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突然ですが、あなたは「パラドゲー」を知っていますか。世界中で人気を誇るパラドゲーは、人類の歴史を再現した壮大な舞台設定と、政治・経済・軍事・外交・宗教のすべてを網羅する奥の深い戦略性から、高い中毒性があるともっぱらの評判です。
実はこの「パラドゲー」、日本のストラテジーゲーマーの間で頻繁に使われる俗語。もちろん海外のゲーマーにこの略称は通じません。
その正体は、Paradox Interactive(パラドックス・インタラクティブ)社製のゲームの総称。「パラドックス社のゲーム」を短くしてパラドゲーです。その人気は、名前が省略されて一種のブランドになっていることからもわかる通り。中毒性もしかりです。
この記事では、これからストラテジーに触れる方にもオススメのパラドゲーを厳選してご紹介します。今回紹介する作品はこちら。
パラドゲーと言ったらまずはこれ
『Crusader Kings III』(中世、ロールプレイ重視)
『Europa Universalis IV』(近世、外交重視)
『Hearts of Iron IV』(現代、軍事重視)
『Stellaris』(近未来、SF4Xストラテジー)
こんなパラドゲーもあったんです
『Victoria II』(近代、経済重視)
『Imperator: Rome』(古代ローマ)
『Sengoku』(戦国時代)
これもパラドゲーと呼んでいい?
『Cities: Skylines』(都市建設シミュレーション)
『Surviving Mars』(コロニー建設シミュレーション)
パラドゲーと言ったらまずはこれ
「オススメするならまずはこれ!」という現役バリバリの作品を紹介します。最初にどれをプレイするか迷ったときは、興味のある時代や舞台を選ぶのがオススメです。筆者が独断と偏見に基づいて判定した難易度も併記しました。
『Crusader Kings III』
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舞台:ヨーロッパとその周辺
難易度:★★★
日本語:有志日本語化あり
中世の領主となって一族の繁栄を目指す、ロールプレイング要素の強いストラテジーです。舞台はヨーロッパとその周辺。時代はヴァイキングが活躍する9世紀から、十字軍の時代、モンゴルの襲来を経て、中世が終わる15世紀までをカバーします。
一族を繁栄させる方法は戦争で領地を広げるだけではありません。血縁関係が重視される中世では政略結婚や暗殺も重要です。封建社会の上下関係もしっかり再現されていて、時には暴君に対する反乱や野心的な家臣の統制が必要になることも。
ゲームデザインはキャラクターの性格を演じることを重視しており、その分ストラテジーとしての難易度は低めに設定されています。初心者向けのキャラクターでプレイすれば、すぐにゲームオーバーになることはないでしょう。
パラドゲーとしては本記事執筆時で最も新しく、洗練されたインターフェイスは初心者のプレイを助けてくれます。
『Europa Universalis IV』
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舞台:世界全体
難易度:★★★★★
日本語:有志日本語化あり
プレイヤーが操作するのは人ではなく国。初めて地球上の国々が互いに結びついた大航海時代を背景に、外交を駆使して自国の繁栄を目指します。舞台は文字通り世界全体。時代は大航海時代の始まる15世紀から、宗教改革、絶対主義の時代を経て、市民革命の嵐が吹き荒れる19世紀初頭までをカバーします。
全世界を網羅するマップには当然日本が含まれ、選択可能な国の中には有名な戦国大名も入っています。開始日を1日単位で設定できるので、織田信長が天下統一に成功して海外に進出していたら……そんな歴史のIFも楽しめます。
発売から9年を迎える本作は、これまで何度もルールが拡張されてきました。そのため、最初は少し全体像がつかみにくいかもしれません。ですが、奥の深さは折り紙つき。数千時間プレイしたベテランプレイヤーでも知らないことがあると言われるほどです。
パラドゲーの源流とも言えるシリーズで、ストラテジー好きならぜひ一度はプレイしておきたい作品です。
『Hearts of Iron IV』
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舞台:世界全体
難易度:★★★★
日本語:有志日本語化あり
操作するのは同じく国家。総力戦となった第二次世界大戦を背景に、あらゆる国力を総動員して自国の運命を導きます。舞台はこちらも世界全体。時代は第二次世界大戦の前夜から、大戦を経て冷戦が始まる直前までをカバーします。
当時の大日本帝国は大戦の行方を左右する主要国の一つとして登場。戦略を駆使すれば、歴史の“さだめ”を変えて超大国アメリカに勝利することも可能です。しかし、そのためにはプレイヤー自身が現実の歴史を学び、なぜ負けたのかを知らなければなりません。
第二次世界大戦が舞台なので、一番重視されるのはやはり軍事です。多くのパラドゲーは標準でマルチプレイに対応していますが、本作は戦争が中心でプレイ期間も短いため、他の作品よりもマルチプレイに適しています。
日本で一番プレイ人口の多いパラドゲーなので、初心者向けの情報もネット上で豊富に見つかります。
『Stellaris』
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舞台:銀河全体
難易度:★★★
日本語:有志日本語化あり(コンシューマー版は公式日本語対応)
時代は現代を飛び越えて近未来にワープします。舞台は一気に銀河系レベルにまで拡大。プレイヤーは宇宙に進出したばかりの一種族を率い、宇宙の神秘を解明しながら銀河系の支配を目指します。
本作のジャンルは4Xストラテジー。4Xとは、未知なる領域の探索、自勢力の領土の拡張、拡張した領土の開発、敵対する勢力の殲滅の4つの要素を兼ね備えたストラテジーのことで、Xを含む4つの英単語で表されるので4Xと呼ばれます。
これまで紹介した作品と違い史実とは無関係ですが、多様な政府形態が登場するなど、歴史ストラテジーで培われたノウハウがふんだんに投入されています。SF要素も充実しており、随所に他のSF作品へのオマージュが見られるのも特徴です。
公式日本語対応のコンシューマー版もあり、パラドゲーの入門に最適。アップデートを重ねるたびに、まったく別のゲームへと進化することでも有名です。
こんなパラドゲーもあったんです
今は現役を退いたパラドゲーの中から、知る人ぞ知る作品をピックアップして紹介します。初心者向きではありませんが、「こんな作品もあったのか!」と興味を持った方はぜひ一度プレイしてみてください。
『Victoria II』
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舞台:世界全体
日本語:有志日本語化あり
科学技術が人類社会を劇的に変えていったヴィクトリア朝時代を背景に自国の繁栄を目指す、経済に主眼を置いたストラテジーです。舞台はこちらも世界全体。時代は産業革命が世界中に広まり始めた19世紀半ばから、列強の世界分割を経て、世界大戦に至る20世紀半ばまでをカバーします。
日本では幕末から明治維新を経て、日清・日露戦争、そして第一次世界大戦を経験する時代にあたります。日本でプレイすれば、明治維新で社会の近代化を進め、鉄道や官営工場を建設して富国強兵に努め、列強の仲間入りをする過程を追体験できます。
海外でも人気が高く、長らく「『III』はまだか?」と続編が期待されていました。そして昨年、ついに続編となる『Victoria 3』が発表され、現在開発中です。ファンの間では発表直後から、早くも「『4』はまだか?」と冗談が飛び交っています。
『Imperator: Rome』
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舞台:古代ローマとその周辺
日本語:有志日本語化あり
紀元前のヨーロッパを舞台に、古代国家間の覇権争いを描いた作品です。時代はアレクサンドロス大王が死んだ直後の紀元前4世紀から帝政ローマが成立する紀元前1世紀。タイトルの通り、ゲームの核となるのは古代ローマですが、ゲーム開始時のローマはまだイタリアの一部を支配する小国に過ぎません。
本作『Imperator: Rome』(インペラトル・ローマ)は日本のファンの間で通称「インペロ」と呼ばれて親しまれています。比較的新しい作品ですが現在では開発が終了しており、ファンの間では引退するプレイヤーを引き止める言葉「インペロから逃げるな」がネットミームになりました。
『Sengoku』
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舞台:日本
日本語:公式日本語版あり(有志日本語化なし)
その名の通り、舞台は戦国時代の日本です。あまり知られていませんが、パラドゲーにも日本を単独で舞台にした作品があったのです。発売されたのは10年以上前で、公式日本語版も発売されていました。現在、日本語版は入手困難になっています。
ゲームデザインは『Crusader Kings』シリーズに近く、その志を受け継ぎ日本の戦国時代をプレイできるようにするModが『Crusader Kings II』と『Crusader Kings III』で開発されています。
これもパラドゲーと呼んでいい?
一般的にパラドゲーと呼ばれるのは、Paradox Interactiveの社内開発スタジオであるParadox Development Studioの作品だけです。この基準では、これまでに紹介した作品はすべてパラドゲーに分類されます。
一方、Paradox Interactiveはパブリッシャーとしても活動しています。そのパブリッシング作品をピックアップして紹介しましょう。
『Cities: Skylines』
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日本語:有志日本語化あり(コンシューマー版は公式日本語対応)
パラドゲーという言葉を知らなくても、この作品を知っている方はいるかもしれません。都市建設シミュレーションの分野ではかなり知名度の高い作品です。デベロッパーはColossal Order。公式日本語対応のコンシューマー版も存在します。
最大の売りは、自由度の高さとユーザーが作成した豊富なMod。シミュレーションとしてプレイするだけでなく、箱庭的に都市の景観を作って遊ぶこともでき、ベテランユーザーが創った都市は実在の都市と見間違えるほどです。
『Surviving Mars』
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日本語:有志日本語化あり
火星を舞台に限られた資源で生存環境を構築するコロニー建設シミュレーションです。デベロッパーはHaemimont GamesとAbstraction Games。最近、滅亡後の世界を舞台にした『Surviving the Aftermath』も発売されました。
火星なので、建物のデザインなど至るところにSF要素が登場します。本作の特徴は、その世界観が普段私たちが考える近未来像ではなく、昔のSF作家が考えていた近未来像(レトロフューチャー)で統一されていることです。
パラドゲーの世界へようこそ!
最後に、パラドゲーを語る上で欠かせない要素を紹介します。それは世界中のユーザーによって制作されているMod(ゲーム改造)です。ユーザーコミュニティを重視するParadox InteractiveはMod制作を積極的に推奨していて、人気のあるModをゲーム本体に取り入れることがあるほどです。大型のModをいくつかピックアップすると……。
こちらの記事では戦国時代Modを実際にマルチプレイで遊んでいます。パラドゲーのModやマルチプレイに興味のある方はあわせてお読みください。
無限のドラマがそこにある!たった3時間でもマルチで遊んだストラテジーはこんなにも面白くなる【特集】
他にも紹介しきれないほどの力作Modが公開中で、ゲームの遊び方を広げるのに一役買っているのです。この無限の可能性こそ、パラドゲーの真の魅力と言っても過言ではありません。あなたもその世界に足を踏み入れてみませんか。