんおよよ』だと感じました。アイデア自体はなんとかなりそうな手応えを感じます。しかし、ただ登ればゴールに到達するのではなく、目的地を目指して進むようにしたほうがよいでしょう。登り続けるだけではプレイヤーのモチベーションが保てません。
また、すでに指摘がありましたとおり任意のブロックが切れるというのは、プレイヤーの楽しみが基本テクニックの習得に限定される恐れがあります。特殊ブロックの性質も含め、まだゲームの面白さに不透明な部分がありますので、そういった点を踏まえつつ、はっきりと形作りをすればよいでしょう。
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3: 『妄想忍者』
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西田友太郎さんらによる、「授業中の妄想」をテーマとした2Dアクションゲーム。コンセプトは「ペーパー忍者アクション」。妄想主を退屈(ゲームオーバー)させないよう、教室を背景とした世界で紙のような質感の忍者が疾走・攻撃するという内容。マップのギミックにはコンパスやホッチキスといった文房具を用いるとのこと。プロトタイプながら完成度が高く、動く・斬るという一連の流れがすでにできあがっていました。
天谷氏:
オリジナルとしてなかなかのクオリティです。絵を描けるというのは素晴らしいことで、これだけでももう面白そうです。落書き帳にある絵のようなものでも遊んでみたいですね。手触りも大事にしつつ、3ヶ月の期間内で楽しいものを創ってください。
横スクロールアクションが好きなのですが、妄想が影(退屈)で見えなくなるというのはいらないのではないですか?
(A: 斬る気持ちよさを打ち出したかったからです。斬って、眠気が覚める。斬ることを必然としたかったのです。「授業中の妄想」が先に出てきたのですが、本作が主軸をおくのはあくまでも「斬ること」です。ジャンプですべて避けて、それだけでクリアできるゲームにしたくありません。ですから、「斬ること」を必然としました。その気持ちよさを追究します。)
楢村氏:
ジャンプ、斬る、簡単操作で気持ちいといったゲームはたくさんあります。そのなかで、制限時間を足すのは良いでしょう。その点において、私の意見は天谷さんと逆です。ただ、このタイトル『妄想忍者』には注意してください。ピンク色で『妄想』はあらぬ誤解を招きかねません(会場笑)
斬って気持ちいい、というのと、文房具が敵、というだけで随分面白くできそうです。「妄想」と「斬ること」を上手くくっつけて、時間制限を活かすのもよいでしょう。ただし、タイトルには聞いた瞬間すぐわかるようなワンアイデアが欲しいところです。それでさらに目を引くことができるでしょうから。
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4:『神様シミュレーター』
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田村麻貴さんの発表。メンバーの名前の頭文字をとったというチーム「畳に小鹿」が制作する、「ジャンル: 天変地異シミュレーション」。ゴッドゲームとシミュレーションゲームを掛けあわせた内容。マウス操作で破壊と想像を繰り返すタワーディフェンスタイプの作品です。味方キャラクターは原則的にAI挙動ですが、「信仰ゲージ」を使っての特定の指示を出すフィーチャーも導入予定。なお、プロトタイプはありませんでした。
鮫島氏:
私はゴッドゲームが大好きなんですよね……。『ポピュラス』はじめ、あらゆるゴッドゲームをプレイして来ました。皆さんご存じないかもしれませんが、率直に言ってこれは『ポピュラス』ですね。創り込むと面白くなるでしょう。
ただし、弱点が1つあります。タワーディフェンスタイプの「ウェーブを耐え切る」というシステムは、狭い画面内で情報が完結するからこそ成立するという側面があります。画面が広いところでやるとダレる危険性があります。全部オブジェクトを壊すなどの、目標達成形式にしたほうがいいかもしれません。
そして最大の問題点として、「この作品がおそらく完成しない」ということが挙げられます。たとえば川を作って敵の進路を阻む、という仕様はプログラム的にすごく難しいのです。並大抵の技量では無理でしょう。また、地形を動かすという部分も難しい。さらにいうと、セルごとに計算をすること自体まずもって難しいのです。敵味方ともにAIで、高低差もあり、その状況で目的地への経路計算をセル単位でやるとなると、3ヶ月ではかなり危ないです。
創り込めばいつかは完成するでしょうが、企画のどこかをスポイルするという判断も必要になるかもしれません。『From Dust』は戦闘が一切ありませんが、私はオミットしたのだと推測します。つまり、それくらいの方向転換は余儀なくされるかもしれないと心得ておいてください。
(A: 水場の処理は複雑にしないつもりです。山の上に湖があり複雑な高低差を計算しなければならない、というシチュエーションも省く予定です。)
鮫島氏:
それくらいでよいでしょう。
中野氏:
川や山の扱いにかぎらず、開発リソースを削減することは大事です。お話のあった『ポピュラス』など、天変地異をネタにしたタイトルは複数あるので、ネットなどで解説を探して参考にしてみてください。なお、ディフェンスゲームがどうなるかはプログラマーの頑張りにかかっています。
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5:『ワンショットエリーちゃん』
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小西裕貴さん率いるチームによる横スクロール2Dアクションシューティング。コンセプトは「プレイヤーの射撃の1撃1撃に面白さを追求した2Dアクションシューティング」。得物はリボルバーで、一撃を狙う必要性を高めるとのこと。属性弾丸の生成や、撃発の反動を生かした「反動ジャンプ」(いわゆるロケジャン)も。爽快感を求めつつ、パズル的な要素も織り込むそうです。
中野氏:
弾丸が6発というのは男らしい設定でいいですね。戦略性も含め面白くなりそうですが、かなりのゲーム開発熟練者でないと創りあげられないのではないかなという印象もあります。先生に手伝ってもらうことも視野にいれて、ぜひ挑戦してほしいです。
ただ、いくつか懸念があります。まず、弾の生成が面倒くさくならないか、ということ。弾の生成は1フレームですか?(A: 多少は硬直させる予定) たとえば、30フレームだと長いかもしれません。プレイヤーというのは基本的に我慢強くないですから。
狙って撃つところの気持ちよさを演出できるかどうかもポイントになるでしょう。狙い撃てばまとめて敵を倒せるであるとか、拡散弾であるとか、そういったものをベースにしたほうがプレイヤーにすぐ面白さを伝えることができるかもしれません。また、狙う時のインタフーフェースも重要です。狙うならばアナログのほうが楽しいかなと思います。いろいろ試してみてください。
楢村氏:
私の意見は、いくらか中野さんの逆です。まず、気持よく撃てるだとかなんでも壊せるだとかそういうコンセプトのタイトルが増えるなか、6発制限というのは突き詰めると面白くなるでしょう。にもかかわらず、その制約を弾の生成や合成でカバーしてしまっているのがつまらないです。
制限された上でゲームを面白くする、それはプレイヤーに我慢をさせることです。その解放のカタルシスが良いのです。耐えている間は一切攻撃できず、敵を踏みつけるくらいの微々たる抵抗しかできない、しかし撃てば一面まるごと消し飛ぶくらいの気持ちよさがあるべきです。個人的には、「6発しかない」ことに特化すれば面白くなると思います。
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6:『成仏サムライ』
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赤阪裕哉さん率いる学内制作チーム「シープラス」による2Dアクション。ジャンルは「高速成仏2Dアクション」。和風の世界観のアクションで、納刀動作の気持ちよさにフォーカスした作品です。敵を攻撃して倒した後に納刀することで敵が一斉に倒れるシステム。納刀によるメリットはライフ回復、スコア加算、タイム加算。5エリアとそれぞれのボスが予定されています。プロトタイプはなし(イメージイラストはあり)。なお、PLAYISM水谷氏いわく、「妄想忍者もそうだが、ニンジャとサムライへの外人の食いつきがハンパじゃない」とのこと。
楢村氏:
事前にもらった資料で、ゲームのキモが説明されていたので良いと思ったのですが、仮画面を見た時に「あれっ?」となりました。斬った敵を溜めている間のデメリットを考えてください。ゲーム作りに対する個人的な考え方なんですが、メリットがあるならデメリットを用意してください。遊ぶ人はたいてい想像していた以外のことをやってしまいます。たとえば、右に行ってずっと刀を振っていたらクリアできるんじゃないか、とかね。そういった、ルールに則った上での制限を設ければ、きっと面白いゲームになります。
鮫島氏:
多少辛辣にいきますよ。これ、『朧村正』ですよね。もうちょっと見せたいものを見せてください。それに、先ほど指摘がありましたが、敵を溜めるデメリットがないと各個撃破だけになってしまいます。そして、スコアの要素が言及されていましたが、これはそもそもどうでもいいという人がいます。私とかね。
さらに重要なのが、抜刀・納刀・破壊という流れについての問題です。これは、「一撃で倒せる敵がいない」ことを意味します。一撃で倒せる敵の存在は、ゲームのテンポを維持する上で非常に重要なのです。その時点でアクションゲームの作りとして若干危ない部分があります。少し考えてみてほしいです。
画面の幅広さも重要です。たとえば縦の動きを広げて天井などを設置したとしても、結局同じ床に着地するようでは面白みに欠けます。ゲージを溜めないと倒せない敵を用意するなど、工夫してみてください。また、納刀も「ゲージが切れたら」とか「納刀ボタンを用意したら」とかではない、簡単な操作も模索してみるといいでしょう。
楢村氏:
企画書を見た段階では、画面にたくさん出てきた敵をマウスでぽちぽちクリックしてからズバッと斬るのかと思いました。コンセプトに若干の矛盾があります。ジャンプアクションをすることと敵を溜めて倒すこと、やりたいことを釣り合わせるか片方を捨てるか、あるいは両方が統合されたすごいアイデアを出すかしなければなりません。
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7: 『ロールプレイングロード』
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森村司さんらによるアクションパズルゲーム。能力の異なるキャラクターらで連携して面をクリアするタイプ。たとえば戦士はモンスターを足止めし、魔道士は足場がない場所を浮遊でき、狩人はハシゴを設置できるといった具合です。ステージは1画面固定。
中野氏:
「ありそうでなかった」という印象があり、なかなか良かったです。ユニットがRPGの文法に則っているのも理解しやすいです。それに、これから拡張するとしてもいくらでも増やせますしね。時間に余裕があれば、キャラやステージのバリエーションを増やすだとか、ボスキャラとの対決を創るだとか、いろいろ考えられます。時間との戦いになるでしょうが、シンプルなゲームなのでなんとかなるかもしれません。あと、1画面にすることは開発コスト的に英断です。
(A: ステージは15個と決めています。)
なるほど。ですが、最初と最後だけ創ってあとで中頃を製作するというのもアリですよ、とほかのみなさんにもお伝えしておきたいですね。また、ゲーム操作もテンキーの使用は避けて、shiftキーやtabキーを使うことなども考えてみてください。
鮫島氏:
厳しいことを言うつもりはありません。このタイプのゲームは好きです。X68000の『サブナック』というパズルゲームがありまして、それはプレイヤーは1人なのですが、どの順番でどの敵を倒していくのか、といった内容でした。よく似ています。このままでいけると思います。
ただし、私の視点で言わせてもらうと、キャラクターセレクトをテンキーにバインドしているのはクソです。3キャラのままなら左右キーでどうにかなります。また、ゲームパッド的な構造でやってみるというのも手かもしれません。いろいろ試してみてください。
あと、各キャラの役割について、複数もたせるのは望ましくありません。もっと単純化したほうがいいでしょう。その上で、わかりやすいレベルデザインを徹底してください。ほかのアイデアとしては、今言ったばかりの単純化の方向と真逆ですが、「ぶつかったら死ぬ」ルールも、「戦士なら死ぬけれど魔道士なら死なない」といった具合にカタルシスを表現するのもアリでしょう。全体的に、仕様をコンパクトにした上でレベルデザインを練りんでプレイヤーを惹きつけるとよいでしょう。
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8: 『バトルイストリアウ』
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飯田剛さんらによる、その名の通り「椅子取りゲーム」。リソース配分、ステ振り、位置取りなどの概念あり。キャラクターを強化してから椅子取り戦争というゲームの流れです。Unityで製作されたプロトタイプはきちんと動いていました。
天谷氏:
私がまだプログラムができなかったとき、知り合いのプログラマーに助力を願ったことがあります。そのとき提案したのが「部屋の中の物をなんでも投げつけるゲーム」だったのですが、相手に伝わりませんでした。自分の中にはもみくちゃになっている絵があったのですけれどね。
あと、こうしたゲームでは音楽がゲームにおいて重要な意味をなします。楽しい音楽と修羅場のギャップをどう創るかによってこの作品の面白さが決まるでしょう。
問題は、これがいわゆる「パーティーゲーム」に着地してしまうかもしれないということ。実際に触ってみた時の感触の伝え方を考えてみてください。椅子取りゲームに固執する必要性はありません。
また、「椅子取りが始まった瞬間終わっている」というシチュエーションを用意するなど、バラエティを持たせてもよいでしょう。
楢村氏:
「古代ローマ時代において奴隷たちは生き残りをかけてコロッセウムでイストリアウがおこなわれた……」とかね、それくらいはっちゃけてもいいんですよ。昔の椅子取りゲームを思い出してください。誰かが泣くまで興奮したとき何が起こりましたか?
椅子に座ったやつを蹴飛ばすとか、椅子を持って逃げまわるとか、そういった発想です。本来なら椅子に座れば勝ちですが、タイムリミットまでなら敵に弾かれる、とかね。コレクションやらステータス振りやらが終わったあと、敵の首を刎ねて脚をもいで椅子をぶっ壊す、くらいにしてもよいでしょう。
参考にして欲しいのは『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!』の「フォークダンス対決」です。切り替えの面白さを求めてみてください。
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【全体報告】
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今回30作のなかから9作をピックアップしたのは、あくまでも企画書だけでの判断であり、今回選ばれたから優秀であるとか、今の段階で決まるとかいった性質ではないと水谷氏が明言した上で総括です。
天谷氏:
企画書をいただいて読んでみて、何を喋ろうか考えていたのですが、それよりも創りこまれているものが多かったです。1ついうならば、ゲームタイトルを練ることを大切にしてください。『ロールプレイングロード』が典型でした。RPGなのかと思ったらパズルアクション、という齟齬が生まれかねません。ゲームのタイトルは企画書よりも早い段階の入り口になるのです。はっきりとしたコンセプトを打ち出してください。たくさんゲームの入ったスマホ、結局『Angry Birds』をプレイしちゃうでしょう?
楢村氏:
課題が「企業からの依頼」という仮定とのことで、苦労したことでしょう。ただ、全体を見ていて思ったのですが、「様々な成長性」「バリエーション」「収集」といったフレーズは使わないでください。そういうものはゲームシステムができあがって、それのパラメータの設定次第で自動的に出来上がるものなのです。ゲームが面白くなければそもそも「収集」なんてしません。次の1,2週間はそうした部分を詰めてもよいでしょう。
なにかと堅苦しくなりがちですが、ゲームは創っている側が楽しくなければ面白いものはできません。今後、グループでやっている以上、まずいざこざが発生することでしょう。そのとき、最初期のこと、たとえばチーム名を考えていたときや、企画を打ち出したときのノリなどを思い出してください。純粋に楽しんでいたでしょう?
PLAYISMで優秀作品がリリースされるという最終目標はありますが、今はそれを至上の命題とせず、今は楽しんでください。言い方が悪いかもしれませんが、「PLAYISMで出したあとに数ヶ月かけてブラッシュアップします」でも構わないのです。そんなことより、ゲームを楽しんで製作してください。
中野氏:
企画書において、模式図でもいいのでゲーム画面を創るのは必要です。その点、プロトタイプができているチームがいくつかあったのは素晴らしいです。みなさん自信をもって続けてください。
鮫島氏:
私はHAL大阪にいるので顔を合わせることも多いでしょうから、詳述は避けましょう。ほかにも言及したい企画はありました。「面白そう」から「ふざけるな」までね。
もうほかの方に言われてしまいましたが、プリミティブなゲームの面白さを追求してください。追加的なパーツに面白さを求めてはいけません。成長も、アイテムも、パラメータも、もろもろを削りとって面白くすることも忘れないでください。今の世の中、様々なフィーチャーが織り込まれたタイトルが多いから詰め込みたくなる気持ちはわからないでもないですが、そこは我慢して判断してください。
水谷氏:
今、じつは『ICO』をやっているんですが、あれは「手をつなぐ」ところに面白さがありました。シンプルなものでいいのです。現段階での仕様をがらりと変えてしまっても構いません。鋭く、尖ったものを求めてください。面白くないものを創り続けるのではなく、きちんと軌道修正はしてください。
いかがでしたでしょうか。このプロジェクトの中から未来を担うタイトルと人材が出るかもしれないのです。ゲーム創り以外の能力と肩書きではなく、純粋に作品で評価する潮流が日本で醸成されるのは望ましいことでしょう。
さて、せっかくですので並んだ作品について記者Gokubuto.Sの感想を申し述べさせていただきたいと思います。基本的にポジティブかつ冷静に。
『チャックサモナー』、「スティッキー・フィンガーズ!」。なるほど、音が大事という指摘は何にも代えがたいアドバイスでしょう。RTSの敷居を下げるというコンセプトも、そもそもRTSが現状ではとっつきづらいタイトルだらけになっているという認識を持っている証拠であり、悪くありません。
『貧弱勇者』は、まっさきに『キャサリン』を思い浮かべました。非常に好きだったタイトルですので、なかなか引き込まれるものがありました。「基本的なパターンを学習してしまえばそれまで」という指摘もありましたが、じつはこの性質は『キャサリン』に類似しています。その点、『キャサリン』は高難度のマップを用意するなど、レベルデザインで対抗していました。結果、難しくなりすぎてイージーパッチが発売後すぐさま配布されたことは語り草です。
『妄想忍者』の完成度は、場にいた全員が感じ取ったことでしょう。わずか1ヶ月で魅力的なコンセプトを打ち出した上で、それを伝えるプロトタイプを創りあげたのは素晴らしい情熱だと思います。類似しているのは『NIN2-JUMP』あたりでしょうか。講評にも真っ向から自らのイメージをきっちり主張してのける様子もじつに印象的でした。
『神様シミュレーター』は、『Minecraft』・アンド・『ポピュラス』・ミーツ・タワーディフェンスといったところでしょうか。製作の難しさが指摘されていましたが、ある程度覚悟はできているはず。期待したいところです。
記者が一番気になったのが『ワンショットエリーちゃん』。そもそも「飛び道具で一撃必殺」が好きなので、タイトルからして感じるものがありました。アクションとしても既存のゲームの構文を採用しつつもリボルバーを前提としているのが面白かったです。
いくつか指摘すると、まずそもそもリボルバーのリロードはマグにくらべて一般的には遅いですが、神技はスピードローダーの有無を問わず実在しており、 YouTubeを調べればいくらか出てきます。すべてを「"リボルバー・オセロット"のようなもの」に結びつけないほうが安全かと思います。
属性弾をリロードするというアイデアについては、現在チャンピオンRED に連載中の漫画『エグゾスカル零』にて、ちょうど「青酸カリ弾」が出てきたところでした。これは拳銃に内部で弾丸を調合する機能があるという設定。当作のハンドガンはリボルバーではありませんでしたが、そういった発想はたまに世に出ています。
リボルバーのみならず、とくに銃のリロードについてカタルシスを語る上で外せない作品はグラスホッパー・マニファクチュアの『killer7』。おそらく世界で一番美しいリロードが描写されたゲームです。ご存じない方はともかく観てみてください。
銃で一撃必殺をテーマとした作品といえば、やはりアーケード『サイレントスコープ』シリーズも外せないでしょう。今ではまともにプレイできるゲームセンターはほとんどありませんし、そもそもジャンルが全然違いますが、数少ない真なる「狙って撃つ」ゲームです。
あと、今回の製作期間では厳しいでしょうが、機会があればやはり本物を体験してみて欲しいところです(的を撃つ側)。
ともかく、銃をフィーチャーした作品はあまたあります。たとえば『Call of Duty』シリーズや、直近だと『Receiver』のようなリアルなものから、いかにも日本人が考えた風のファンタジー・ガンまで様々あり、そしてそうした架空が現実になったりする世の中だったりもします。「銃で一撃必殺」という、案外見かけない(脳天に何発も撃ち込まないと倒れない敵が出てこない)コンセプトをぜひとも煮詰めてほしいです。
『成仏サムライ』は、『朧村正』であり、『影の伝説』であり、『ファーストサムライ』であり、そして『ルパン三世』シリーズの"石川五右衛門"でしょう。納刀の「チン!」音はぜひ何らかの手段で自作してみてほしいところです。
『ロールプレイングロード』はゲームがぱっと思い描けるのが印象的でした。じつは記者は同タイプのゲームをそれほどプレイしていないので機微はわかりかねますが、ちょうど30年の時を経た今、『ドアドア』を超えるのもよいでしょう。
『バトルイストリアウ』は、プレゼンを見て、そして講評を聞き、やはり『くにおくんの大運動会』だと思いました。『くにおくん』シリーズはFC世代の、現代ではリッチとはいえない環境ながら、鉄パイプや木刀で殴りつける重みを表現してみせた奇跡の作品です。楢村氏の指摘にあったとおり、「誰かが泣く」ような映像を期待します。
HAL×PLAYISMプロジェクトは始まったばかりですので、まだまだ完成は遠いかもしれませんが、なにか興味深い動きがありましたら今後もレポート予定です。