……早くないですか?
月日の流れ、早くないですか?今年は新型コロナウィルスのあれこれでてんやわんやなのでなおさらそう感じます。
だって!新年早々にコロナが~という報道が出始めたと思ったら、あっという間に緊急事態宣言。そしてもう6月!自宅からほとんど出ないまま梅雨入りを迎えることになりそうですね……。
まったく……。『あつ森』が捗ってしょうがないです。
どこにでもいるオイカワという魚
ところで、僕は毎年この時期になると必ず一度はある魚を見に小川へ行くことを恒例の年中行事にしていました。
その魚とは!『あつ森』でもよく釣れる「オイカワ」です。
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オイカワは本州・四国・九州に分布するコイ科の小魚で、大きさは10センチほど。『あつ森』では比較的イージーに釣れる魚ですが、現実世界でも出会うのは非常に簡単だったりします。
よっぽど水が汚いというわけでなければ、大抵どこの川にでもいるんです。里山の川はもちろん、大都市でもちょっとばかしキレイめな小川があったらのぞいてみるべし。ヒラヒラと群れて泳ぐイワシのような細長いシルエットの小魚がオイカワです。
オイカワは「ハヤ」とか「ハエ」とか「ヤマベ」といった別名で呼ばれることもあり、昔から子どもたちにとっての良き遊び相手として親しまれてきました。魚掬いや釣りの入門にちようどいいんですよねーこれが。
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なんといってもどこにでもたくさんいるのがイイ!どこにでもいすぎて、単に「雑魚(ザコ)」なんて呼ばれることも……。
『あつ森』でも売値たったの200ベルですもんね……。
学名が『ザコ』!?
雑魚なんていい加減なあだ名で呼ぶなんてひどいな!ちゃんとした名前で呼んでやりなよ!と、言いたくなるところですが……実はこの「雑魚呼ばわり」、意外にもそこそこ「ちゃんとした」呼び名だったりします。
その説明の前にまず生物の名前についてちょっと講釈を垂れます。
基本的にあらゆる生物には日本語の名前(和名)や英語の名前(英名)以外に「学名」というラテン語の名前がつけられています。
たとえば僕たちにつけられた和名はヒト、学名はHomo sapience(ホモ・サピエンス)という具合です。
で、オイカワの場合この学名がつい最近まで「Zakko pratipus(ザッコ・プラティプス)」だったのです。
ザッコて!!もちろん語源は日本語の「雑魚」です。
学名というのは研究者らが学究の場で使用する、いわば世界共通の真名です。つまりある意味では和名よりずっと重要なものだと言えます。
ということはつまり!世界規模で雑魚!グローバルな雑魚!ボーダレスに雑魚!というわけですよ。
雑魚扱いされる魚は数あれど、オイカワは雑魚中の雑魚、雑魚代表、雑魚の代名詞とも言うべきポジションに収まってしまっている魚だったのです。
ずいぶんかわいそうな感じの学名をあてられてしまったものです。
しかし、これはこれでオイカワという魚の日本における文化的な扱いを端的に示した学名であるとも個人的には思います。
なお、現在は学名が「Opsariichthys platypus」に変更されています。脱・雑魚おめでとう!
めっちゃキレイ!!(※ただし期間限定&オス限定)
……さて。話を戻しますが、ではなぜ僕はそんな雑魚をわざわざ毎年観察しに出かけるのか?
フフフ……!実はこのオイカワ、初夏~梅雨明けの期間限定でめちゃくちゃキレイになるんです。ただしオスだけね。
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その変貌ぶりたるや、同じ魚とは思えないほど!プレーンな銀一色だったのが誇張抜きに虹色になりますからね!
これは婚姻色というもので、繁殖の際にメスの気を引くためにド派手な装いへメイクアップするわけです。
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これでレディーたちにアピールするぜ
さらに顔にはパールピアスのように白い点々が並び(追星/おいぼし、という)、しりビレは燕尾服のように長く伸びるなど色だけでなくシルエット自体も変わってきます。
川の中のジューンブライドは男が着飾るんですねぇ。
まぁやがて繁殖期が終わると再び元の地味な雑魚スタイルに戻るわけですが…。
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うーん、もし年間を通じてこの美しさだったなら雑魚呼ばわりされることもなかったろうに。
でも一年中こんなに派手な格好をしていたら鳥や大型魚に対して「食べてください!」とアピールしているようなものですからね。ザコ男子たちが魅せる、子孫を残すための決死のドレスアップというのもなかなか乙なものです。
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あ、ちなみに『あつ森』で釣れるオイカワはすべて婚姻色の出たオスですよ。熱帯魚であるネオンテトラやレインボーフィッシュに負けないくらいキレイでしょう。
でも!リアルのオイカワはもっともっと綺麗です!機会があればぜひ探してみてください。一見の価値ありと自信を持って言えます。
僕も今年は我慢するけれど、来年こそはまたあのイケメン雑魚どもに会いに行くぞ~!待ってろ!!
■著者紹介:平坂寛
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Webメディアや書籍、TV等で生き物の魅力を語る生物ライター。生き物を“五感で楽しむ”ことを信条に、国内・国外問わず様々な生物を捕獲・調査している。現在は「公益財団法人 黒潮生物研究所」の客員研究員として深海魚の研究にも取り組んでいる。著書に「食ったらヤバいいきもの(主婦と生活社)」「外来魚のレシピ(地人書館)」など。
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