
韓国・釜山で開催された大規模ローンチイベント「オーバーウォッチ フェスティバル」。同会場にて、『Overwatch(オーバーウォッチ)』でプリンシパルデザイナーを務めるBlizzard EntertainmentのScott Mercer氏への合同インタビューが実施されました。日本のアニメが大好きで、今期は『宇宙パトロール ルル子』を毎週欠かさず米国の動画サービスでチェックしているというMercer氏に、オープンβテストの反響や発売後の展開などを詳しく聞いてきました。
===== ===== =====
――今回、釜山で開催された「オーバーウォッチ フェスティバル」ですが、実際に来てみていかがだったでしょうか。
Scott Mercer氏(以下Mercer): 素晴らしいです!多くのファンが来て『オーバーウォッチ』を体験してくださったことや、私のファンだと言ってくれる人やサインも求める人もいたりして非常に嬉しかったです。
――Blizzard初のFPSかつマルチプレイに特化した対戦型のゲームとなっていますが、そのゲームデザインに至った理由は何でしょうか。
Mercer: 私自身FPSが大好きで、Blizzardに入る前からずっとプレイしていたんです。それで、Blizzardが作る素晴らしいキャラクターでFPSやマルチプレイをやってみたいと思い、このようなゲームデザインになりました。
――先日オープンβテストが実施されましたが、ユーザーの反応を受けて調整を行った要素はどのようなものがあったのでしょうか。
Mercer: 反応はとてもポジティブなものが多く、ありがたく受け止めています。フォーラムなどのいろいろなコミュニティでユーザーのフィードバックを聴く機会が多くありました。良いものも悪いものもコメントすべてに目を通して、自分たちが思いつかなかったような良いアイディアはそれを加えてみようとか、改善が必要なものは皆で考えて変えていこうといった具合に、とても大切なプロセスとしてやってきました。
――具体的にはどの部分の調整が行われたのでしょうか。
Mercer: たくさんありましたが、まず行ったのはオブザベーションツールで、他のプレイヤーのプレイをいろいろなロケーションで見れるようにしましたし、キャラクターバランスも調整を行っています。オープンβテストは数あるテストの内の1つですが、すべてのβテストの中でいろいろなものを直していっています。

――長いテストを経て数多くの調整を行ってきたと思いますが、一番苦労したヒーローは誰でしょうか。
Mercer: トールビョーンとバスティオンが一番大変でした。トッププレイヤーだけでなく、ビギナーをはじめとしたすべてのプレイヤーが使いやすいようにバランスを調整する必要がありましたから。すべてのヒーローをOP(オーバーパワード)にしたい気持ちもありましたし、バランスを調整するのはなかなか難しかったです。
――各キャラクターのバックストーリーや設定など非常に作りこまれていますが、ストーリーモードやキャンペーンモードを追加する予定はないのでしょうか。
Mercer: 6対6のマルチプレイ対戦ゲームですので、その中でストーリーを語るのはちょっと難しいんです。ですので、ストーリーは短編アニメやグラフィックノベルの方でやることにしました。将来的に機会があれば挑戦したいですね。今のところはわかりませんが考える余地はあります。
――今作はマップとゲームルールが紐づいているという珍しいデザインですが、開発当初から予定されていたのでしょうか。
Mercer: すべてのマップですべてのヒーローが力を発揮できるようにしなければいけませんでした。開発部署に「すべてはヒーローのために」というレベルデザインの哲学が書かれたポスターが貼ってあるのですが、ヒーローを1番に考えて、そこにマップやルールがサポート的に付随するという考え方で作っています。なぜなら、プレイヤー自身が「ヒーロー」だからです。
――つまりプレイヤーを第一に考えたゲームデザインということですか?
Mercer: FPSの良いところは自分の目線でゲームをプレイできる部分で、プレイヤーがゲームの世界に没入しやすくなっています。ですから、プレイヤーに焦点を当てることを非常に重要であると考えています。
――魅力的なキャラクターからゲームに興味を持つ人もいると思いますが、FPS初心者が使いやすいヒーローはいるのでしょうか。
Mercer: ソルジャー76がお勧めです。彼は典型的なFPSゲームのプレイスタイルになっていますし、自分でライフを回復することもできるからです。他には、マーシーもチームメイトを回復する役割のキャラクターですのでわかりやすいと思います。ヒーローラインナップ機能を見れば、各キャラクターの情報や使用難易度がわかるようになっていますのでぜひ活用してください。
――21人という非常に多いキャラクターが用意されていますが、それぞれの能力や特徴はどのようにして作り上げていったのでしょうか。
Mercer: ゲームシステムに合わせて作ったキャラクターもいますし、コンセプトアーティストがデザインしたビジュアルに合わせて能力を作ったキャラクターもいます。例えば、空を飛んでロケットランチャーを使うキャラクターを作ろうとしてファラはデザインされました。ゼニヤッタは、アーティストが考えたロボティック僧侶というコンセプトデザインからどのようなアビリティにするかを決めていきました。

――以前、ゲームディレクターのJeffrey Kaplan氏が短編アニメやグラフィックノベルに追加キャラのヒントが隠されていると述べていましたが、ゲームの発売からどのようなペースでそれらのキャラクターを追加する予定となっているのでしょうか。
Mercer: 今、プロトタイプを作っているところですが、ローンチから1年以内に何人かのヒーローを追加していく予定です。また、追加キャラやマップは無料で提供されます。
――日本にも短編アニメのファンが数多くいますが、長編を制作する予定はあるのでしょうか。
Mercer: 短編アニメのファンが多くいることは知っていますので、どこまでできるかわかりませんが考えてはいます。ただ、私たちはゲーム会社ですので実現は難しくもあります。良い反応が多く、アニメーター達はそういったフィードバックを喜んで受け止めています。
――短編アニメはBlizzardの中で制作されているのでしょうか。
Mercer: シネマティックを担当している部署がありますので、そこが作っています。シネマティックトレーラーを含め、すべてのアニメーションを作っています。
――各国版のローカライズなど大変な作業があったと思いますが、世界同時リリースにしたのはどういった理由があるのでしょうか。
Mercer: そのほうがクールじゃないですか(笑)。誰かを待たせる必要なんてありませんから。開発に遅れがでたりして、PC版とコンソール版を同時にリリースするのも大変だったのですが、それを可能にしてくれたスタッフにもとても感謝しています。世界中にあるすべてのBlizzardオフィスの人たちの努力に感謝していますし、釜山のようなイベントが各国で行われていることも喜ばしく思っています。
――PC版のe-Sports大会をBlizzardがサポートしていますが、今後、コンソール版の大会もサポートを行うのでしょうか。
Mercer: コンソール版の大会については考えていますが、現在のところは未定です。
――PC版とコンソール版の違いというのは何かあるのでしょうか。
Mercer: 基本的にはありませんが、キーボード&マウスとコントローラーという操作の違いがあるため、コンソール版はエイムアシスト機能をつけています。それと、コンソール版はキーボードによるテキストチャットには対応していません。
――オープンβで970万人が参加したというデータが発表されていますが、これは今までのゲームタイトルの中でもトップクラスです。ここまでの多くの人にプレイしてもらえた要因というのは何だったと思われますか?
Mercer: 楽しいゲームだったからでしょうか。オープンβをやる前にクローズドβをやっていたので、それで『オーバーウォッチ』を知った人が増えたというのもあると思います。また、オープンβは無料だったことも要因の1つかもしれません。
――Mercer氏のお気に入りのキャラクターは誰でしょうか。
Mercer: ロードホックとウィンストン、ゼニヤッタがお気に入りですね。特にゼニヤッタは私がプログラムを書いているので思い入れがあります。
――本日はありがとうございました。

取材協力: Blizzard Entertainment