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先日亡くなったスイスのアーティスト、H・R・ギーガー。映画『エイリアン』に登場するモンスター、ゼノモーフの生みの親として知られる彼の超現実的なアートワークは、サイバーパンクにおける人間とマシーンの融合を知的かつ技術的な側面からではなくエロティックな側面から可視化しました。彼が先駆者としてゲーム業界に残した影響を、海外メディアThe Guardianが語っています。
「落ち着き生気を感じさせないSFの領域に垣間見える、エロティックで邪悪なイメージは弄んでいいものなのだと、ギーガーはゲームデザイナーたちにそう教えてくれたんだよ」そう語るのはThe Guardianの編集者、Keith Stuart氏。ゲーム業界におけるギーガーの主な貢献は『Dark Seed』と『Dark Seed 2』のデザインを担当したことで知られていますが、その影響は『Doom』『Half-Life』『Biohazard』『R-Type』をはじめ、その他多くの作品に顕著であると同氏は強調しています。
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『Doom』
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『Half-Life』
ギーガーはゲームデザイナーにファンタジーホラーとSFのリンクを掲示した第一人者であると断言するStuart氏は、来る後世が掘り起こすために彼が残した"恐怖の源泉"に言及。その上でエイリアンを通して、メラニー・クライン(オーストリアの精神分析家)やジャック・ラカン(フランスの哲学者)を継ぐ前エディプス期の思想母体や、Barbara Creed氏(オーストラリアの人文学者)の論文「The Monstrous-Feminine(モンスターに見る女性像)」に対するデザイナーの関心を高めたことにも触れています。
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『biohazard 4』
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『R-Type』
「マシーンはセクシーなものになった。車の製造者が謳う感覚ではなく言葉通りにだ。モンスターはセックスそのものだった」「モンスターへの黒々とした思想は外からではなく、我々の内なるものから湧いてくる。それはゲームデザイナーが存在する限り生き続ける」ギーガーが同業界に与えた影響は単にデザインとしての象徴ではなく、創造に携わる者全ての思想の根幹を覆したといっても過言ではないギーガーの偉業が伝わるようです。