『アンチャーテッド』シナリオライターの“物語の書き方”―PAX West講演レポ | Game*Spark - 国内・海外ゲーム情報サイト

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『アンチャーテッド』シナリオライターの“物語の書き方”―PAX West講演レポ

本記事では「PAX West 2016」で開かれたキーノートの様子をお届け。『アンチャーテッド』などで知られるシナリオライターAmy Hennig氏らの熱きトークセッションが交わされていました。

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9月上旬に開催された米シアトルの大規模ゲームイベント「PAX West」ですが、今年も恒例イベントとして開発者のキーノートが開かれました。今回の主役は『アンチャーテッド』シリーズの総監督とシナリオ制作を担当したAmy Hennig氏。海外メディア「Penny Arcade」のJerry Holkins氏とカジュアルなトークセッションという形で、シナリオ制作への意識、プレイヤーとのコミュニケーション、移籍したVisceral Gamesで開発真っ最中の新作「スターウォーズ」ゲームなどについて語りました。

■シナリオ制作のコツは「流れのままに書く」


Henning氏はまず最初に、「シナリオを書くときの意識」について語りました。自分が内向的であるゆえ、人の観察と共感が得意であり、そこから自分の経験したことに基づいてシナリオを作るのだとか。そして彼女のスタイルは「考え続けて書く」というよりも、「流れのままにシナリオを書く」ようなもので、「(制作中に)足掻いている自分が、突然物語を書き始める瞬間があるのです。どこからそんな勢いが湧くのかは分からないんですよね。まさに“勝手に出ちゃう”感覚です」とも説明しました。

■「開発者」はプレイヤーの「協力者」

次の話題はHennig氏がゲームを通して作る「世界観」。「Penny Arcade」のHolkins氏は、Hennig氏の旧作『レガシー・オブ・ケイン』シリーズの世界が、「プレイヤーとのコミュニケーション」そのもののように感じたと語ります。その世界観は、まるで「プレイヤーはどこで何をしているのかが分かっている」かのように見えたのだとか。Hennig氏はプレイヤーを「開発者が作り出したレール」を無理やり進ませることを避け、「開発者」というよりも「協力者」として意識していると述べました。いわゆる小説作品のように「筆者から読者への一方的なもの」ではなく、ちょっとした解説付きのポエム的な作品のような意識を持っているようです。


「ゲームデザイナーとして最も大事なものの一つは、プレイヤーへの共感を意識すること」とHennig氏は語り続けます。「シナリオを描きながら、この状況でプレイヤーは何を考えて、何を望んで、何がしたいのかを考えるべきです」と述べながら、「プレイテストのときは、テストプレイヤーの反応や目を引くものに更に注目しているともコメント。声優たちも協力者となって参加し、テスターのゲームプレイがセリフの台本に加わることもあるのだそうです。このスタイルは『アンチャーテッド』の主人公ネイサン・ドレイクにも色濃く反映されていて、彼が「プレイヤーが言いそうな文句」や「頭で考えていること」を語りかけるのはこの取り組みが基になっているとのことです。


しかしながら、『マインクラフト』や『No Man's Sky』のように「プレイヤーが自分の物語を作るゲーム」が人気を集めているのもまた事実。Holkins氏はこれらの例を挙げながら「シナリオライターはいずれ廃れてしまうのでしょうか」と問いました。そんな質問を受けたHennig氏は「シナリオ作者の“死”」について、「断じてそんなことはない」と自信を持って返答。「イベントの連鎖」のみでは物語は成り立たず、“だが”や“しかし”を含むシナリオもまた必要であり、それがなければ「まるで友達の夢の話を聞いているようなもの」であると考えているのだとか。加えて、「“ストーリーや作者の意志はいらない”、そのような考え方は少し危険でさえある」とも主張しました。

■「スターウォーズ」らしいストーリーとは


Amy Hennig氏はNaughty Dogを脱退後、Visceral Gamesで「スターウォーズ」関連タイトルのクリエイティブディレクターに選ばれました。その活動内容は決して明らかなものではないものの、Hennig氏は正真正銘の「スターウォーズ」的ストーリーを作ろうと意気込んでいます。作品に現れる「スターウォーズ」らしさとは、映画に出てくるロボットなどを出演させることにあるわけではなく、「見たこともない場所」や「未知のテクノロジー」を披露することにあると考えているそうです。そのために、彼女はLucasfilm本部の人間と共に制作を行ってるようです。

映画本編や多くの「スターウォーズ」関連ゲームのほとんどは、主人公視点で語られています。敵の本拠地で何が起こっているのか、そのような情景をどうゲームで表わしたらいいのか、それも重要な課題であるとHennig氏は語りました。続けて、「主人公の仲間は、いわゆるサイドキックよりも強大な存在でなくてはいけません。しかしハン・ソロやレイア姫ほどの存在は、どんな形でゲームに登場したほうがいいでしょうか?」と語りながら、「プレイヤーキャラクターは複数じゃないといけないか」「銀河帝国と反乱同盟軍の戦力の差をどう描写すればいいか」ということを考えなければ、「スターウォーズ」としては成り立たないと説明しました。

■Q&Aセッション

終盤のQ&Aでは「一番楽しくなかったプロジェクトはどんなものでしたか?」という質問が飛び出ましたが、Hennig氏は「楽しくなかったものは無い」と答えました。彼女に言わせてみれば、厳しい条件の中でも障害を乗り越えることで、いろいろなものが引き出されるからなのだとか。過去には「マイケル・ジョーダンが主人公のバスケットゲーム」というタイトルも任された経験があり、そのコンセプトは滅茶苦茶なものだったにもかかわらず、彼女にとって良い勉強になったと語っていました。


そして質問の中には、『アンチャーテッド』の演出を思わせる「ゲームメカニック」に関連するものも。「ドラマティックな展開が広がるシーンがプレイアブルだった場合、プレイヤーの操作がついていけずキャラクターが死んでしまったら、台無しになってしまうのではないか」という質問に、Hennig氏は「プレイテストを重ねた上で、難易度を可能な限り下げたほうが良い」と返答。シナリオ全体のムードは「危機一髪」という風に仕立てあげ、ゲームプレイそのものはライトに近付けるという手法を意識しているとのことですが、近頃はそのような演出が多用され過ぎているとも語りました。


最後の質問の焦点は、Naughty Dogの『ジャック×ダクスター』シリーズ。Hennig氏は、シリーズ3作目のみにしか関わっていなかったとのことですが、「主人公が無口であること」について語りました。シリーズ作品で主人公が無口だった理由について、Hennig氏は「彼をプレイヤーの器にするため」だったのではと考え、ダクスターはそのコメンタリー役であると見ています。とは言え、登場キャラクターが「黙りっぱなしの主人公」に向かって話しているというのはどう見ても不自然で、演出が難しいと感じているそうです。しかしながら最近の主人公キャラクターの多くは自発的に会話に参加しつつ「プレイヤーとのコネクション」を生み出しているので、いわゆる「無口キャラ」は珍しくなってきていると語りました。

このQ&Aセッションが終わり、Amy Hennig氏によるキーノートは閉幕。『アンチャーテッド』シリーズを手がけ、「スターウォーズ」をテーマにした次回作に取り組んでいる彼女の活動は今後も注目すべきものになることでしょう。開発者の熱き激論が交わされるであろう次回のキーノートにも期待したいところです。
《Cameron Gilbert》
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  • スパくんのお友達 2016-09-13 3:58:36
    >本当にこれだけだと思っているのなら
    別に作るのが簡単だなんて話はしてないよ。言うまでもなく難しいに決まってる。
    一生懸命限られたリソースを割いて、射幸心を煽るための企画や開発をしてるんだろう
    シナリオもキャラもゲームも、全部ガチャを回してもらうため
    それがソシャゲなんだって話
    1 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-09-13 3:10:40
    日本人ゲーマーの35%「自分の方が面白いゲームを作れる」と思っているって記事を最近読んだな
    >ガチャで射幸心を煽るシステム。脳死プレイで成長を実感できるようなゲーム体験。プレイヤーの機嫌を損ねないようにゴマすっておけばなおよし。
    本当にこれだけだと思っているのなら、そのノウハウでもって自分も参入してみれば良い
    それで成功できなければ自分が見えていないだけで他にも要素があるということ。
    そこで「絵師さえよければ売れてた」程度の弁解しかできないのであれば
    底が浅かったのは和ゲーでなく自分だったってこった
    1 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-09-13 1:03:12
    スマホゲー、というかソシャゲに関しては簡単に一括りにできるよ
    ガチャで射幸心を煽るシステム。脳死プレイで成長を実感できるようなゲーム体験。プレイヤーの機嫌を損ねないようにゴマすっておけばなおよし。
    例外はあるけど一般的なソシャゲはこれでしょ

    だからこういうゲームが台頭していくと、シナリオに注視する人間が受け手も作り手も含めてどんどん減っていくんだよなぁ
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    返信
  • スパくんのお友達 2016-09-12 22:55:06
    そもそも洋ゲーが好きな人もいれば、和ゲーやスマホゲーが好きな人もいる。それなのに、和ゲーやスマホゲーを馬鹿にしてるやつってなんなの?自分が気に入らないゲームはクソゲーだと思ってそう。そもそもゲームはもの凄い数あって、ほとんどはプレイしてないのだから、洋ゲー、和ゲー、スマホゲーとかいう括り自体がナンセンス。
    2 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-09-12 15:10:11
    >>41
    何も中身のある事書いてないあなたよりはずっと良いと思うんだよね。
    5 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-09-12 12:38:59
    ジャンルや国とか雑なグループ分けして一括りに語ってる時点で参考にするに値しない意見が多いな。
    どうせ長文書くなら具体的な作品の部分あげて語れよ。
    5 Good
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  • スパくんのお友達 2016-09-12 10:35:11
    >>37
    十代向けの作品はそういうのが多いね
    十代向けの作品しかみてないのかな?
    7 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-09-12 10:31:10
    アンチャ4のエピローグは本当に素晴らしかった
    6 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-09-12 9:52:12
    年齢が
    少年漫画でモブとかザコキャラみたいな中高年層になったから
    まったく感情移入できない
    1 Good
    返信
  • スパくんのお友達 2016-09-12 9:47:18
    日本の漫画やアニメや映画に出てくる登場人物の特徴まとめ置いとくね
    ・主人公が10〜20前半
    ・身体能力無視して、なぜか強い
    ・喋り方やポーズについて、いちいちカッコつけたがる
    ・無愛想で無口でカッコつけたがりのキャラか、テキトーな性格がウリだけど、人に言えない過去を持ってるキャラが多い
    ・前髪が必要以上に長い
    ・周囲にやたら女キャラがいる
    ・女キャラは総じて可愛い
    ・全ての女キャラが主人公に恋心を抱くか、ドキっとするシーンが用意されている
    ・悪キャラは不細工やおっさんが多い
    ・イケメンor美人の悪キャラだけ、そうせざる負えない理由が用意されている
    3 Good
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