◆包丁や流血に惑わされるな・・・『ハーレム天国だと思ったらヤンデレ地獄だった。』の主人公には絶対になりたくない
“本当は怖い”日本一ソフトウェア特集、その2本目の作品として取り上げたいのが、『ハーレム天国だと思ったらヤンデレ地獄だった。』です。タイトルからも分かる通り、美少女たちに好かれるハーレム的な展開から始まり、修羅場なヤンデレ地獄へと突入します。
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3人の美少女「有末陽佳」「尊海神無」「宮主佐優理」と、主人公の「如月優也」は、幼い頃からの幼なじみ。時間と共に思い出を重ねていき、思春期を迎えたことで、彼女たちの気持ちは優也への好意として表現されるようになりました。対する優也は(ゲーム設定的に当然ですが)、特定の誰かを選ぶことなく、今の関係を壊さないように振る舞っています。
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そんな関係性で始まった本作は、前述の通りハーレム的な雰囲気が続きますが、ある事件を経て彼女たちの在り方も大きく変わります。愛情の示し方が過激さを増したり、殺人事件と平行して行方を眩ましたり、ツンデレな生徒会長「九条静香」が被害者となったり・・・。
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ルートにもよって内容は変化しますが、撲殺に刺殺、血みどろな流血騒ぎに発展。幼なじみたちが優也を精神的に追いつめ、バッドエンドでは優也自身を殺してしまうこともあります。その理由も様々で、中には「次の生まれ変わりをお待ちしています」と、(ねじ曲がりきった)愛情ゆえというケースもあり、主人公に同情した気持ちも湧いてくるほどです。
包丁や金属バットで流血を呼ぶ陰惨なシーンが多いため、サイコパス的な恐ろしさが目立っているゲームですが、本当に恐ろしい場面は陽佳ルートの結末(実質的なトゥルーエンド)で訪れます。
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ネタバレ前提の特集とはいえ、そのシーンを事細かに説明すると、本作で最も大きな秘密を明かすことになります。さすがにそれは憚られるので、ある程度ボカした表現となりますが、これまでのルートで貼られた伏線や謎めいた部分は、この陽佳ルートでほとんど解消します。
そして、陰惨な事件も幕を引き、また3人と優也のハーレム生活が再スタート。ですが──優也という人間が完全否定され、そこに彼自身の喜びは幸せは一切見い出せません。少なくとも筆者は、そう感じました。また、怒りや憎しみすらもなく、強いて言えば“恐れ”はありますが、それも遠からず“虚無”に飲み込まれてしまうのでは・・・と予想してしまいます。
本作最大の謎が解けたことで、彼女たちがなぜ「優也」と共にいたのか。加えて、まるで自分の所有物であるかのように執着してきた理由も分かります。美少女たちに囲まれながらも、主人公の気持ちだけ完全に置き去りで、先の見えない空しさだけが横たわる結末。流血や殺人とは次元の違う恐ろしさを覚えながら、当時の筆者はそっとコントローラーを置きました・・・。
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色んなゲームを遊んでいて、「このゲームの主人公になりたいなぁ」と思うことはありますが、優也の立場だけは絶対に勘弁です。他のゲームどころかこの現実すらも、『ハーレム天国だと思ったらヤンデレ地獄だった。』と比べると優しい世界です。厳しいこともあるけど、現実世界で頑張ろう・・・!
恐ろしさは、どこにでも潜んでいます。そう、チュートリアルにも・・・