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昔ながらのゲーム実況にはじまり、ユーザーによるゲームプレイ配信や、e-Sports系イベントのストリーミングなど、“ゲーム配信カルチャー”は日々盛んになっています。「自分も配信をやってみたい!」と考えるゲーマーも少なくないはずですが、配信をするために、どんな機材や環境を用意すればいいのでしょうか。
この度、ゲーミングPCブランド「G-GEAR」を手がける株式会社Project White(以下、TSUKUMO)が、新たにスポンサー契約したTwitchストリーマーOtofu氏とタッグを組み、ゲーム配信に適したPC本体を企画・プロデュースしました。Game*Spark編集部は、同社で長年ゲームデバイスの販売に携わる担当者とOtofu氏をダブル取材。
これからゲーム配信をはじめたい、あるいは配信用にPCを買い替えたい方のために、2017年4月20日よりツクモの店頭で販売される「G-GEAR 実況・配信向けPC」の詳細や、配信カルチャーのあれこれを語ってもらいました。
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■なぜ、G-GEARとOtofuが“実況・配信向けPC“をプロデュースすることになったのか
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ゲームストリーマーのOtofu氏
――本日はよろしくお願いします。まずは、皆さんの自己紹介をお願いします。
西下:TSUKUMOの西下忠道と申します。入社してから19年になります。現在はツクモパソコン本店で、フロア長としてVRコーナーやゲーミングデバイスをメインに担当しています。VRコーナーではeX.computerやG-GEARも取り扱っているので、PC本体についても広く取り扱っています。
森:TSUKUMOでプライベートブランドPCのプロダクトマネージャーとして企画・開発を担当している森秀範です。イード様に調査いただきました顧客満足度調査において5年連続 最優秀賞をいただきました「G-GEAR」や、実況・配信向けPCのベースとなった「G-GEAR mini シリーズ」の商品化も担当しております。
Otofu:Twitchの公式パートナーとして配信活動をさせていただいているOtofuです。Razerともスポンサー契約を結ばせていただいており、『League of Legends』を中心に、色々なゲームタイトルをプレイしています。
――今回、G-GEARがOtofuさんをスポンサーして、一緒にゲーム配信用PCをプロデュースすることになった経緯を教えてください。
西下:Otofuさんとは、少し前にイベントで知り合う機会があり、それ以来、『League of Legends』などのゲームを一緒にプレイすることがあります。ある時Otofuさんから、『LoL』よりも要求スペックの高いPCゲームを配信するのに、「何か良いPCはないか」と相談を受けたのがきっかけで、配信用PCを組むことになったのです。
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Project Whiteの西下忠道氏
森:最初は、Otofuさんから新しいゲームPC購入の相談を西下までいただきました。当社でもOtofuさんのような人気ストリーマーと一緒に商品企画したいという考えがあって、すぐに社内で調整してスポンサー契約を結ぶことになりました。その流れで、Otofuさんのために組んだゲーム配信向けのPCを、広く一般のお客様にも販売していこうというわけです。
――なるほど。Otofuさんは、その配信向けPCをもう使っているのでしょうか。
Otofu:はい、必要システム要件が高めの『theHunter: Call of the Wild』を配信してみたのですが、特にラグもなく、視聴者の方も問題なかったみたいで好評でした。
――Otofuさんが『LoL』以外最近プレイしているゲームや、注目しているゲームはありますか?
Otofu:名作『Ultima Online』を連想させる『Rogalia』というMMOをプレイしました。戦闘でコンボができたり、ハウジングが細かかったり面白い要素があるのですが、操作性が難しくて大変です。Blizzardの『Overwatch』や『Diablo III』もやっていましたし、今はSteam版の『NieR: Automata』をプレイしています。
西下:私もOtofuさんとたまに『LoL』をプレイするのですが、実力が違いすぎて……。(※編注:Otofu氏は現時点での最高が、Season 6のJPサーバーでChallengerランク)
Otofu:勝ち負けをあまり気にしないARAMを一緒にやっていますね(笑)。
■ゲーム配信用のPC選びで、最も重要なポイントとは
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――Otofuさんは、普段ファンや視聴者から、「配信をしてみたい」といった声を聞きますか?
Otofu:配信をやってみたい、という声もありますが、それよりも配信設定を聞かれることが多いですね。私自身も最初は色々わからなくて、自分で調べたり、微調整したりして、5000kbpsぐらいの高い設定だと見る方が大変だというのは知っておかないと、などと思っていました。
――ツクモの店頭にこられるお客さんからも、そういった声はありますか?
西下:はい、ありますね。ゲーム配信は、まず快適に動作することが大前提で、そこに余裕をもたせたスペックが必要になります。お客様の中には60fpsで配信したいという方もいて、その場合はPCが2台あったほうが良いとお伝えすると、驚かれることもあります。配信自体がスペックを要求しないと誤解されることもあるので、まずは配信の大変さを知ってもらうことから始めています。実際やってみないとPCにかかる負荷もわかりませんから。
――ずばり、パーツ選びのポイントは?
西下:配信においては、CPUとグラフィックカードはやはり重要で、特にコストもかかるパーツですが、この2つの性能が高ければ、ゲームが快適に動くのは間違いないです。同時に、冷却面も気にしなければならないなと思います。また、自分がプレイするゲームの推奨スペックを満たしているだけだと、配信は現実的ではないので、それプラスアルファの性能を用意していただくことが必要になると思います。
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――今回OtofuさんとプロデュースしたPCでは、どんなCPUとグラフィックカードを搭載していますか?
西下:CPUはCore i7-7700、グラフィックカードはNVIDIA GeForce GTX 1080が搭載されています。実際には、3種類のモデルを用意してあります。誰でもフラッグシップモデルを購入できるわけではないですし、配信するゲームの種類にもよりますので、松竹梅という形で用意しています。もちろんOtofuさんが使われているのは一番良いタイプです。
――例えば、『ハースストーン』や『シャドウバース』といったカードゲームしか配信しないという方の場合はどうでしょうか?
西下:その場合は、オンボードグラフィックでもおそらく問題ないと思います。『ハースストーン』や『シャドウバース』は画面に動きが少ないので、比較的低スペックでも配信できるはずです。
――今は、ノートPCのゲーミングモデルもたくさん存在しますが、配信向けとしてはいかがですか?
西下:ノートPCでも配信は可能ですが、ゲーム配信者の多くは、視聴者のコメントやチャットの確認用にサブでモニタを用意して、2画面でやっている方が多いので、やはりデスクトップPCが一般的ですね。
――Otofuさんも2画面ですか?
Otofu:はい。私も2画面で、片方はゲーム画面、もう片方はチャットと配信画面のチェック用、あとはTwitterのタイムラインをチェックしています。配信時間が長いので、タイムラインの話題を出しています。
――では、ノートPCで2画面は現実的ですか?
西下:DisplayPortもついているのでできます。例えば、ゲーム画面を外部モニタにして、サブモニタをノートPCの画面にすると言う形でプレイするというのもできます。ゲーミングノートであれば十分可能です。
――デスクトップPCと比べて、コスト的にはいかがでしょうか?
西下:ノートPCは、デスクトップよりは若干高くなるかもしれません。液晶やキーボードなどがついているのもあるので。
森:場所も取らずに持ち運びができ、技術革新により性能もあがってきているのでノートPCで実況や配信をされる方が増えてきていますが、同等価格で比べるとどうしてもパフォーマンスが一回り下がってしまうため購入時に必要要件を満たしているか十分に見極める必要があると思います。
ノートPCについても配信に適しているとOtofuさんにご評価いただける商品が用意できましたら、今回の実況・配信PCのラインナップに追加したいと思っています。
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Project Whiteの森秀範氏
――Otofuさんがプレイしている『theHunter: Call of the Wild』や、最近では『The Division』や『Battlefield 1』など、3Dグラフィックの最新ゲームは高スペックが要求されますが、高画質でそのようなゲームを配信したい方は、どんなところに気をつけるべきでしょうか?
西下:ゲームの設定と、配信の設定のバランスを取ることが重要です。視聴者が綺麗に見える設定を見定める必要があります。ゲームのグラフィックが最高設定でも、ビットレートが低ければ画面がモザイク状になりますし、ビットレートを上げすぎてもゲーム画質が低すぎれば綺麗には見えません。その試行錯誤を行う必要がありますね。いずれにせよ、グラフィックや配信のクオリティーを突き詰めると、究極はPCが2台必要になってしまうのですが、1PCで行うよりはコストが安くなる場合があります。例えば、エンコード用PCはそこまでスペックが必要ないので、ゲームマシンによりSLIなどでコストをかけることもできます。
――実際にPC2台で運用される方は多いですか?
西下:私の知人にもいますね。2PCで配信している人もいますし、2PCで録画したゲームプレイ動画を制作してYouTubeにアップロードする人もいます。ビットレートの限界もあるので、配信をする方はあまりしていませんが、YouTubeなどの投稿タイプではチューニングまで細かくできるのでメリットはあります。
――ゲーム配信するにあたり、ネットワーク環境で気を付ける点はありますか?
西下:今時のPCであれば、気を付けるようなことはそこまでないと思いますが、できればネット回線自体は100Mbps以上の回線が望ましいです。無線でも最新の802.11acであれば速度的にはほぼ1Gbpsで問題ないので、遮蔽物などがなければ特に問題が起きることはないと思いますが、やはり有線がベターです。
■小型でもパフォーマンスに妥協のないG-GEAR mini。ストレスのない配信を楽しむために
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――今回Otofuさんとプロデュースしたゲーム配信用PCは、G-GEARのラインナップである「G-GEAR mini」がベースになっています。改めて「G-GEAR mini」の概要を教えてください。
西下:G-GEAR miniは、Mini-ITX企画のマザーボードを採用しており、名前の通りデスクトップPCよりもサイズがかなり小さいです。CPUやグラフィックカードも最新のフラッグシップモデルを搭載できるようになっており、デスクトップモデルと同等の性能を出すことができます。冷却面も背面以外メッシュになっており、あらゆる方向から空気を取り入れて冷やすことができます。
――G-GEAR miniはコンパクトな本体ということで、値段的にはやはりデスクトップよりも高くなりますか?
西下:値段はデスクトップとほとんど変わらず、コスト差も10%以下に留まっています。性能的に大きな差はなく、HDDを大量に積んだりしたいといった大幅な拡張性を必要とする方でなければ問題ないと思います。
森:自宅で使っているG-GEAR miniも、SSD2台+HDD1台の構成になっていますが、実際にゲーム配信やプレイ映像を録画しても足りています。価格についてはパフォーマンスの鍵を握るCPU、グラフィック、記録ドライブ以外の要素、例えば拡張ベイや拡張スロットといった部分を思い切って削ることで小型化と低コストを実現しています。
――G-GEAR miniの売れ行きはどうですか?
西下:当店では、G-GEAR デスクトップモデルと比べると売れ行きは半々ぐらいまで来ています。筐体をできるだけ小さいものにして、その代わりに大きいサイズのモニタを選ぶ方が多いようです。
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――ところでOtofuさんは、PCパーツの交換はしますか?
Otofu:昔は電源が壊れて交換したこともありますが、最近のPCはあまり壊れないので、グラフィックカードぐらいしか交換していません。
――ゲーム配信中に、何か困ったことやトラブルなどは。
Otofu:私は、配信する時に出来る限りトラブルがないようにしています。あったとしても、海外サーバーのトラブルだったり、ラグがあって止まってしまったり、というくらいです。ちなみに、カメラオフで配信している時はカメラに紙をかけて、間違ってすっぴんが映らないようにしています(笑)。
――G-GEAR miniにしてから変わったことはありますか?
Otofu:SSDになって、とにかく再起動が早くなったのが大きいです。前のPCはSSDではなかったので、最初はそのスピードに驚きましたね。
――Otofuさんがゲーム配信を続けている理由は何ですか? どんなところが魅力で、どんな瞬間が楽しいですか?
Otofu:長年続けてきたゲームをお仕事として認めてもらえたというのが大きいです。好きなことを表現して、外側に発信した時に、肯定も否定もしてくれる大事な場所だと思っています。なにより、応援してくださる方に応えたいという気持ちもあります。どんな瞬間が楽しいかというと、私が新しいゲームやキャラクターをプレイしている時に、「買っちゃったよ」と視聴者の方から言われたりして、“良くも悪くも影響を及ぼせる”ことです。私にとっては、世界が広がる1つの場所、ですね。
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――それでは最後に西下さんと森さん、G-GEARブランドとして、これからゲーム配信を始めたい方にメッセージをお願いします。
西下:最初は設定などでとっつきにくいところがあったりしますが、調べれば最近はすぐに情報が見つかり、ハードルは下がったと思います。見よう見まねでやってみてもらって、スペックが足りなければ是非うちのスタッフにご相談いただければ、用途にあったものはご紹介できると思うので、まずは一度試してもらえればと思います。ツクモの店頭スタッフも配信をしている人間も多いので、知識もあってアドバイスができるはずです。
森:私も自分自身でMMORPGのゲーム配信をやってみて、改めて面白いなと感じました。自分が楽しんでいるゲームを他の人に広めて一緒に盛り上がれるのは素晴らしいことだと思います。最近、e-Sportsが注目され始めていますが、ゲームの実況・配信市場がさらに盛り上がり、配信者と視聴者が一つになってインタラクティブに楽しめるような環境作りに様々な協力をさせていただきたいと思っています。
- ◆G-GEAR 実況・配信向けPC詳細スペック
◎G-GEAR mini GI7J-C91T/LB1(松構成) 税別159,800円
インテル Core i7-7700K プロセッサー (4C4T, 4.2-4.5GHz)
16GB DDR4 メモリ
インテル H270 Expressマザーボード
NVIDIA GeForce GTX1070 (ビデオメモリ8GB)
480GB SSD (SATAIII接続 / 6Gbps)
Wi-Fi無線LAN(802.11ac対応)
◎G-GEAR mini GI7J-B91T/LB1(竹構成) 税別119,800円
インテル Core i7-7700プロセッサー (4C, 3.6-4.2GHz)
8GB DDR4 メモリ
インテル H110 Express マザーボード
NVIDIA GeForce GTX1060 (ビデオメモリ6GB)
240GB SSD (SATAIII接続 / 6Gbps)
◎G-GEAR mini GI7J-A91T/LB1(梅構成) 税別89,800円
インテルCore i5-7500 プロセッサー (4C, 3.4-3.8GHz)
8GB DDR4 メモリ
インテルH110 Express マザーボード
NVIDIA GeForce GTX1050Ti (ビデオメモリ4GB)
1TB HDD (SATAIII接続 / 6Gbps)
◎共通仕様
G-GEAR ミニケース筐体 (8M05)
500W 80Plus Bronze電源ユニット
Windows 10 Home (64ビット版)
※液晶モニタ、キーボード、マウスは別売