気になる新作インディーゲームの開発者にインタビューする本企画。今回は、光穹遊戯(18Light Game)開発、ニンテンドースイッチ向けに2018年8月23日、Steam向け(PC/Mac/Linux)に今年4月4日リリースされたサスペンスパズルアドベンチャーゲーム『螢幕判官(Behind the Screen)』開発者へのミニインタビューをお届けします。
本作は、独特なグラフィックとアクション要素、そしてパズル要素を持つサスペンスアドベンチャーゲーム。台湾で実際に起きた事件を改編したもので、プレイヤーはとある殺人犯となり、その人生を追体験していきます。なぜ事件が起こったのか、幼年期からの出来事を振り返っていくことでその真相に迫ります。Steam版は7月12日のアップデートで日本語がサポートされました。
『螢幕判官』はSteam版、ニンテンドースイッチ版、共に1,000円で配信中。
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――まずは自己紹介をお願いします。
光穹遊戯:私たちの会社は「光穹遊戯(18Light Game)」と言い、台湾のインディーデベロッパーです(個人ではなく会社全体としてインタビューを受けます)。会社の創業者の何人かは、大学時代の宿舎生活のときからゲームの開発を始めていました。それから頑張って何年も続けていったことで、プログラミング、グラフィック、ムービーなどの開発者や営業・広報担当が集まり、現在では16人ほどのチームになっています。
私たちのゲーム開発における初志は、「一杯のコーヒーを飲む時間を使って、特別な旅を手に入れられる」ことです。そのため、光穹遊戯が開発したゲームはすべて「冒険」に関連した内容になっています。また、ストーリーには社会問題を融合させています。本作では殺人事件とニュースの真実性の解釈がストーリーの主軸になっていますが、同時に学校のいじめ問題、家庭内暴力、ステレオタイプなどの問題も含まれています。ゲーム自体の面白さと独特の雰囲気以外に、プレイヤーがゲームプレイ後、これら社会問題を思い返してもらえることを期待しています。
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――本作の開発はいつどのようにして始まったのでしょう?
光穹遊戯:最初のころの光穹遊戯は、先ほども述べたように何人かの大学生が宿舎に閉じ籠って開発を行っていました。大学2年生のころ、私たちの第1弾の作品『麦克尼西亜(Magnesia)』は、予想外にも様々な異なる国からの参加があった作品を打ち負かし、2014年のUnity Awardsで金賞を取りました。それからいろいろなことがあって、私たちは『麦克尼西亜』の開発をいったん中断することを決定します。そして当時のチームの規模と能力に適したものを開発しようと考え直して再出発した結果が、現在皆様がご覧になっている本作『螢幕判官』です。
本作において私たちは、プレイヤーに深慮させるような魅力あるテーマを含ませること以外に、「光穹遊戯」というデベロッパーをプレイヤーに覚えてもらえるようにしようと望みました。このことから、開発チームで何度もの討論を重ねたのち、ゲームの時代背景(およそ1970~80年代ごろの台湾)にマッチしていて、なおかつ非常に特色のあるノスタルジックな絵本風のグラフィックならば、ゲーム全体の雰囲気をさらによくすることができるのではないか、真似することのできない個性になるのではないかと考えました。万人が好きになるようなものではないけれども、しかし少なくとも私たちのことを記憶してくれることでしょう。
私たちは約一年半の時間を掛けて本作を完成させました。様々なプレイスタイルのミニゲームや、緻密に描かれたグラフィックのほかにも、ゲーム内のテキストやストーリーにも多くの時間を割きました。例えばゲーム内で収集できる物件が手帳に記録されますが、手帳に書かれた文章の内容はすべて実際に起こった歴史事件を改編したものです。それらには特別な意味とテーマが隠されています。
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――本作の特徴を教えてください。
光穹遊戯:本作の最大の特徴は、プレイヤーが深く考えさせられるような部分がストーリー中に隠されていることです。ネットで様々な情報にアクセスできるようになった現在において、多くの場合、私たちは事実を見過ごしたり深く理解することができなかったりします。ネットやニュースの一面の見出しを見ただけで、その真相について勝手に判断してしまいます。ひいてはPCモニタの後ろに隠れて大いに批判を行い、罵詈雑言を浴びせたりなど、まるで本作のタイトル『螢幕判官(モニタ越しの裁判官)』と同じです。
本作の主人公に扮したプレイヤーたちも、ただ主人公の内心を見ているだけであり、知らず知らずのうちに主人公の不幸さを認めてしまうことでしょう。しかしプレイヤーがそうなってしまうことで、そのことこそが物事の一面しか見ないで結論を出してしまう『螢幕判官』の一人になってしまっている可能性もあるのです。
本作の中では、多くの部分が先ほど述べたようなことになっています。一つのテーマを演出してプレイヤーに考えてもらうだけでなく、作り込まれた雰囲気の中、いじめや家庭内暴力などの状況における心境をプレイヤー自身に体験してもらい、ストーリーに浸ってもらいたいのです。このようなことから、本作ではストーリーやグラフィック、ゲームプレイの開発に力を入れているのはもちろんですが、私たちがもっとも力を入れているのは、おそらく「雰囲気」を作り出すことでしょう。
例を挙げて説明すると、本作のグラフィックやそのスタイルは、虚構と真実が交錯する感覚を作り出しています。小さいころの主人公は、天馬が空を飛ぶ幻想を見ていました。しかし少しずつ成長して大人になっていくと、現実と向かい合わなければならなくなります。顔色も主人公が大きくなるにつれて、鮮やかで楽しさのあった色彩が、重々しく厳粛な薄暗い感じになっていきます。ゲームプレイに関しても特別な設計をしています。小さいころの主人公は能力が足りないので隠れることしかできませんが、大きくなった後では戦闘やケンカのシーンが続々と登場することになります。
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――本作が影響を受けた作品はありますか?
光穹遊戯:もっとも影響を受けた作品ですが、おそらくは「十二人の怒れる男」という映画にインスピレーションを受けたのだと思います。物語は12人の陪審員の弁証討論の過程から始まります。殺人容疑の少年の無罪を主張する陪審員のひとりが、他の11人の陪審員を相手に説得を試みるという内容です。物語は、最終的には少年がどうなったかについての結末は語られていませんが、深みのある弁論や、視聴者が省思するようなテーマなどは、私たち開発チームに大きな影響を与えました。
それゆえ、私たちも本作を開発するにあたって、立場の違う人たちの見解を何度も繰り返し提示して、プレイヤーに様々な角度から思考、論証を行えるようにしました。そしてエンディングには、ただ一つだけしかない正しい答えというものを与えていません。オープン式の結末を採用し、プレイヤーはその内容に対して自分自身が感じ取ったことや理解したことに照らし合わせ、自由に結末を想像することができるのです。
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――最後に日本の読者にメッセージをお願いします。
光穹遊戯:今回、本作を日本で(日本語で)配信することができました。私たちにとって日本のゲーマーと直接対面する試みができたのは、本作が初めてです。皆様が私たちの作品を受け入れ、喜んでいただけることを期待しています。もし何かご意見・ご感想がありましたら、本作の日本語版Twitterを通して私たちにお知らせください!私たちは日本のゲーマーの皆様と、さらなる交流ができることを強く願っています。どうもありがとうございました!
――ありがとうございました。
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