10月7日に発売を迎えるオープンワールドFPSシリーズ最新作『ファークライ6』。ゲムスパ編集部のT下は、本作の情報を調べながら頭を悩ませていました。
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「どうすればこのゲームの魅力をうまく伝えられるだろう」
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すると、T下の目に“ある画像”が目に止まりました。そう、「コレクターズエディション」に同梱される、7点の部品によって構成されている組み立て式の火炎放射器「トスタドール」のハイエンドレプリカ(全長72cm)です。
あらあら、ゲームに登場する独裁者アントン・カスティロ役のジャンカルロ・エスポジートによるリゾルバー武器解説動画もあるではないですか。
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「なぜこんなに火炎放射器推しなんだろう……、あ、でもこれなら私にも作れるんじゃ?」
しかし、このコレクターズエディションは発売日にならないと手に入りません。ならば、組み立てガイドを参考に、同じような火炎放射器を自分で作ってみればいいじゃないか。T下の頭にそんな浅はかな考えが浮かびました。
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普通に考えてその辺の一般人が思いつきで火炎放射器を作れるわけがないのですが、勉強熱心なT下は、ゲームの魅力を理解するために作ってみることにしました。とりあえず○maz◯nで組み立てガイドに描かれている材料(と代用品)をポチり。
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そして、編集部の会議室にはいくつもの荷物が届きました。ガソリン用のノズル、ダスター、トーチ、ガス缶など、どれも会社の会議室には似つかわしくないものばかりです。さて、これをどう組み立てたらいいものか。そんなことを考えていると、ある不安が頭をよぎります。
「あれ、そもそも日本で火炎放射器って作っていいんだっけ?」
気になったらまず専門家に訊けばいいじゃない、ということで訊いてみました。
火炎放射器を作ってもいいのか専門家に訊いてみた
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今回相談したのは、法律の専門家であるレイ法律事務所の舟橋和宏弁護士。同法律事務所でクリエイターやエンターテインメントにまつわる法律を扱い、コミックマーケットにも参加しているなどゲーム・アニメカルチャーに明るい舟橋弁護士に、『ファークライ6』のゲーム中のように、日本で火炎放射器をDIYしてもいいのか伺ってみました。
――今回、Game*Spark編集部は火炎放射器のDIYに挑戦したいと考えているのですが、法律上問題ないでしょうか?
舟橋:火炎放射器の製造ということですと、かかわってくるのは経済産業省の所管となる武器等製造法という法律です。この中では火炎発射機という名称の武器について定められており、許可がない人は作ってはいけないとあります。なので、今回の火炎放射器のDIYがそれに当たるかを経産省に問い合わせてみました。
――経済産業省に!
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舟橋:僕もちょっと気になったので(笑)。よくホームセンターとかに売っている草焼き用のバーナーがありますので、それとの違いについて聞いてみたのですが、この法律では、戦闘目的に使う火炎投射器が駄目だということがわかりました。
逆に、仕事や娯楽、スポーツで使う目的のものは入らないとされています。例えば、メタル系のライブ演出で炎を出したりしますが、ああいうものは娯楽などの目的にあたり問題ないので、今回のように試しで自作してみようというのは一応娯楽目的とかになってくるかと思います。なので、製造自体は法律的には大丈夫となります。ただ、作ってその後に「使いました」となると、話が少し変わってきます。
実際に事件になっているものだと、2018年ごろにYouTuberさんがバーナーを作って公園で使ったら軽犯罪法で処罰されたという事例があります。軽犯罪法ではやたらと火を使ってはいけない火器乱用という決まりがありますから。ただ、処罰といっても1万円未満の科料というもので、ほかの犯罪に比べるとさほど高くはないです。
一方で銃の自作については、銃刀法で作ってはいけないという法律があるので、そちらは強い取り締まりを行なっています。
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火を出すだけのものは、スポーツなどの目的であれば作ること自体は大丈夫だけど、実際に火を出して使ったときや、物が燃えたときに軽犯罪法などで取り締まりを受けやすいのです。
例えば、家が燃えると建造物の放火となりますし、それ以外でも物には火を放ってはいけません。そこに建物とかがなくても、物を破損させたら器物損害に当たります。人が住んでいる家だけでなく、普通は住んでいるけど結果的に人が住んでいなかった家でも現住建造物放火罪という形で罪が重くなってしまいます。人が住んでいるところに火を放ってしまうと、1番重たい刑で死刑が入ってきます。人を死なせてしまうのは本当に一番重いので。
――自作自体は問題ないんですね。
舟橋:一応、武器として作るのでなければ、火炎放射器を作ること自体はセーフですが、作ったら皆使いたくなりますし、使ったときに間違って物が燃えたり物が壊れちゃったりするとまずいので、結果としてやめといた方がいいよという話ですね。
ただ警察は、本当は戦闘可能な武器にする目的や他の違反ではないかと疑って捜査することはできます。そうなるとテレビとか報道に出てしまうので、いろいろとまずくなるわけです。
――例えば、スタジアムや映画などの撮影現場で火炎放射器を使う場合であれば、実際は大丈夫なのでしょうか?
舟橋:そこは僕も気になって調べましたが、花火をはじめ、映画やライブ演出の火炎放射などは、燃え広がらないように安全性をきちんと確保した上で行っているので、法律的にもダメだとは言われにくいです。
――なるほど。安全性の確保が大事なんですね。
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――最後に、読者へメッセージをお願いします。
舟橋:火炎放射器を実際に作っても、それを使うことによって周りに与えるダメージはものすごく大きいので、基本的にはゲームの中で楽しんでもらうのが一番の形かと思います。『ファークライ6』では僕も火炎放射器を使おうと思います(笑)。
――ありがとうございました(笑)。