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スマホでもPCでも遊べるBlizzardのデジタルカードゲーム『Hearthstone』。8月25日には拡張セット「The Grand Tournament(TGT)」が開放され、新カードが一気に132枚追加されました。
カードが追加されれば戦術に幅が生まれ、対戦環境も大きく変わります。トッププレイヤーたちはこの変化をどう受け止めているのでしょうか? Game*Sparkは今回、今年4月に日本人初のプロ選手となったkoroneko選手、国内大会を2連覇したcivila選手、そしてTGT解放直後にアメリカサーバー第1位を獲得したcross7224選手に座談会形式でのインタビューを実施。
名実ともに日本のトップ3とも言える3人に、新要素の感想や最強デッキとその対策、そして今週に控える世界大会の日本代表決定戦への意気込みなどを思う存分語ってもらいました。
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――本日はお集まりいただきありがとうございます。自己紹介も兼ねて、最近の大会実績などを教えていただけますか?
koroneko: 単位制高校の4年生18歳です。遅生まれなので同級生よりも1つ年下ですね。ここ数ヶ月だと海外のオンライン大会で優勝7回、準優勝6回です。特にうれしかったのは9月4日にアメリカとEU、2つの大会で同日に優勝したことでしょうか。EUの「Syndical-Gaming's Kinguin Friday Night Cup #32」とアメリカの「HGL Amateur 250 Series #2」です。また9月6日にもEUの大会で優勝しています。
――koronekoさんはプロチーム「Hearthstone Players」に所属するほか、個人でMSI、DXRacer、G2A、GUNNAR JAPANと4社からスポンサードを受けていますね。スポンサード獲得の経緯を教えていただけますか?
koroneko: 自分からメールを投げてアタックしました(笑)。「自分はこういう活動をしており、ゲームを盛り上げたいのでスポンサードしてもらえませんか」という具合です。
DXRacerの方々には特に良くしていただきました。お会いして食事したのですが、わざわざ大阪の僕の家まで来てくださったんですよ。DXRacerのゲーミングチェアって約30kgもあるのですが、それを車で運んできてくれたんです。本当にありがたかった。
最近ではMSIさんにもお会いして、マウスパッドやTシャツなどをいただきました。今後はゲーミングノートPCも送られてくる予定なので楽しみです(笑)。
――最近ではスカイプで日本人のコミュニティグループを作ったり、DXRacerのゲーミングチェアを賞品にした「koroneko DxRacer Cup(8月16日開催)」を開催するなど、コミュニティを盛り上げる活動もされていますね。
koroneko: ええ。僕自身小学生の頃からジャンルを問わずゲームが好きだったので、自分の好きなものを広められたらいいな、と思って活動しています。
ちなみに9月27日(日)19時からは賞金付きの3対3チーム大会を開催しますので、時間が合えばぜひご参加ください。詳細はこちらにまとめています。
――civilaさんはいかがでしょう?
civila: 20代半ばで、千葉県で農家をやっています。最近ですと6~8月に行われた国内オンライン大会「JCG Hearthstone Proleague」のSeason 1と2で優勝、JCG Season 3でベスト4でした。
――国内大会でめっぽう強いという印象ですね。大会との相性などもあるのでしょうか。
civila: 海外大会にも出たいのですが、時間帯が合わないことが多いんですよ。それで国内大会に出たら勝っていた、という感じです。
koroneko: 日本からも参加しやすい時間帯の海外大会だと、EUサーバーの開催が多いんですよね。日本人がメインでやっているアメリカサーバーではなく。僕は両方のアカウントを持っているのですが、TGT以降、EUは課金不足でカードが足りていません(笑)。
――サーバー間でデータを引き継げないのも厄介ですね(笑)。cross7224さんのほうは?
cross7224: 20歳の学生です。ここ最近では8月30日に海外オンライン大会の「Archon Saturday 3K Monthly #1」で準優勝して賞金750ドル(約9万円)を獲得したのが大きいでしょうか。
――cross7224さんはTGT後に目覚しい活躍を見せていますね。8月27日にはシークレットパラディンでアメリカサーバー1位を獲得しました。あれはオリジナルのデッキですよね?
cross7224: ミッドレンジ(中盤に寄せた形)のタイプを作ったのは僕だけだと思います。新カードの「Mysterious Challenger」がひじょうに強力なので誰でも試すテーマだと思うのですが、プロの間はアグロ(速攻型)に組んでいる人が多かったですね
NA1 NOW!!! pic.twitter.com/1YvrTgUtAZ
— cross7224 (@cross7224) 2015, 8月 27
アメリカサーバー1位獲得時のツイート
civila: ほかの人が使っていないカードもけっこう入っていますよね。5マナのSpectral Knightとか。
koroneko: cross7224さんのデッキを見てすごいと思うのが、「常識に囚われていない」ところなんですよね。シークレットパラディンでもTruesilver Championなど「誰もが何も考えずに2枚入れるカード」が1枚になっていたりする。
それが実際強くて、僕のチームの人もcross7224さんのデッキを使ってEUサーバーの第3位になってました(笑)。
cross7224: よく「変なカード入ってるね」と言われます(笑)。
環境が変わると「今まで必須だったカード」も変わることがあるので、そういうのを抜いたりしています。Truesilver Championが1枚なのもそれですね。今の環境ではヘルス4よりもヘルス2のミニオンが多いので、だったら「打点2のCoghammer2枚のほうが強いんじゃないかな」と。
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■新アビリティ「インスパイア(Inspire)」と「ジャウスト(Joust)」
――それではTGTの感想についてお聞きします。まずは新アビリティ「インスパイア」の感触はいかがでしょうか?
- インスパイア:各クラス固有の「ヒーローパワー」を使うたびに起動する能力。
cross7224: ただ、実戦では……「予想通り弱かったな」という印象ですね(笑)。インスパイアを活用するには盤面を取らないといけないんですが、インスパイアのミニオンってステータスが低いんですよ。相手に強いミニオンが出てくると盤面を取られてしまうので、効果を2回起動できない場合が多いですね。
――強力なインスパイアの効果を持つミニオンはいかがですか? たとえばレジェンダリーを生み出すプリーストの「Confessor Paletress」とか。
cross7224: あれはもう9マナで「バトルクライ: レジェンダリーミニオンを1体召喚する」として扱っても強いレベルですね。
koroneko: 個人的にはすごく好きなカードですね。ただ、今の環境では出せるタイミングがない。
――「インスパイアで固めたテーマデッキを作る」というよりは「強いインスパイアのミニオンをふつうのデッキに数枚挿す」という形が多いのでしょうか。
cross7224: テーマデッキを組むのは今のところ難しいですね。パラディンの「Murloc Knight」もそうですが、「効果を1回使っただけでマナコスト分の働きをするカード」が多く使われている印象です。
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――Justicar Trueheartについてはいかがでしょう? 「ヒーローパワーを強化する」能力がコミュニティで大きな話題になりました。
civila: コントロール(長期戦型)ウォリアーで出せると相当強いですね。ただ、速いデッキが多い環境なので出したターンにヘルスがなくて押し切られることが多いです。遅い環境になったらチャンスがあるのかな、と思います。
使い道はウォリアー以外にもけっこう多いですね。たとえばプリーストとか。4点ヒールになるだけでなく、Auchenai Soulpriestとセットで使えば4点ダメージになります。
――もう1つの新アビリティ「ジャウスト」については?
- ジャウスト:お互いにデッキをめくり、一番上にあるミニオンを見せ合う。相手よりもこちらのミニオンのマナコストが大きかった場合、追加の効果を得る。
ただ、引き分けでも負けになるのが若干気になります(笑)。「4マナ対4マナで引き分けで負け」とか。おかげで軽いミニオンが多いはずの対アグロでもけっこう負けるんですよね(笑)。
cross7224: 相手がDruidの場合ぜんぜん勝てないですよね(笑)。
civila: ジャウストで外れだとと元のステータスは低いし……がっくりきますね(笑)。
――では、TGTの中で皆さんが気に入っているカードは何でしょう?
koroneko: 「Master Jouster」と「King's Elekk」です。
ジャウストは相手がアグロであるほど効果を得やすいのですが、中でもMaster Jousterの効果はディバインシールドとトーントでどちらもアグロに効果的です。「アグロに対し効果を得やすく、かつその効果がアグロに強い」のはとても理に適っています。
King's Elekkはドロー自体も強いのですが、2マナという軽さがジャウストの「相手のミニオンを見られる」という特性とよくマッチしていますね。たとえばメイジのようなデッキのバリエーションがあるクラスを相手にしたとき、King's ElekkでAcolyte of Painが見えたら「フリーズメイジだな」というのが2ターン目ですぐにわかるんですよ。これは高マナのジャウストにはないメリットです。
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civila: 6マナで「相手のヒーローパワーをコピーする」という能力のある「Sideshow Spelleater」ですね。ウォリアーでアーマーを積んだ後に入れ替えて……というのを考えていたのですが、今の環境だと遅すぎて残念ながら使い物になりませんでした(笑)。
ランダムのパラディンカードを持ってくるGrand Crusaderも面白いカードですね。ただ、6マナでドローして勝てる環境かというとそうではない。コントロール対決なら「デッキ外から1枚引ける」のは強いと思うんですけどね。
cross7224: ドルイドの2マナミニオン「Druid of the Saber」です。序盤に3/2 Stealthと2/1 Chargeを選べるやつですね。2コンボドルイドが求めていたカードだと僕は思っています。
Stealthで出せばMageの除去やWarriorの武器で倒されないので盤面を取りやすいですし、
後攻でも2/1で出してKnife Jugglerを処理できます。Savage Roarのコンボとも相性がいいので、「いつ引いても使える」というミニオンですね。
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■今回のレジェンダリーカードはデッキを選ぶ
――クラフトしたほうがいいレジェンダリーカードはありますか?
civila: エピックだとシークレットパラディンの「Myterious Challenger」は作っておいていいと思うんですが、レジェンダリーだと今回「Dr.Boom」みたいな「わかりやすく強いカード」がないんですよね。
発売前はウォリアーの「Varian Wrynn」が騒がれてましたけど、今の環境だと10マナ行く前にゲームが終わっちゃうんですよね。3マナ3/4の姉妹もいましたけど、これもいまいちかな、という気がします。
cross7224: ドラゴンデッキを組むなら「Chillmaw」、テンポメイジを使うなら「Rhonin」の2体かな、という気がしますね。
koroneko: ウォリアーとパラディンが好きなのであればJasticar Trueheartは作ってもいいかな、と思います。
civila: 自分は作ったことはないんですけど、可能性を感じるのは3マナ4/2でターン終了時に全体打点を与える「Dreadscale」ですね。これ1枚でパラディンのMuster for Battleを完璧に返せるので、ハンターをやるなら試してみてもいいと思います。
――どちらかというとデッキを選ぶレジェンダリーが多い、ということですね。
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※次ページ: TGTで登場した最強のデッキ「シークレットパラディン」。その強さと対策を訊く