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ドラマティックな展開と刺激的な演出が光るSTG『アスタブリード』などの作品を放った「えーでるわいす」が手がけた最新作『天穂のサクナヒメ』が、PS4/ニンテンドースイッチ向けとして11月12日に発売を迎えます。
横スクロールの爽快アクションと、“稲作”を絡めた育成要素というユニークな切り口を持つ本作。個人的にも高い期待をしながら注視していた作品ですが、このたびリリース前にいち早くプレイする機会に恵まれました。そこで発売日に先駆け、本作の魅力やプレイ感などを今回お届けしたいと思います。
なお、今回はPS4版『天穂のサクナヒメ』のプレイレポとなります。
「羽衣」で空中を舞い、敵を翻弄! 新たな刺激で広がる爽快アクション
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タイトル名にもなっている主人公・サクナヒメは、武神の父と豊穣神の母の間に生まれた神で、神族を統べる主神・カムヒツキから“お役目”を直々にいただくほどの立場にあります。
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が、それはゲーム開始時点の話。恵まれた立場に胡座をかき、自堕落な振る舞いの末、事故とはいえ御饌殿の一部を焼失させるという大失態を犯してしまいます。
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サクナヒメは必死に取り繕うものの、カムヒツキからは厳しい叱責か飛び、鬼が巣くう離島の調査を命じられることに。その島が、本作におけると戦いと農耕を描く舞台となります。
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島の至る所には様々な鬼が徘徊しており、その戦いは全て2Dアクションで展開。サクナヒメを含むキャラクターや鬼たちのグラフィック表現は3Dですが、ゲームシステムとしては、左右の移動とジャンプを基本とする高低差のあるフィールドでのバトルとなります。
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ですが本作のバトルは、通常の移動とジャンプだけでなく、更なる移動手段となる「羽衣アクション」の存在が非常に特徴的です。サクナヒメが纏っている羽衣は、Lレバー(もしくは方向キー)とR1ボタンの組み合わせで伸ばすことができ、その先端が壁や天井に届けば、その位置まで瞬時に移動します。素早く動けるのはもちろん、ジャンプだけでは届かない高さも乗り越えられたりと、アクションの幅を大きく拡げてくれる要素です。
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羽衣は、1度のジャンプで2回まで伸ばすことができるので、例えば「壁に張り付いた後、更に天井に張り付く」といったアクションも可能。また、R1を押しっぱなしにしておくと壁や天井に張り付いたままキープできるので、状況を確認しつつ移動できます。ただし壁と天井は着地扱いにならないので、2回張り付いた後は、いったん地面に着地しないと羽衣は使えません。
そして羽衣アクションは、移動手段だけに留まりません。敵に当てると、羽衣を利用してその背後に回り込むことができます。盾を持っている敵がいても、羽衣アクションで背後に回れば、一転して攻撃のチャンスに早変わり。また、敵に囲まれた時の離脱手段としても使えるので、羽衣は攻防に渡ってサクナヒメを助けてくれます。
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本作は、ボス戦も含めて複数の敵と戦う場面が多く、主導権を握らないと数の暴力で押されがちになることもしばしば。だからこそ、羽衣アクションで囲みを抜け、空中を自在に飛び回って敵を翻弄するプレイは楽しく、そして唯一無二の快感です。
またサクナヒメが成長すると、敵を引き寄せたり、投げ飛ばすなどの「羽衣技」を習得。素早い移動や位置取り、回避に反撃の糸口など、羽衣を軸とした本作のアクションは独自の爽快感に満ちており、アクションゲームファンを魅了する手応えに溢れています。
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今回は、特に印象的な「羽衣アクション」に注視しましたが、弱攻撃と強攻撃の使い分け、レバー入力による攻撃の変化、手軽かつ気持ちのいいコンボ、技力を消費して放つ強力な「武技」、敵の攻撃に合わせてレバー入力する「はじき」など、アクションバトルを盛り上げる数多くの要素も盛り込まれているので、ご安心ください。
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そして本作の操作感についてですが、ボタンやレバー入力のレスポンスもよく、サクヤヒメのアクションも打てば響くような心地よさがあります。アクションゲームの基本とも言える“キャラを動かしているだけで楽しい”という手触りは、この『天穂のサクナヒメ』からも感じられました。しっかりと基本を押さえた上で、羽衣というスパイスを効かせたアクションパートだけでも、十分魅力的な作品だと感じました。
ちなみに、本作には時間の概念があり、稲作だけでなくフィールドの探索中も時間が流れています。そして夜になると、フィールド上の敵が一気に強くなるので、特に理由がない限りは撤退するのがベターです。戦闘をサポートする食事効果も時間経過で切れるため、夜は大人しく拠点に戻り、(蓄えや収集した分がある限り)美味しい食事に舌鼓を打ちましょう。
サクナヒメが成長する“稲作”は、豊作で心も実る新鮮な要素!
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『天穂のサクナヒメ』において、アクションと並ぶほど重要な要素となるのが、拠点で行う“稲作”です。本作には、いわゆる「敵を倒して経験値を稼ぎ、レベルアップする」といった要素がありません。サクナヒメの育成は、経験値によるレベルアップではなく、稲作によって行われます。
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サクナヒメの母は豊穣神であるため、稲の実りは彼女の大きな力となり、その出来映え次第でステータスが大きく上昇。米の収穫量や質の良さが、サクナヒメの強さを大きく左右するのです。
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例えば、ゲーム開始直後のサクナヒメは、HPに当たる「命」が100、物理攻撃に関わる「力」は15といった程度ですが、今回のプレイで1年目の収穫を終えた際、命は128まで上昇。力にいたっては39も増え、一気に54になりました。もちろん、この他のステータスもかなりの伸びを見せました。
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数字だけだと、サクナヒメがどれくらい成長したのか伝わりづらいかと思いますが、成長を経るとボスクラスの敵との戦いがぐっと楽になります。それまで、弱攻撃だと1桁台~20前後だった与ダメージが、40や50などを叩き出すようになり、戦いやすさは雲泥の差でした。
成長度合いや装備している武器にもよるので、万人のプレイがこの数字になるとは限りませんが、米作りにしっかり手間をかけることで十分なリターンが返ってくるのは間違いありません。
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ちなみに、農作物を育てる要素があるゲームはいくつもありますが、その大半は農作業の手順をいくつか省略し、シンプルな形に落とし込むケースがほとんど。しかし本作はその点にも徹底的にこだわっており、「田植期」「育成期」「収穫期」と大きく分けて3つの時期に、それぞれ異なる行程の農作業が待っています。
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「田植期」は、1年目こそ「田植え」から始まりますが、2年目には「田起こし」も必須となり、更に「種籾(たねもみ)の選別」や「育苗」なども加わってきます。
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「育成期」に入ると、雑草を引き抜いたり肥料をまいたりと、こちらも大忙し。加えて、育成状態によって水を入れたり抜いたりと、水量や温度の調整も欠かせません。最もこまめに面倒を見なければならない時期と言えます。
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そして秋になると、待望の「収穫期」に突入。まずは「稲刈り」・・・の前に水を抜くのがベター。そして、刈った稲を干す「稲架掛け」、稲の穂先から籾を外す「脱穀」、籾殻を取り除く「籾摺り(もみすり)」と、やるべき作業がギュッと詰まった時期でもあります。
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ちなみに「籾摺り」は、精米の度合いを自由に決められます。玄米に留めておけば、戦闘をサポートしてくれる食事効果が高くなりますし、白米に近づけるほど成長効果が高まるので、悩ましい判断を求められます。
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こうした行程を経ることで、新米の収穫が完了! これまで様々なゲームをプレイしてきましたが、ここまでちゃんと米作りに迫った作品は覚えがありません。かといって、手順が煩雑だったり、面倒が多いといった印象はなく、しっかりと“ゲーム”に落とし込まれています。
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「田起こし」は満遍なく耕しますし、植える間隔も重要な「田植え」、頻繁に行う「草抜き」など、各作業は完了までに何度もボタンを押すことになります。しかし、田植えで実際に苗が増えていく景色は満足感が湧きますし、時間の経過と共に育つ稲を見るのも楽しみのひとつ。収穫ともなれば、1年の苦労が報われる充実感すら覚えるほど。
サクナヒメの育成や戦闘の支援に関わ重要な要素なので、その報酬ありきで取り組んでいる点は否めません。ですが、実際に育つ稲に愛着が湧いたり、豊かな実りを見て嬉しくなる自分がいるのもまた事実。頑張った分だけいい稲に育つ手応えも、本作のプレイ意欲を別の角度から後押ししてくれます。
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単なる作業では終わらない“稲作”ですが、そこにハマるかどうかは人それぞれ。アクションメインで本作を遊ぶ方にとっては、煩わしい要素になってしまう可能性もあります──が、ご安心ください。サクナヒメが成長するほど、稲作に便利な「農技」を覚えていき、プレイヤーの農作業をサポートしてくれます。
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また、農作業を他の人間に任せることもできるので、稲作を極力他人任せにすることも可能です。真摯に打ち込み、よりよい米を育て上げるか。米作りは人間に任せ、自分の腕前を磨いてバトルに没頭するか。自分好みのスタイルで楽しめるのも、『天穂のサクナヒメ』が持つ魅力のひとつです。
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今回は、『天穂のサクナヒメ』の中核的な要素となる“羽衣アクション”と“稲作”に注目しましたが、このほかにも様々な特徴が本作を彩っています。
神様なのに自堕落で身勝手なサクナヒメは、親しみやすい愛らしさも持ち合わせており、多くの方が惹かれる主人公と言えます。また、彼女と共に暮らす人間たちも個性的で、本作のプレイを続けてしまう動機のひとつになるほどです。
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その魅力の全てを伝えるには到底及びませんが、今回紹介したポイントが気になった方ならば、プレイ候補に加えてみてはいかがでしょうか。羽衣で宙を舞い、稲作作りもクセになる『天穂のサクナヒメ』。期待に応える丁寧な作り込み、あなたも味わってみてください。
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