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ソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアのPlayStation3ダウンロード専用ソフト『rain』のプレス向け体験会に参加したので、プレイレポと、プロデューサーである鈴田 健氏のインタビューを併せてお届けします。
■オープニングから滲み出るゲームの面白さ
ゲームを開始すると、絵本のようなビジュアルでオープニングがスタートします。
【オープニング】
ある日、目が覚めた少年は、窓の外に「透明な少女」を見つけます。
少女の後ろには、同じく透明な、けれど異形の怪物が……。
2つの影を追いかけ、少年は家を飛び出しました……。
不思議な光る扉を抜けた先は、雨の降る、暗い夜の街でした。
人気の全くない、不気味な街……。
そこで少年は気づくのです、自分自身も姿を失ってしまっていることを。
少年は、少女の姿を探し、誰もいない夜の街を、ひとり寂しく進みます。
しかし、少年を待ちうけていたのは、見たこともない異形の怪物でした。
少年は、身を隠すことを覚えます。
そう、雨に当たらなければ怪物たちに姿をさらすことはありません。
不安を感じる一方で、あまりに現実ばなれしたこの状況が、少年の好奇心に拍車をかけます。
遠くに見えたかすかな輪郭、それは、あの少女でした。
どうやら、危険がせまっているようです。
芽生えたばかりの小さな正義感が、少年の足を前へと進めます。
戻れないかもしれない、という気配を感じながらも……。
■敵を掻い潜り先に進む謎解き風アクション
本作は、雰囲気ゲーと思いつつも、確りとしたアクションゲームです。主人公は「透明な少女」を追って先に進むのですが、その道中で「怪物」と遭遇します。「怪物」も主人公たちと同じく透明で、雨に濡れているとお互いの姿が浮かび上がります。ここで、見つかってしまい、攻撃されるとミス(直前からやり直せます)。そこで、マップの地形を利用していきます。雨に濡れていると姿が浮かび上がるのですから、屋根の下を通れば視覚的には見つかりません。
また、どうしても「怪物」が邪魔で通れないときは、水溜りでジャンプして音を立てたりすることで、音に反応した「怪物」が音のした方に接近、その隙に先に進むことができるのです。
そのほかにも泥が体に付いてしまうと、主人公の位置がわかり易くなるものの、雨に濡れなくても敵に見つかってしまうという仕掛けや、「怪物」を柱に体当たりさせて、オブジェクトを破壊するといった仕掛けなどがあり、謎解き要素のあるアクションゲームで、インディーズゲームに近い印象を受けました。
■ゲームのボリュームとやり応えのあるアクション
ゲームの進行はチャプター形式で行われ、それぞれにテーマが設定されています。また、ステージを進むにつれて新しい要素が加わり、それを実践、そして応用という流れになります。
ステージ1つ1つのやり応えはあるものの、「何十時間もできるほどボリューム」を目指した作品では無く、ストレスを感じない程度に試行錯誤を繰り返しながら作品を楽しめるミドルサイズのちょうど良いボリュームを目指して制作されています。
筆者の場合は、ステージ1の中盤から積んでしまい、プロデューサーにヒントを求めていました。するとプロデューサーは「よくゲームをプレイされるんですね。裏をかきすぎていますよ。もっとシンプルにクリアできるんです。」とおっしゃい、最近のゲームに毒された自分の思考を再認識することとなりました。なお、そのプレイ様子は貴重なサンプルになったとかで今後の開発に活かされるらしいです。
さて、ゲームを先に進めます。すると、ついさっきまで子供たちが遊んでいたのであろう積み木の跡後が。壁には落書きがされており、その辺に置いてあるオブジェクト1つ1つが良くできています。それもそのはず、このゲームで使われているテクスチャは、手描きのものを採用していたりと、そこに人が居たかのような生活感を感じさせるオブジェクト配置がされているのです。
そして目に入ってくるのはゲージや数字ではなく、そんな美しい町並みとそこにいるであろう少年の姿。耳に聞こえてくるのは、どこか寂しいBGMと雨の音だけです。
これらが生み出す没入感間がとてつもなく、ただ先に進むだけでも、物語を追体験しているような感覚に襲われ、「怪物」とのチェイスは非常にドキドキし、息をするのも忘れて身を乗り出してプレイしていました。
■開発者インタビュー
時間も迫ってきたのでプロデューサーである鈴田 健氏へのインタビューに移ります。
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―――それではよろしくお願いします。
―――まず初めに、本作を制作しているのは国内のチームでしょうか。
鈴田氏:SCE ワールドワイドスタジオ ジャパンスタジオが監修していまして、PlayStation C.A.M.P!で集まったメンバー4人とアクワイアさんが制作を担当しています。開発期間は2年半ぐらいですね。
―――ゲームをプレイして、非常に町並みが綺麗でしたが、こだわった点などを教えてください。
鈴田氏:迷い込みたくなるような街を目指してデザインしました。普通なら素通りするような場所にあるオブジェクトにも、いちいち凝っていて、人がそこで何かをしていた感を出せるようにしました。
―――そういえば、道中に積み木がありましたよね。
鈴田氏:椅子も3つあったんで、きっと誰かが遊んでいたんでしょうね(笑)。
―――実際に触らせて頂いた範囲では、少年はずっと少女を追いかけていますが、まったく振り向いてくれませんよね。
鈴田氏:少女もゲーム冒頭では「あれは誰なんだろ?」と思っているんですよ。ゲームを進めていくと、少女を助ける場面もあって、徐々に信用していく感じですね。もっと進めると少女と一緒に行動することになるのですが、その後に更なる展開があります。
―――となると、ボリュームも結構あるのではないでしょうか。
鈴田氏:「数十時間遊べるオープンワールドゲーム!」という感じではないですが、ダウンロード専用タイトルにしては、満足のいくボリュームだと思います。
―――ダウンロード専用タイトルとのことですが、初めからダウンロードで、このようなゲームをイメージしていたのでしょうか。
鈴田氏:企画をしていた頃が『LIMBO』など、ダウンロード専用タイトルが活気づき始めた時だったので、そこに凄く可能性を感じたのが始まりです。チームとしても、丁度いいボリュームで丁度いい価格のゲームが好きで、そういうのをやりたかったんです。
―――ダウンロード専用で、これまで公開された情報を見ると、どうしても雰囲気ゲームという風に捉えられがちですが、確りとしたアクションゲームという印象を受けました。
鈴田氏:そもそもアイディアの源泉が「どうやったらユーザーをびっくりさせられるか」だったので、アクションゲームをベースに「キャラクターが見えないと面白いよね。」となって、じゃどうすればそれをゲームにできるか。というところから始まり、ゲームの面白さや没入感をさらに高めるアイテムとして「雨」とか「夜」という演出を足していった感じです。
そして我々は、試行錯誤からの達成感がゲームとしてもっとも面白い部分と思っているので、最初から最後までプレイのモチベーションを保ちつづけてもらうためにも、雰囲気を大切にしたデザインで全体をカバーし、今のような形になりました。
―――そう聞いて、さらにできたものを見ると「豪華声優陣」とか「有名絵師」とか「巨額な開発費と圧倒的な演出」とは全く違ったゲームで感心しました。
鈴田氏:ジャパンスタジオの1つの方針として、新しいゲームカルチャーを作るようなチャレンジをし、業界をリードする、というのがあります。例えば、この『rain』ようなゲームが世の中に出て、そして上手くいけば、、『rain』のようなゲームを作ってみたいという人は出てくると思うんですよ。私たちは、そういう責任も感じながら制作を進めています。
―――本日はありがとうございました。
実際にプレイしてみて、ワクワクドキドキする作品でした。ありとあらゆる「便利な要素」に頼らず、ゲーム自体が面白いと思える作品は久しぶりで、忘れかれていた「PlayStation C.A.M.P!」の可能性を再び感じることが出来ました。
インタビューで鈴田さんがおっしゃられていた様に「丁度いいボリュームで丁度いい価格のゲームが好き」というのはも共感でき、さらに内容が素晴らしいのですから、発売が楽しみです。
PlayStation3ダウンロード専用ソフト『rain』は、2013年秋にPlayStation Storeから配信予定です。
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(C)Sony Computer Entertainment.
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