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『聖剣伝説 レジェンド オブ マナ』は絵本のような見た目とは裏腹に、過去の戦争の影や憎しみ合う人々、生死を巡る問いなどの重いテーマの物語であるのが魅力の一つです。七賢人のひとりであるガイアは、パーティーメンバーを連れて行くとそれぞれの悩みについて話を聞いてくれます。とりわけガドの僧兵であるダナエとのやりとりは哲学的な話題に及んでいるので、英語でどのように表現されているのか読んでいきましょう。
練習問題の解答
『聖剣伝説 レジェンド オブ マナ』あなたは読める? 個性豊かなキャラが立つ口調のバリエーション【ゲームで英語漬け#65】解答例:真実を聞いてしまうのが怖いの。もっと苦しくなるだけじゃないかって…
Dialogue - ダナエとガイアの対話
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リュオン街道からいったん離れた後、ドミナの宿屋にいるダナエに話しかけると、主人公と一緒にガイアに会いに行くクエスト「ガイアの知恵」がスタートします。あまり立ち寄らない場所ですが、メインストーリー「エスカデ編」に連なる起点なので見落とさないようにしましょう。
ダナエは死にかけている友人を案じてガイアに知恵を求めます。この場面の会話を対訳で見てみましょう。
Gaia: Hello there, What do you wish to know?
Daena: My friend is dying from a demon’s curse.
What can I do to help her?
Gaia: Do what your friend wants you to do.
Daena: She won’t even ask me for help.
She thinks that this is just how things are meant to be!
Gaia: Then you must accept that. Do you understand what she is trying to tell you?
Daena: No, I don’t! I just don’t get why she’s giving up like this!
She was always so strong but that demon weakened her in body and spirit.
I only want to help her get back to her old self!
Gaia: People have power to make their own decisions. That is what she is trying to teach you. Listen to her words.
Daena: ...I’ll try to take a more levelheaded approach.
ガイア:こんにちは。訊きたいことは何かな?
ダナエ:私の友達が悪魔の呪いを受けて命を落としかけています。どうしたら助けてあげられるの?
ガイア:友達が望むことをしてあげなさい。
ダナエ:彼女は助けを求めてはくれないの。彼女はそれが運命だと思っているのよ!
ガイア:ならばそれを受け入れなさい。あなたは彼女の言おうとしていることを理解しましたか?
ダナエ:理解なんてできない!どうしてそんな風に諦めるのかなんて解らないわ!
彼女は私よりずっと強かったのに、あの悪魔が心身を蝕んだのよ!
私はただ以前の彼女に戻って欲しいの!
ガイア:人は自分を自分で決める力を持っている。それが彼女の伝えたいことだ。彼女の言葉に耳を傾けなさい。
ダナエ:…ありがとう…もう少し冷静になってみます。
Levelheaded:冷静な
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ガイアは難しい言葉は使っていませんが、遠まわしでつかみどころのない答えを返します。英文でガイアがよく使っているのが、“Do what ~”“Do you understand what ~”など、いわゆる「関係代名詞のwhat」です。ガイアは直接的な答えはあまり言わず、訪ねてきたものが自分で「what」が何かを考えるように諭しているように見えます。とても賢人らしい言い回しですね。
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この中で少し難しいのがダナエの“She thinks that this is just how things are meant to be!”という台詞。文章全体が三重になっていて、英語の習い初めで苦労する文の区切りが分かりにくいタイプです。
この文章は「She thinks that」「this is just how」「things are meant to be」の3部分に分解できて、それぞれ接続詞の「that」、関係副詞の「how」で後ろの文を内包しています。一見して文の構造が分かりにくいときは、継ぎ目をまず見つけて単独の文を一つずつ訳します。
“Meant to be ~”は通常「~となるようにできている」と訳しますが、時々“Meant to be”だけで止めることがあり、この場合は特別に「それが運命である」とします。海外ドラマでも一種の決め台詞のように登場するので、そのくらい強い意味が込められるフレーズなのです。「Things」はこの場合不特定のあらゆるものなので、3番目の文は「あらゆるものに運命がある」、または文脈を汲んで「全てのものはいずれ死ぬ」と訳せます。
2番目の文「This is just how」と繋げると「これ(死ぬこと)はまさにあらゆるものの運命によること」、さらに「She thinks that」の「~と彼女は考えている」と加えれば文全体の訳は完成です。自然な日本語にするにはここから文学的なプロセスが必要ですが、訳が難しいときには、まず原文に忠実な直訳を行うことが大切です。
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英語に慣れて難しい文章に当たるほど、基礎的な文法を問われる場面が多く出てきます。最近ではインターネットの辞書で簡単に用例を引けますが、体系的な書籍で手元に置きたいのが江川泰一郎「英文法解説」です。翻訳者の必読本、安西徹雄「英文翻訳術」にもテキストとして指定されているので、大学レベルの英語と翻訳を目指すならこの2冊は是非目を通しましょう。
練習問題:次の台詞を訳しなさい。
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Daena: Gaia the Earth, do you know why this world exists?
Gaia: Perhaps it is so you may think about exactly what you have just asked me.
クエスト発生時以外でダナエを連れてくると聞ける会話から。ガイアの言葉は長めですが、「so」の用法に注意しながら文を区切って訳しましょう。