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ベセスダ・ソフトワークスより2020年3月20日(国内版は3月26日)に発売されたシリーズ最新作『Doom Eternal』。こちらの予約特典としてかつてNINTENDO64で発売された『DOOM 64』が付属していることが話題になりました。そのオリジナル版は米国で1997年4月4日に発売。本稿では、実に23年ぶりのリメイクとなる本作を「NINTENDO64版」と「リメイク版」で比べていきます。
そもそも『DOOM』とは?『DOOM 64』って何?
『DOOM』とは1993年にid Softwareが開発したFPS。1992年に発売された『Wolfenstein 3D』と並び、「FPSの父」とも呼ばれるジョン・ロメロ氏が生み出したシリーズです。多数の武器を操り次々と敵を撃ち殺す爽快感、謎解きや隠し部屋、隠しアイテムなどの探索要素を組み合わせたレベルデザインが今も高く評価されています。
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画像はSteam版『Ultimate Doom』より。
『DOOM 64』は、1997年にMidway Gamesが開発して販売されたNINTENDO64用のFPS。初代『DOOM』『DOOM II』などの続編に当たる作品です。『DOOM』での一人の海兵の活躍により、火星を悪魔の手から守った人類。基地を封鎖することに成功した数年後、誰もいないはずの基地から地球へ1通のメッセージが送られます。そして、生き残っていた1匹の悪魔の手により再び悪魔の軍勢が復活したことが判明してしまいます。
主人公は軍事コード「DOOM」からのただひとりの生き残りとして火星に送られ、再び悪魔の軍勢を全滅させるために戦うことになります。闇の中で以前より力をつけた悪魔との死闘が始まります(本作説明書より)。
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今見てみるとRボタンの平行移動(左)が誤植だなあ。
そして2020年、Nightdive Studiosの手によってリメイク版の『DOOM 64』がリリースされました。同社はクラシックゲームのリメイクや再リリースを行っており、id Softwareとベセスダ・ソフトワークスの協力のもと、本作のリメイクを担当しています。また、著名な『DOOM』コミュニティメンバーが多く在籍しており、本作では彼らの開発したゲームエンジンが使用されています。
ちなみに『DOOM(2016)』で地獄より復活したドゥームガイは、本作でエンディング後に地獄で悪魔と戦い続けることを選んだ主人公と同一人物。リメイク版で新たに追加されたチャプター「The Lost Levels」では、本作と2016年版がリンクするストーリー展開になっています。
オリジナル『DOOM 64』!完成度は高いが難しい!
※オリジナル版は変換コネクタとキャプチャボードを使用しており、撮影用に少し明るくなるようにPC側で設定しています。
本作は隠しを含む32のステージで構成されていて、敵を倒してアイテムを集めながら謎を解き、ゴールまで辿り付けばステージクリアとなります。今どきのゲームに比べれば狭いマップなのですが、鍵が必要になる扉、スイッチやエレベーターなど、立体的に作り込まれたレベルデザインが秀逸です。また、各ステージに隠されているシークレットエリアやアイテムを探し出す楽しみも本作の醍醐味です。
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ステージクリア後のリザルトでもシークレット発見率が表示されます。
ステージが進むたびにショットガン、チェーンガン、ロケットランチャー、BFG9000など次々と強い武器が手に入り、それらを駆使して敵を蹴散らしていくのは快感そのもの。広い攻撃範囲の「スーパーショットガン」は照準で上下の撃ち分けの概念がない本作では非常に頼れる相棒です(自動追尾はあります)。ただし、強化されるのは敵も同様。悪魔どもの攻撃はステージを進むごとに苛烈になり、簡単にやられてしまうこともあります。敵の攻撃パターンを読み、時には回避しながらの戦闘が求められます。
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爽快に決まってるだろう!
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NINTENDO64独特の移動+攻撃の操作は非常に直感的。特に水平移動と照準を組み合わせた「移動しながら相手を撃つ」というプレイングは、攻撃回避にもなる必須テクニックです。また、ダッシュやインタラクトには専用のボタンがあり、すべてを上手く利用するには少し慣れが必要でもあります。
ただし、どうしても現代のFPSと比べると反応が遅く感じます。直感的な攻撃は可能なのですが、相手の数に対処できずにやられてしまうことも珍しくありません。また、ゲームそのものの設定としてとにかく画面が暗いため、探索に時間がかかったり、敵を見つけられずにダメージを喰らい続けることもあります。そんなわけで全体的には難しいのですが、しっかり探索を行うことで強力なアイテムや武器が手に入り、戦闘が楽になるというバランス感は今見ても素敵だと思います。
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暗い!(オプションで少しは調整できます)
ちなみにNINTENDO64版の本作は日本語に対応しており、チェーンソー入手時には「チェーンソーダ!キリキザメ!」とカタカナでログが表示されます(日本語なのはログの部分だけですが……)。説明書はすべて日本語に訳されています。武器やアイテム、悪魔たちの説明もしっかり載っているので、資料的にも価値がありそうですね。
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そして最高な悪魔の説明文。
リメイク版『DOOM 64』をプレイ!追加チャプターも!
続いて、23年ぶりに登場したリメイク版をプレイしてみます。今回の比較ではキーボードとマウスでプレイすることで、パッドとの操作感の違いを確かめています。起動するとNINTENDO64版と同じロゴのタイトル画面が登場しますが、すこし綺麗になっている印象があります。
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ステージ1の開始場面で感じたのはとにかく「明るい!」ということ。ステージの色合いが鮮明なおかげで全体がハッキリとしている印象があります。通路の奥にいる敵や地面に落ちているアイテムなども視認可能で、不意打ちや不要な状況でアイテムを取る事故を大幅に減らせます。
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明るい!
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その意味ではN64版よりホラーからアクション寄りになってる印象。
滑らかな操作感はそのまま射撃精度や回避の向上にも繋がり、すべての戦闘シーンが快適になっているように思えます。スピード感を補う細かいグラフィックス設定や滑らかな描画からは、今のFPSプレイヤーにも非常に遊びやすくなっている工夫を汲み取れます。ステージ内のどこでもセーブ/ロードが可能になっている部分なども、高難度の本作では非常に嬉しい変更点です。
本編をクリアすることで追加される「The Lost Levels」では、本作のラスボスである「Mother Demon」の妹が登場。彼女の復讐を迎え撃つために主人公は新たなステージを探索することになるのですが、そこでも絶妙な敵配置やギミックなどを相手にやりごたえ抜群のゲームプレイを楽しめます。
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オリジナル版とリメイク版の徹底比較!
2つの作品の悪魔やアイテム、プレイ感覚を実際に比較していきます。画像や動画はNINTENDO64版→リメイク版の順番です。
デーモン/血の色
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血の色はN64だと緑色。リメイク版だと赤ですがオプションで緑色に変更可能です。
ヘルナイト
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バロン・オブ・ヘル
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カコデーモン
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みんなのアイドル・カコデーモン。
アラクノトロン
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マンキュバス
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ソウルスフィアー
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アイテムや敵などはNINTENDO64版の素材を使っているようで、見た目に大きな変化はありませんでした。表現がクリアになってる分、スッキリしています。
「MAP01: Staging Area」プレイ動画
全体的に見やすくなり、スピード感が上がっているのが伝わると思います。
ここまで紹介してきた2つの『DOOM 64』ですが、色褪せない派手な戦闘とよく練られたレベルデザインから、現代でも充分通用するゲームであると感じられました。ホラー要素のある重厚な雰囲気と、それをすべてぶち壊すドゥームガイの爽快感は、すべてのFPSプレイヤーが思わず笑顔になるのではないかと思います。「ロメロってすごいんだな!」と、長年のシリーズファンには当たり前だろと怒られかねない気持ちも湧きました。
遊びやすい工夫を随所にちりばめたリメイク版は、『DOOM 64』オリジナルの手触りをまったく損なわず、現代でも楽しめる作品に仕上げていると強く感じます。NINTENDO64版を遊んだことがあるプレイヤーはその当時身につけた知識やテクニックをそのまま使用でき、隠し部屋やアイテムなども変わらず置いてあるため、ノスタルジーと改善されたさらなる爽快感を一気に楽しめるでしょう。ちなみに、ステージクリア後に表示されるパスワードがNINTENDO64/リメイク版どちらでも共通で使用できるものがあったことを確認しています。
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シークレットの場所は基本的に両版共通です。
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完成されたゲームデザインを今の技術でさらに遊びやすくしたリメイク版『DOOM 64』は、PC(Steam)/PS4/Xbox One/ニンテンドースイッチで配信中です。
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気持ちいい。