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現地時間6月13日、AMDがメインスポンサーをつとめPC Gamerが主催する「PC Gaming Show」が開催されました。本イベントはE3に先立つPCゲーム専門イベントです。今年は2回目の開催であり、ロサンゼルスの老舗エースホテルのシアターで開催されました。
一般参加も可能な本イベントは開場前の朝10時からゲーマーが列を作っていました。プレスのチェックインを済ませた後、中に入るとシアターのロビーにはAMD製のPCが配置され、いくつかのタイトルがプレイアブルな形で展示されていました。何より古風なホテルの装飾の中に最新のPCが並ぶというロケーションは非常にクール。他のカンファレンスやイベントとは異なった雰囲気を演出していました。
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まずはプレイアブルデモの中で、他では取り上げられていないインディータイトルを紹介します。Pillow Castle Gamesのデビュー作となる『Making the Museum of Simulation Technology』はセンス・オブ・ワンダーやIGF学生部門でアワードを獲得している一人称視点パズルゲームです。
コンセプトは明確で、オブジェクトの遠近感を利用してパズルを解いていくものです。小さなオブジェクトでも至近距離で掴むと大きいまま利用でき、逆に大きなオブジェクトでも遠くから掴むと小さいものとして利用できます。開発者によると『Antichamber』等の一人称視点パズルに影響を受けたとのこと。このジャンルにはインディーの名作が多いため本作も期待できる作品です。
次はアクションRPGの『Mages of Mystralia』です。開発者のBOREALYSは『Sang-Froid: Tales of Werewolves』などに携わったメンバーによるベテランのチーム。本作がデビュー作になります。本作は見下ろし型のアクションRPGで、ゼルダの伝説のようなパズル要素も取り入れています。
一番の特徴はスキルのカスタマイズシステム。ダイアモンド型の盤上にスキルのトークンを並べることで、なんと100万以上の組み合わせが可能だそうです。遠隔攻撃のオーブにスプレッド、ホーミングといったスキルを掛け合わせると複数のホーミング弾が可能となるわけです。
◆前代未聞の新種目「Steam Speedrun」開催!
ステージイベントのキックオフとして、まずは先に告知されていた珍イベント(?)Steam Speedrunが開催されました。本企画は3分間でSteam上のゲームをいくつ購入できるかを試すもの。Razerがスポンサーとなり、購入したゲーマーは大会側が負担することになります。幸運にもこの大会に選抜されたのはCristinaさん。PCとPS4でゲームをして、インディーゲームやMOBA系のゲームをプレイするゲーマー女子です。
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マウスとキーボード(DPIのチェックも忘れずに)の調整をして、カウントダウンと共に試合開始!いきなり検索欄にCullingと打ち込むCristinaさん。『The Culling』がそれほどまでに欲しかったようです。その後もいくつかのタイトルを直接検索からピックアップ。次はUp coming game(近日登場)からプリオーダーの作品を手当たり次第にカートに突っ込んいきます。値段のことを考えると非常に賢い戦略。あと半年はプレイするゲームに困ることないでしょう。シーズンパスなども容赦なくカートに突っ込みます。開場からは『Doom』、『Hatoful Boyfriend』といったリクエストも飛び交いました。
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3分はあっという間にたちました。カートには27本のタイトル、合計金額は1152ドルを達成。Cristinaさんは思う存分にゲームを購入してとても幸福だと語っていましたが、さらに試合に使用したRazer製周辺機器もプレゼント。まさに大盤振る舞いな大会でした。
◆盛りだくさんのステージハイライト
さてステージが温まったところで本編が開始しました。本イベントでは初公開のトレーラーやゲームフッテージの他、デベロッパーを招いた短いショートセッションが数多く行われました。その数は予想以上に盛りだくさんであったため、ここではいくつかをピックアップしたハイライトをお届けしたいと思います。なお本イベントで初公開となった情報のいくつかは、関連記事で掲載しているので、そちらをご覧になってください。
まずは期待の大型新作から。『Farming Simulator』などで知られるフランスのパブリッシャーFocus Home Interactiveからは『Vampyr』と『The Surge』という異なるテイストのアクションRPGが発表されました。
Paradox Interactiveからは『Tyranny』のトレーラーが公開。戦略シミュレーションでおなじみのParadoxですが、本作はストーリーを重視したSRPGのような作品となっているようです。
『observer_』はサイバーパンクの世界観のホラーゲーム。ホラーゲームとして高い評価を得た『Layers of Fear』のデベロッパーBloober Team SAが開発するタイトルです。ゲームフッテージでは、ヘッドマウントディスプレイ(もしくはヘッドギア)をつけた女性、有線接続での脳への侵入といった「攻殻機動隊」に影響を受けたと思しきギミックが登場しました。
スクウェア・エニックスが展開するインディーブランドのコレクティブからはBulkhead Interactiveの『Turning test』が発表されました。本作は一人称視点のパズルゲーム。銃のような道具は存在しますが、敵は登場せず、様々なギミックのあるチェンバーを乗り越えていく形式で、『Portal』の影響を強く感じます。
一人称視点で中世騎士道の戦いを描いた『Chivalry: Medieval Warfare』で知られるTorn Banner Studiosからはオリエンタルな雰囲気のアリーナ型FPS『Mirage: Arcane Warfare』が発表されました。中東的な雰囲気でありながら、派手な色の環境とエフェクトが特徴的です。
クリフ・Bが率いる新スタジオBoss Key Productionsからは期待の新作『LawBreakers』のトレーラーが公開。司会者からの『Overwatch』や『Battleborn』といった昨今のFPSとどう違うかという質問に対して、「モータルコンバットのようなゴア表現だ」といつもの調子で答えていました。また重力を無視した空を飛ぶようなアクションが魅力です。
その他にもインディータイトルの注目作もありました。『Don't Starve』のKlei Entertainmentからは宇宙を舞台にしたシミュレーションゲーム『Oxygen Not Included』が発表。
また巨大な警察官になって街を管理するシュールなゲーム『Giant Cop』は、インディーショーケースのThe Mixの2016年ベストに選ばれています。70年代の音楽のもと、街を破壊したり、人を捕まえたり荒唐無稽な内容になっています。
『Overland』はクォータービューのサバイバルシミュレーションゲーム。ポストアポカリプスをテーマにしていますが、フラットなビジュアルとロードムービーのような雰囲気が特徴です。
◆Warren Spectorが語るPCゲーミングの黄金時代
ステージイベントの最後には、『Deus Ex』の開発者として知られるWarren Spectorが登壇しました。一貫してPCゲーム開発者として生きてきたWarren Spectorですが、「PCゲームは死んだ」とさけばれた時期もありました。しかしながら、現在のPCゲームは黄金時代を迎えています。
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この変化の理由は、Twitchのような動画メディア、Unity、Unreal Engineといったゲームエンジン、SteamやGOGといったデジタルディストリビューションなど様々な点が挙げられます。開発者にとって一番大きいのは、これらの変化によってPCゲームが「唯一にして真の民主的プラットフォーム」であることです。結果、『Braid』、『Kentucky Route Zero』、『Undertale』などの数えきれないような素晴らしいインディーゲームが誕生しました。またそのカスタマイズ性やグラフィックス性能の強化によって、多くのAAAタイトルはコンソールと同時にPC向けにもタイトルを供給しています。さらに今後はVRやARといった新たなテクノロジーが最初に試されるのは常にPCにあるのです。開発者とゲーマーが直接的にコミュニケーションができるPCというエコシステムがある限り、今後もPCゲーミングは発展し続けていくでしょう。