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2019年6月1日から2日にかけて、京都・みやこめっせにて開催された「BitSummit 7 Spirits」。個性的なタイトルが揃ったDevolver Digitalブースのなかでも、ひときわ異様なオーラを放っていたのが『METAL WOLF CHAOS XD』です。
伝説の大統領が帰還する
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『METAL WOLF CHAOS XD』は、2004年にフロム・ソフトウェアが開発し、Xboxで発売された『METAL WOLF CHAOS』のアップデート版になります。大統領がパワードスーツを着込み、自ら戦闘の最前線に向かう姿がいろんな意味で評価されました。
なぜ一国の指導者が直接、戦うのでしょうか?理由はただひとつ、彼が発するこの言葉に集約されています。「何故なら私は、アメリカ合衆国大統領だからだ!」その強靭な意思を貫き、敵陣へと突入します。
ド派手な破壊のあいだに語られる皮肉
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今回の試遊では、街に仕掛けられた爆弾を処理するミッションをプレイできました。大統領が自ら危険に立ち向かう姿には、勇ましさと言うよりも、どこかうすら寒いものを感じてしまうのはこの時代のせいでしょうか?
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主なゲームプレイはパワードスーツによるTPS。両腕に装備された武器を選択し、敵を倒しながら進んでゆきます。機関銃や火炎放射器、ブースターによる移動などなど、フロム・ソフトウェアの『アーマード・コア』シリーズを踏襲した操作性を持っています。
そんなふうに戦いつつ、マップを見ながら目的の爆弾を探していくのですが、あからさまにオペレーターや秘書の言葉がおかしいのです。「建物を破壊していくとはさすが大統領ですね!」、「この膨大な敵を始末するとはさすが大統領!」。
良くも悪くも、どんなアクションを取ってもお付きの人々は大統領を褒め称えるのです。まさに偉大なアメリカを取り戻すゲームプレイになっていると言えます。
この時代に「大統領」はどう映るのか?
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やはり本作のハイライトは、パワードスーツ大統領の風刺でしょう。オリジナルがリリースされた2004年はブッシュ大統領の時代でした。2001年の同時多発テロ以降、対テロ戦争を始めとした強権的な政策や発言には批判も多く、なぜこんなことができるのか?と思われていました。
そんな時代で『METAL WOLF CHAOS』の「何故なら私は、アメリカ合衆国大統領だからだ!」という強力な言葉と共に破壊活動に向かう大統領は、ゲームそのものが風刺になっていると言っていいでしょう。
2008年にオバマ大統領が就任してからは、さすがにこの風刺も過去のものになったと思われました。しかし2016年、もっと考えられなかった人間が大統領に就任します。ドナルド・トランプ大統領です。ブッシュ以上に強権的な政策や発言を繰り返すだけではなく、あまりにも強力なキャラクターを持っています。
トランプ大統領が就任してから、ビデオゲームでも膨大な風刺が溢れかえりました。Steamでもその一端がうかがえます。そういえば、トランプ大統領も強力な言葉を持っていますね。「アメリカ合衆国を再び偉大にする!」。
『METAL WOLF CHAOS XD』は2019年にPlayStation 4/Xbox One/PCでリリースを予定しています。パワードスーツの大統領は、強力すぎる現実を風刺することはできるのでしょうか? 発売されたとき、答えが出るでしょう。
※UPDATE(2019/6/8 2:50):本文内容と画像を一部修正しました。コメント欄でのご指摘ありがとうございます。