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4月26日に米ロサンゼルスで行われた『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』の発表会。スクウェア・エニックス、Eidos-Montréal、Crystal Dynamicsによってリブートされる、ララ・クロフトの起源に迫る物語の最終章が遂に幕を上げます。発表会では、ゲームの新しいシステムやテーマが解説され、早速ゲームを試遊することもできました。(発表会のレポートはこちら)
編集部では発表会後、ゲームプレイ・デザイナーのHeath Smith氏(以下、Smith氏)と ナラティブディレクターのJason Dozois氏(以下、Dozois氏)にインタビューを敢行。本作の設定、作品のテーマ、新しいゲームプレイ、そして「シャドウ」という言葉に含まれた様々な意味など、幅広く語ってもらいました。
――ゲームの舞台についてお話いただけますか。古代マヤ文明はグアテマラなどに存在しましたが、試遊版の舞台はメキシコでしたね。
Dozois氏:今回の試遊版で舞台となったのは、メキシコはリビエラ・マヤにある島、コスメルです。現代ではマリンスポーツなどが盛んなリゾート地で、女神イシュ・シェル祀られていたりもします。物語は現実に基づいたフィクションですが、少し調べると「あ、本当だ!」と言わせるようなロケーションを選ぶことにしています。
なお、ゲームのほとんどの舞台はペルーです。マヤ文明はグアテマラまで広がっていましたが、ペルーまでたどり着いてはいなかったと考えられています。しかし、我々が描く物語はフィクションであり、古代マヤ人がペルーまで行って“あるもの”を隠したという設定にしています。試遊版の冒頭で、ララが謎を解くシーンにもそうした設定をちりばめています。
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――ジョナについても詳しく教えて下さい。
Dozois氏:ジョナは、ララの友人として、何年も共に過ごし、シリーズ内で成長を続けてきました。彼は、ララが間違っているときにちゃんと指摘してくれる人物です。本作でもララの力が危険なものとなることに、気付きつつあります。試遊版では、ダガーを取ったことでマヤ文明の「終末」を開放してしまい、村に大きな損害を出してしまいます。しかし、ララは一顧だにせず自身の目的を果たそうとする。そこでジョナはしっかりと指摘をしています。「ここにいる村人たちは助けられるんだ!」と。
ただ遺物を探し出すだけでは、真の“トゥームレイダー”にはなれません。その遺物、そしてその遺物に傷つけられる人たちを、守ることも必要であり、ララにとって必要な試練なのです。
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――つまり「シャドウ」とは、ララの「影」の部分であると。
Dozois氏:その通りです。「シャドウ = 影」とは、父の死やトリニティが生んだ痛みと苦しみでもあるのです。そのすべてが生み出したララの“執着”は、自分のみではなく世界そのものを脅かすものになります。
――トレーラーにも見られますね。血まみれの手を差し伸べるララと、それを恐れる少年。
Dozois氏:暗黒の道を歩み始めたララ。そこから抜け出さないと、彼女は世界を滅ぼすことになるでしょう。
――ということはそれが、本作で描かれるララの物語の核になりますね。
Smith氏:そうです。それはゲームプレイにも表現されています。本作では「ジャングルとの一体化」というのがテーマの一つです。新たな舞台となるジャングルは、ララを殺そうとするような恐ろしいものですが、彼女はそれを逆に利用して敵に恐怖を与えるようになります。自然の恐怖を逆に利用する彼女のタフさを描く一方で、この強さは行き過ぎると取り返しのつかないことになってしまうかもしれないとうことです。
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――それでドミンゲスは、「ララのせいだ」と言ったのですね。
Dozois氏:そうですね!ストーリーを面白くするには、味方のジョナにチェックされるだけではなく、ふさわしい敵が作りたかったのです。ジャングルを肉体的な試練とするなら、ドミンゲスは精神的な試練といえるでしょう。この物語で、ララはあらゆるスキルを試されます。
――善悪がわかりやすい物語にはならない、と?
Dozois氏:試遊版をプレイされて、罪悪感を感じませんでしたか?いつもの『トゥームレイダー』なら、悪の組織より早く遺物を見つけるのが正しいことになります。しかし、本作はそのパターンを少し覆しています。悪い奴らには絶対に取らせないから警告を無視して盗んでもいいと、私がきっと正しい、と進めると必ず代償を伴うんです。ゲームの物語もこうしたメッセージが伝わるシーンから始まります。
――今作でのトリニティについても聞かせて下さい。
Dozois氏:トリニティは、ララと同じトゥームレイダーの組織であり、遺物とその力を探しています。しかし、ララとは違い、トリニティはすべての知識と力を独り占めしたがっている。ララは、彼らに父を殺されたのですが、復讐を望みませんでした。考古学者として、トゥームレイダーとしての能力を使って彼らと敵対して目的を明かそうとしているのです。ゲーム冒頭では、彼らの求めているものを理解できていませんが、物語の中で知ることになります。
――前作『ライズ オブ ザ トゥームレイダー』のエンディング…その真相がわかりますか。
Dozois氏:トリニティに父を殺されたことは、ララにとって大きなモチベーションになっていて、この作品で語られることになるでしょう。
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――クラフティングはどのようなシステムになっているのでしょうか。
Smith氏:舞台となるジャングルでは、そこに存在するすべてがララの命を狙っています。しかし、Jasonが話しているララの二面性というのはジャングルも同じことがいえます。“命を奪う危険なものも、使い方を変えれば命を救うことすらできる”。新しいシステムについてはまだお話しできませんが、物語と同様にゲームシステムにおいても重要なテーマです。
――ゲームの進行はリニアなものになるのでしょうか?試遊版の街を探索しようとしましたが限度がありました。クリア済みのエリアに戻ってリソースを集めて、洞窟などに行くようなゲームプレイはできますか。
Dozois氏:本作には「ハブ」と「狩場」があります。狩場では、リソースを集めたりすることができます。オープンワールドではありませんが、本作に登場する「隠された都市」というハブは、『ライズ』に登場したハブより三倍ほど大きく、自由に行動したり、NPCと会話してミッションを受けたりすることも可能です。また、ミッションの中でNPCと会話するようなシーンもあります。
マイペースにゲームを進め、ハブに戻って狩場を探索することもできますが、本作のストーリーはエモーショナルで勢いのあるものになっており、プレイヤーに「続きをプレイしたい」と思わせるように開発を進めています。
――「隠された都市」が遺跡ではなくて生きている人間のいるところということですね。
Dozois氏:人のいるハブです。現状、それ以上は言えません。
――新しいゲームプレイについて、もう少し具体的にお話しください。
Smith氏:ララの「降下」がテーマの一つです。我々が常に狙っているのは、ゲームプレイとストーリーをいかにシンクロさせるかです。ラペリングはもちろん、潜水して水中洞窟に、といった探検もありますよ。次の呼吸がいつになるのか、という恐怖を上手く描きたいですね。
――試遊版の潜水では、それが強く伝わってきました。
Dozois氏:200回プレイしても、溺れている気持ちになります(笑)
Smith氏:ララにとって大きなチャレンジです。今回のトゥームに踏み込むと、まるで地獄へと降下している感覚になり、前作のトゥームよりはるかに危険だなと感じるはずです。前作のトゥームは美しく、ララが入るまで未発見のところでした。しかし、今回は違います。トゥームそのものがララを殺そうとしている。ララは、いわば地獄の穴に挑むようなものです。だから“降下”という感覚を強調しようとしています。
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――ラペリングの要素は、2018年のハリウッドの映画版からインスピレーションを受けましたか。
Smith氏:映画は最近見ました。大好きです!Alicia Vikanderの演じたララが本当に好きでした。でも、本作は映画の公開前から開発をスタートしています。インスピレーションは、むしろ過去のシリーズ作品にありました。ファンコミュニティが何を求めているのか、前のシリーズの何が好きだったかを聞いて、取り入れています。ラペリングというクラシックな要素はその一つですが、先ほどお話した潜水もそうですね。
――Smithさんは前作にも関わっていましたが、開発中に学んだことはありましたか。あるとすれば本作にはどんな影響を与えているのでしょう。
Smith氏:私としては、まあEidosのみんなもそうですが、『ライズ オブ ザ トゥームレイダー』の現場で働けたことを光栄に思っています。一つ学んだことは、ララの一番の宝物が何であるか、ですね。みなさんがララを想像するとき、トゥームに踏み込むシーンを思い描くと思うのですが、彼女の一番の宝物は知識なんです。Jasonが話したように、その知識を守りたいと思うようになったら、彼女はどう変わるのか。なあ、Jason?
Dozois氏:そうですね。“真のトゥームレイダーになる”ということは世界を守ることを意味します。探索の人的損失を常に意識しながら、トゥームレイダーとしての考古学や探検のスキルを使って道を切り拓くんです。トリニティのような人たちは、人を殺して、トラップを仕掛けて、遺物や文化を盗みます。真のトゥームレイダーとしては、その文化を守って大事にすることを忘れてはいけないと。
Smith氏:そう。一番の宝物である知識をただ「レイド」するのではダメ。守らなければならないのです。
――本作のビジュアルは前のシリーズのララに似ていますね。一方試遊版では、メキシコの衣装を着ています
Smith氏:この段階では、あまり話せません。サプライズは少し取っておきたい!でもまあ…ララ・クロフトは…やっぱり決まってますよね。
Dozois氏:少し加えると、彼女は常に周囲に溶け込もうとしています。コスメルにいる時は、周りの人間のコミュニティーに溶け込もうと。
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――それが、ゲームプレイの要素にもなりますか。
Dozois氏:うーむ、実に興味深い質問ですね。Heath、要素になるの?
Smith氏:すばらしい提案ですね。
――前作のシステムと同じようなボーナスとか?
Smith氏:『ライズ』から多くのインスピレーションを受けているから、似たようなものがよく出てきます。
――アニメーションやゲームのエンジンは何が使われているのでしょうか。
Smith氏:前作と同じく「Foundation Engine」を限界まで使っています。Xbox One XやPS4 Proにもちゃんと対応しています。
Dozois氏:アニメーションについては、ディレクターと一緒に細かく調整しています。キャラクターのアニメーションがすごく複雑です。動いている感じをどう表現するか、ラペリングの運動量や感覚にとても力を入れています。もちろん泳いでいるシーンもですね。私としては、満足できるまで長い時間がかかりましたが、今はすごく満足していますし、たくさんの人が力を集めた結果です。
Smith氏:トーンやテーマをアニメーションでしっかりと表現しなければならないですからね。水中で感じる閉所や暗所の恐怖を感じさせるには、何気ないアニメーションじゃ足りません。生への執着をしっかり表現しないと伝わらないんです。
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――本作は、オリジンストーリーの最終作ですね。クラシックの『トゥームレイダー』作品の動きはあるのでしょうか。
Dozois氏:今はお話できることはありません。しかし言えるのは、ララは真のトゥームレイダーになろうとしています。到達する場所はどこにあるか、自分で考えてもいいです。私たちはこのストーリーに幕を閉じ、彼女の誕生、そのための試練、そして彼女の一番暗くてドラマチックな瞬間をしっかりと実現しようとしています。
――前作の「エンジュランスモード」のようなオープンなゲームプレイモードは期待できますか。
Smith氏:発売後にも様々な計画を立てています。それについて、今はお話しできませんが、もうじき公開できると思います。
Dozois氏:近い将来、イベントで!
――では、最後に一言。このゲームをプレイしたほうがいい理由は?
Dozois氏:ララが、真のトゥームレイダーとして生まれてくる決定的な瞬間に立ち会える。それがどれほど大切で素晴らしい変化であるのかをぜひ見届けて下さい!
――あ、ちなみに!ロゴやキービジュアルに出てくる「日食」ですが、何らかのモチーフになりますか。
Dozois氏:それはね…日食は…影を落とすということですね。
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PS4/Xbox One/PC『シャドウ オブ ザ トゥームレイダー』は、2018年9月14日発売予定です。