◆絵柄や物語に惹かれた方は是非プレイを! 『嘘つき姫と盲目王子』
ここまで、“本当は怖い”日本一ソフトウェア特集として3本のゲームを取り上げてきましたが、怖い作品ばかりだと心も疲れてしまいがち。そこで最後に、“本当は怖くない”作品を紹介したいと思います。
“怖い”と一口に言っても、様々な方向性があります。ホラーやスプラッタ的な恐怖もあれば、現実に起こり得るリアリティな怖さ、自身のアイデンティティを失う恐ろしさ、取り返しのつかないことをしてしまった恐怖・・・いずれも忌避したいものばかりです。
そしてゲームを遊ぶ上で、恐れる点のひとつに成り得るのは、物語が迎える結末でしょう。人によって個人差のある部分ですが、悲痛な終わり方をする物語に胸を痛め、その気持ちをしばらく引きずってしまうこともあります。
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「それがいい!」と感じる人もいれば、「お話の中だけでも幸せになって欲しい」と願う人がいるのもまた事実。そこで今回の特集の締めくくりに、“本当は怖くない”作品として、後者の方々にお勧めしたい『嘘つき姫と盲目王子』をピックアップします。
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狼に似た人食いの化け物は、素晴らしい歌声の持ち主でもありました。その歌声に聞き惚れた小国の幼い王子と、気まぐれで彼を殺さなかった狼との、歌声だけが繋ぐひとときが幾晩も続きます。しかしある日、歌声の主に一目会いたいと願った王子の行動で、ふたりの物語が大きく動き出すことに。
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自分の正体を知られたくなかった狼は、反射的に自分の手を王子に向け、その手についた凶悪なかぎ爪で王子の顔を引き裂いてしまいます。
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顔に傷を負い、視力を失った王子は、城の塔へと幽閉。全ては自分のせいだと悔やんだ狼は、素晴らしい歌声と引き換えに「姫」の姿を手に入れ、王子の元へ向かいます。どんな望みも叶えてくれる「魔女」の元へ連れていき、彼の目を治すために。
こうして、自分が光を奪った狼であることを隠した「姫」と、幼い盲目の「王子」の冒険が始まります──これが、『嘘つき姫と盲目王子』の幕開けです。ゲーム慣れしたユーザーならば「どう考えても、このまま終わるわけがない!」と思うはず。筆者も同じ印象を受けましたし、実際にこの“切なくも身勝手な嘘”は、隠したままではいられません。
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そのため、本作に興味が湧いても「悲しい結末が待っているのでは・・・」と、プレイを躊躇ってしまう方もいるのではないでしょうか。ここで経緯や結末を詳しく語るのは、野暮もいいところなので、具体的な話は伏せておきます。ですが、この一言だけを、力強くお届けしたいと思います。
「大丈夫!」
これ以上はプレイの楽しみを奪ってしまうので、どうかこの“安心”だけを受け取ってください。そして、『嘘つき姫と盲目王子』のプレイを尻込みしていた方は、今からでも是非プレイを。本作の雰囲気に惹かれた人なら、決して裏切らない内容になっていると思います!
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想像もしない角度から“怖さ”を突きつけてくる作品から、「大丈夫!」と太鼓判を押したいものまで、日本一ソフトウェアがリリースする作品は多様性に満ちています。
そんな同社の最新作となる『void tRrLM(); //ボイド・テラリウム』は、果たしてどんなゲームなのか。トリコの行く末が気にもなり、恐ろしくもあり。今回もビクビクしながら、遊んでみたいと思います。日本一ソフトウェアのゲームは油断できない・・・!
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