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『ELDEN RING』はフロム・ソフトウェア謹製とも言うべき『ダークソウル』系の後継的な作品として登場し、過去最大級のヒットを成し遂げました。
「オープンフィールド」であるという要素は、シリーズの中でも特別です。そして、これこそが最も成功に貢献したブレイクスルーだと感じます。その難度・クセの強さから批判的な意見を呼び起こすことは否めません。シリーズ特有の大味な部分も残されてはいるものの、そうした面を含めてもとてもよくできていて、贅沢な作品であることは疑いようもないでしょう。
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このレビューは様々な理由により、大きく遅れてお届けすることとなりました。いまさらひねくれた評価はせず、★★★であることはまず申し上げた上で、冷静に分析をしたレビューをお届けしたいと思います。
レビュー本文でも触れますが、本作の複雑でミステリアスな世界設定については深く考察を行いません。もとい、筆者は一周程度しか遊べておらず、そうしたナラティブ面での考察を「行えない」のが実情でもあります。
本稿は、これから遊ぼうとする新たなプレイヤーに向けたレビューにしたいという意図もありますので、大きなネタバレは含みません。筆者は本作の抱える可能性が時として苦しさを生みかねないと感じており、レビューを通じて無理のない範囲で和らげていければと考えています。
『ELDEN RING』とダークソウルシリーズ
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まずは『ELDEN RING』がどういった作品か改めておさらいします。フロム・ソフトウェアが生み出す「歯ごたえのある」作品で、よく難しいと言われるシリーズの最新作です。
シリーズといっても本作は単体のIPであり、『ダークソウル』シリーズとは明確に異なります。ただし、作風は「普通に続編では?」と思う程には共通したシステムの土台を整えています。
難しさから人を選ぶ印象を受けてしまいがちですが、主要なアクションやRPGシステムそのものはシンプルです。敵を見つけ、攻撃を回避し、スキを見て反撃を当てる。敵を倒し、経験値やアイテムを集め、少しずつ強化していく。特殊な「新システム!」といったものは、意外と思いつきません。このあたりも『ダークソウル』シリーズと共通しています。
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フロム・ソフトウェアの作品は一貫して、世界設定がよく練り込まれていることが挙げられます。その世界の宇宙範囲を含めた原理から練り上げたような作り方をしていて、考察のしがいがあるのです。
しかしながら、明確にプレイヤーへ語られない範囲も広く、考察以上の確証を得られないもどかしさも残ってしまうのが特徴です。練り込まれていることは伝わってくるけど、最後まで何だったのかよく分からなかった……なんてことも珍しくはありません。
本作をひとことで説明してしまえば『ダークソウル』シリーズにオープンワールドを付加し、「あそび」をうまく確保した作品だと言えるでしょう。
「ダークソウル系」が重ねてきた印象
『ELDEN RING』が「ダークソウル系」の流れを強く汲んでいるので、それがどういったシステムなのかをかいつまんで紹介します。
プレイヤーは強敵がうろつくフィールドを探索し、敵を倒して経験値を得たり、アイテムを獲得しつつ進行します。ザコ敵でも油断すれば一瞬で倒されてしまうような強さを持つので、じっくりと進めていく必要があるといったデザインです。
また、回復方法が厳しめに絞られており、はじめのうちは回復薬を数回しか使えません。道中にはチェックポイントがあり、ここで休息すると回復薬の使用回数がリセットされるという「半消費的アイテム」をベースにしています。しかしながら、チェックポイントを経由すると配置されていた敵が復活してしまうのです。
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レベルアップなどで経験値を消費せずに道中でやられてしまうと、その場で失ってしまいます。ですが、チェックポイントから再開して、倒されずに同じ地点まで辿り着ければ回収できる救済措置があり、これが挑戦と慎重さという形で緩急を生んでいます。
一見すると攻略できそうに思えない強烈なボスたちが配置されているのも大きな特徴です。しかしながら、何度も挑んでいるといつの間にかクリアでき、その達成感がプレイヤーを病みつきにさせます。
とは言えその難しさから受ける「玄人感」とは裏腹に、挑み続けていれば誰もがクリアできるという事実から、シリーズへの印象は「恐れず楽しんでよい作品」であると少しずつ変化してきていると言えるでしょう。
『ELDEN RING』の話題性
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発売前から「オープンフィールド」の採用が示されており、これまでの暗く狭いイメージに結びつかなかったことから、様々な憶測を呼び起こしました。満を持して発売されてみれば、その結果は単体タイトルとして見るとシリーズ最大の販売本数を達成するに至りました。
これまでと比較しても幅広いプレイヤー層へリーチしたタイトルだと感じます。シリーズが積み上げてきた「難しいけどじっくり取り組めば誰でも楽しめる」という評価が実を結び、売上につながったのではないでしょうか。
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一部のプレイヤーしか楽しめなさそうという印象は確実に薄れ、想像以上に「あそび」のあるタイトルです。SNSを眺めれば、キャラクタークリエイトの多様性だけでも楽しめます。
本稿の主張のひとつとして「攻略の幅広さもかなりのもの」というものがあります。条件が整えば、難敵中の難敵とされるボスキャラも一瞬で倒せてしまう場合もあり、その意味でも「あそび」の広さが確保されています。オープンフィールドの採用がこの実現を大きく後押ししているのです。
やや堅苦しい印象が尾を引いていたシリーズでしたが、『ELDEN RING』は様々なプレイヤーから遊び倒される「愛すべきゲーム」へ昇華した、と評価して差し支えないでしょう。
『ELDEN RING』の分析について
ここまでで、シリーズ未経験の方に向けて全体像をおさらいしました。レビューでは『ELDEN RING』の全てを分析し尽くすことはできません。それどころか、評価する範囲はごく一部であるとも言えます。
まず、ストーリーや世界設定に関する考察はあまり含めません。明確に答えを提示しない設計となっており、断定的に評価できないためです。また、筆者はストーリーを1周しかしておらず、実質的に触れられる情報が少ないのも大きな理由となります。
『ELDEN RING』はその売れ行きが示す通り、とても遊びがいのある作品です。このレビューでは、本作がどのようにプレイヤーへ課題を投げかけたのかをまず俯瞰します。次に、そうした問題の歯ごたえを実現したまま、どのような解決法を用意したのかに着目します。そして、過去のタイトルとの差異を比較する中で、本作が達成した強みを抽出していきます。
その後は少し脱線し、筆者本人の体験から逆算して、プレイヤーが陥りがちな「楽しめなさの罠」を探ります。ゲームへの取り組み方を見直しつつ、『ELDEN RING』が抱えている課題をすり合わせ、これから新たに挑もうとするプレイヤーへの指針の提示を試みます。
レビューを通じ、『ELDEN RING』の楽しさを幅広く駆け抜けるための、その一助となれば幸いです。
筆者の環境はPC版で、バージョンは1.02.3(最初のメジャーアップデートよりも前)、マウスとキーボードでのプレイで、1周までのクリア時間はおよそ90時間でした。いわゆる「一番到達しやすい無難なエンディング」を迎え、多くの要素に気づかず通り過ぎてしまったままという状況であることを付しておきます。
クリアまでの軌跡
1週90時間というプレイ時間は、一般的な作品と比較してもかなり長いものです。個人的な攻略の巧拙はさておき、中盤以降は「とりあえずクリアを目指したい」と一気に走り抜いてしまいました。正直なところ、『ELDEN RING』を遊ぶことへの疲弊も理由のひとつです。
『SEKIRO』を経験したことから、敵の攻撃行動を覚え切って通常攻撃で反撃できてからが『ELDEN RING』のスタートだと、筆者は思いこんでいました。フィールドやダンジョンに関わらず、登場した敵へ愚直に挑み続けていたのです。
実際のところ、その方法でラスボスまでクリアしようと思えば可能です。そうした敵の絶妙なモーションデザインが実現されていることもあり、「それこそが王道の攻略法なのだ」とばかりに、それだけで進めていってしまったのです。
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探索が甘かったこともあり、しばらく新しい武具を発見できず、その辺の兵士が落とした普通の剣を持ち、ほとんど裸で突き進んでいました。装備を強化できることは知っていましたが、細かい条件が分からず「きっとエンドコンテンツ的な要素なのだろう」と即断し、ノーマルの剣一本で中盤まで進めました。
当然ながら、ボスに掛かる時間は右肩上がり。弱い武器をカバーするため筋力に振り続けた結果、どんな敵だろうとこちらが一撃で死亡する上、戦技や遺灰の存在が頭から抜け落ちていた始末だったので、ゲームレビュワーとしてはかなりのポンコツだったことは否めません。
「ゲーム内の導線」に従った結果、さっそく強力なボスに敗北し続ける姿がネット上でも次々と報告されていました。今までの作品で最も難しいのではないか……とつぶやくプレイヤーも珍しくなかったかと思います。脳筋だったのは筆者だけではなかったんです!!
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あるときはSNSで流れてきた戦技の強さに驚愕し、さっそく次に出会ったボスで試し打ちをしたところ、初対面で撃破するという体験をしてしまいました。それ以降、筆者の中の『ELDEN RING』は“モーション覚えの反射神経ゲーム”から“上質なアクションRPG”へとゲーム体験が変化したのです。
それまでの疲弊が強かった反動からか、終盤はザコ敵を無視して攻略を優先するようになってしまったのですが、筆者ほど極端ではないにせよ、同じような苦しさに陥りがちな構造があるかもしれません。
フロムゲーは「蹴落とす」ゲームか?
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フロム・ソフトウェアの作品群には、プレイヤーを蹴落とすようなゲームデザインが施されているとは考えていません。ひとつひとつの要素を丁寧に見ていると、無理が生じる手前までにきちんと収めているという確証を得られるはずです。
フロムが意地悪なボスを登場させてきた……とはじめのうちは思っても、実は弱点がきちんと用意されていたり、「もうお見通しだ」と言えるほどにはそのモーションを把握できるように設計されています。
これはボスとの戦闘に限らず、ダンジョンや謎解きの攻略でも同様で、他にやりようがないように見えて、実はシンプルに乗り越えられたり、多彩な方法を採用できたりと「明確な設計の一線」が見て取れます。
寄り道をするとほぼ間違いなく何かしらの拾い物ができたりと、探索が無駄にならないところもよく出来ていると思います。また、ひたすらレベルアップのために周回を要求されるといった作業的な場面が極めて少なかったのも、個人的には非常に良い印象でした。
『ELDEN RING』が用意した問題とその解決
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それでは『ELDEN RING』にはどのような特徴があるのかを振り返りながら、評価していきましょう。
これまでの『ダークソウル』シリーズや『SEKIRO』などと並べて比較すれば、本作は最も遊びやすいタイトルだと感じます。「祝福」と呼ばれるチェックポイントや、ダンジョン内のショートカットが無理なく配置されていて、かといって易しすぎることもなかったからです。
想像以上にステルスで切り抜けられる場面も多かったですし、強引に駆け抜けてしまうことも可能です。筆者はこれまで『ダークソウル』シリーズを購入しては挫折することも多かったのですが、いろいろ苦しくても最後まで『ELDEN RING』を楽しく走りきれたのは、これらの要素に助けられたからだと感じています。
反面、ボスの強さはSNSでも議論を呼ぶほど極端な部分がありました。性能的にかなり強い主人公を操作する『SEKIRO』で登場するボスよりも、激しく強く暴れる敵が登場したときには頭を抱えたものです。
それでも、『ELDEN RING』は攻略の幅広さと楽しさをきちんと確保した素晴らしい作品に仕上がっていると感じます。
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ゲーム性から少し外れますが、世界設定の分かりにくさもかなりのものです。作り込みの深さは本作でも発揮されていますが、よほど注意していなければ気づくことすらできない内容がかなり存在します。
アクション要素を無理のない範囲に収めた反面、こちらについてはやりすぎだと思うほどです。シリーズ特有のものだと言われてしまえばそれまでですが、この点は本作でも強烈でした。しかしながら、後述の構造によりそれらも強い価値として昇華されています。
問題のシナジーがプレイヤー層を拡大させた
『ダークソウル』シリーズ関連の作品群が、少しずつ「安心して挑んで良い」印象を積み重ねたことは冒頭の通りです。
それでも、どこかで手詰まりを起こし「挫折」してしまいかねない厳しさがありました。そこにオープンフィールドという要素が加えられ、これが本作の優秀な潤滑剤としての役割を担うこととなったのです。
まず本作のプレイヤーなら誰もが感じるであろう、手詰まりと後回しの関係性があります。わざとらしく示される序盤の「筋道」は、強烈な壁にぶつかるよう誘導されていました。これまではその壁をどうにかして攻略しなければいけなかったのですが、オープンフィールドを採用したことで、いったん後回しにするという選択肢がプレイヤーの手元に授けられました。
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一般的なRPGのように、単にレベルアップ作業をして舞い戻ることも可能です。しかし、圧巻だったのは「探索で寄り道すれば何かが手に入る」を、オープンフィールドでも随所に実践してみせたことです。
『ELDEN RING』は、単に広さや攻略時間という意味だけではなく、アイテム数・敵の種類・武具のバリエーション・それに伴うモーション類・戦技や魔法の多彩さ・遺灰で呼び出せる者の特有の動き(・そしてなかなか見えてこない世界の謎の片鱗)……などなど、要素のボリュームも一級品です。
この「多彩さ」は攻略方法それ自体にも存在していて、大きな壁そのものを後回しにしたり、場合によってはすっ飛ばしてしまうことも可能だったりします。
壁につまづいたプレイヤーが、いったん別のエリアを旅してみようと足を向けると、意外な宝物に出会ったり、種類の異なる難しさを体験するに至ります。結果として、レベル的なキャラクター性能だけではなく、行動の多彩さを獲得し、気がつけばプレイヤー本人の「慣れ」も多角的に積まれることになります。
気晴らしで「壁」の攻略を先延ばしにしていたつもりが、気がつけば全然違うエリアを攻略してしまっていた……なんてことも起こるほどです。プレイヤーによって攻略する順序はだいぶ変わってくるのではないかと思います。
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メインの後回しとしてオープンフィールドを探索する……という構造があったからこそ、『SEKIRO』よりも激しいボスたちを実装したり、更に読み取りづらい謎を仕込めるようになったのではないでしょうか。
通常ならばそうした「難化」は、より人を選ぶタイトルに尖ってしまうはずです。本作はいくつかの具体的な場面を除けばトライアンドエラーの余裕が大きく、別の楽しみが他にもある……と常に思える構造なので、途中でクリアできなくなるかもという不安が結果的に抑えられたのではないかと考えています。
でも一度折れたよね?
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オープンフィールドによるシナジー効果を綴ってきましたが、いやいやお前中盤で心が折れてるじゃん……という問題がありました。
改めて自身を分析してみると、「モーションを覚え切ってからがスタート」という思い込みが強すぎたことが原因だと思います。その上で、ごく序盤で手に入る戦技・戦灰は使ってみると少し変わった動きをする地味な体術のようにしか見えず、そのときはあまり魅力を感じられませんでした。
これはオマケみたいなものなのだろうと何故か結論付けてしまい、それでも通常攻撃だけで強敵に勝ててしまうのも事実で、これが厄介なことに「玄人向けなゲームを解く」という強烈な達成感につながってしまったわけです。人間には限界がありますので、そうした無理を通して長時間遊んでいれば疲弊してしまうのは当然です。
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終盤に差し掛かる頃、はじめて「特殊な斧」を拾いました。
プレイヤーなら誰もが知ってる強力な戦技を持つ装備なのですが、入手も特に難しいものではないのに気づけませんでした。それまでのノーマルな未強化の剣から乗り換えた時の「ゲームが変わっちまったよ」という感動は、筆者に「うまく自分で難易度調整をしていこう」という反省を促すに至ったのです。
ネット上の感想を眺めていると、同じように「きちんと探索してから挑めばよかった」とつぶやくプレイヤーをたくさん見かけました。筆者については反省ばかりですが、気づけるまでの体験が長くなりがちだとも思います。
思い込みとこだわりは楽しむ可能性を狭める
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今回、レビューとして筆者の個人的なプレイ状況を強めに記したのには理由があります。
前述のように、敵を見切った戦闘こそが『ELDEN RING』本流の攻略なのだと思い込み、探索に目を向ける考えが薄くなっていました。また、戦技のような特殊攻撃は「本当の攻略じゃない」といった感情で凝り固まっていました。
これらはすべて、筆者自身の悪い思い込みとこだわりだと言わざるを得ません。
ですが、本作は実際には選択肢が豊富に用意されています。それはSNSを眺めてみるだけでも明らかです。攻略だけではなく、仮装大会かと思うほど豊かなキャラクリエイトの自由さ、魔法・戦技・戦灰そしてマルチプレイまでを含めると、もはや別のゲームのようになる幅広い要素など……結局はこれらを利用して自分で難易度を調整していくくらいの遊び方が丁度良いのだと思います。
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これらの豊富さについては、過去の『ダークソウル』シリーズ周辺の中でも群を抜いていて、プレイヤー層の広さがそれを物語っています。思い込みやこだわりに囚われることなくじっくりと遊んでいくのならば、一周だけでもかなりの時間あそべるはずです。
広いフィールドで見つけたものをとにかく色々と試して、こんなこともできる、あんなこともできる……と立ち止まる余裕を持っていれば、『ELDEN RING』は豊かな体験を与えてくれるに違いありません。
商業レビュー記事を作ろうとする上で、原稿執筆の速さを最優先としないよう自戒する気持ちを保っていたつもりでしたが、本作での体験は筆者にとって本当の遊び方を見つめ直す機会となりました。
また、これも筆者の大きな反省点のひとつとなりますが、メインシナリオの攻略を焦らず、ぜひ本作に登場するNPC達を注意深く観察して欲しいと思います。ここで深くは語れませんが、そのときは分からなくとも、かならず意味が込められているからです。
まとわりつく判断しがたさ
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オープンフィールドの採用によって増した魅力について評価してきました。『ELDEN RING』の難しいところは、その魅力が同時に判断しがたい部分を抱えていることにあります。
難解な世界設定を含めて、それ自体が探索への価値を内包しているものの、その分かりにくさの大半は「そもそも気づかない」ところにあります。見方を変えれば、これは長くじっくりと遊ぶプレイヤーにとっては尽きない魅力にもなるので、良し悪しとして簡単には語れません。
全く関係なさそうな場所で、物語の中心には出て来ないような、それでいてちょっとした背景だと思っていたものが、よく見ればしっかり共通して描かれていた……という演出がとにかく随所に存在しています。
ここでネタバレは回避しますが、その「共通して描かれる」ものは内部ステータスにまで及んでいることもあるほどです。その土地に関する(これも普通にプレイしているとそもそも気づかない)呪いのようなものがあるとして、近くにいるザコ敵に関連した攻撃を行うと、そのザコ敵にだけ反映される……といったような始末です。
丁寧な制作であると言えばそれまでなのですが、ナラティブ面はメイン要素であるELDEN RINGの存在についても終始そのような感じなので、ラスボス到達後に「何にもわからねえ!」となってしまうプレイヤーも続出したことでしょう。
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筆者の探索力が弱かったことへの言い訳にもなってしまいますが……
用意されている多様性の存在に、プレイヤーが気づくまでの道のりが遠いという問題があります。ステータスの意味などはシリーズ未経験者では訳が分からないでしょうし、全体を通した難しさから「ステータスくらいの基本的なことは失敗したくない」と思うプレイヤーが出るのは無理からぬことです。
色々試せる間口の広さという意味では、『ELDEN RING』が最も確保されているだけに、やはりこちらも判断が難しいと感じます。発売後に「ゲームを始める前に知るべき5つのこと」「ゲーム序盤のヒント」といった公式サイトの情報ページが掲載されるといったフォローが行われていますので、筆者自身の反省も含め、ある程度の攻略情報も楽しみながら遊ぶのがよさそうです。
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やりすぎなくらいミステリアスにした要素は、その気づかなさが仇となることがあります。
それは「魅力を狙ったわかりにくさ」なのか「単にミスったわかりにくさ」なのかを判断できないという問題に繋がります。
直近で目立っていたのは、50回ほど壁を殴ると現れる隠し通路というバグがありました(現在は修正されています)。実際は不具合だったのですが、これについても『ELDEN RING』の演出としてならありえるだろうと普通に思えてしまうほどなのです。
意外にも多い登場人物たちについても、イベントのトリガーが極めてわかりにくく、そうしたナラティブを取りこぼしたくないタイプのプレイヤーにとっては苦痛かもしれません。ほぼ全ての人物が意味深なことしか言いませんし、ちょっとした外見の一部や状況証拠から推測しないと分からない(それも断定できない)ようなことばかりです。
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もちろん、それらは時間を掛けて解き明かすという大きな価値があります。そうしたミステリー要素は周回しながらじっくりと解き明かしていきましょう。アクションだけでも長く遊べるその上で、「遊び方」を切り替えて更にプレイできるのだと考えれば、作品のプレイバリューは十分すぎると言えます。
しかしその上で、わかりにくいNPCイベントの一部が進行しないバグなども確認されていました。こうなると、いちプレイヤーとしては「狙ってる」のか「ミス」なのか判断しようもありません。そのようなこともあるのだと、ドライに捉えることも必要かと思います。
いずれにしても、これらの謎要素はオープンフィールドによって、より複雑に仕込めるようになりました。簡単すぎれば周回プレイへの魅力は薄れてしまいますし、複雑にしすぎれば誰もついてこれなくなります。判断のしがたさがまとわりつくのは「絶妙なバランスの重心を突いた」結果なのかもしれません。
もったいないところもちらほら
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ミステリアスと捉えるには不便過ぎると思えてしまう部分もあります。とはいえ、UIや配置の問題が主なものなので、致命的なものではありません。
マップのUIは検討の余地があると感じています。筆者はマウスとキーボードでのプレイだったのですが、マップカーソルはWASDでしか移動できず、祝福をマウスカーソルでは選べませんでした。ですが、祝福一覧のリストはマウスカーソルで選べるなど、UIのクセが強い印象です。
はじめは明らかではないマップの全体像も、フィールドに置かれている地図を拾うことで開放されていきます。この地図の位置がマップ上の小さいアイコンで示されているのは丁度よい調整だと感じました。全体を貫くミステリアスさと比較すると、これについては譲歩側の要素だったのではないでしょうか。
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ステータス異常に関する情報が少なかったのも気になりました。とある条件下で、いつのまにか体力の最大値が常にちょっとだけ減っている、なんてものもあり(個人的にこれは面白かったです)説明は意図的に少なくされていたのだと思います。
これもミステリアスさのひとつと捉えても良いのですが、通常の攻略の上では強烈な状態異常になると、結局は何かを把握する前に死んでしまい、どれも一緒のように思えてしまうもったいなさがあります。
もちろん、しっかり突き詰めていけば対策もできますし、敵に対しても効果的に使えるなど、主要な攻撃方法のひとつとして採用できるポテンシャルは十分に秘めています。こちらについても気付きにくい要素かもしれません。
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一部のボス戦で、リトライまでの移動が長すぎる部分がありました。シリーズと比較すると全体としては少ないのですが、何度も長い道を走らされるのは苦痛です。多くのNPCと共闘できる大型ボスのステージは特に顕著だったかと思います。
このボスはステージそのものが広く、ボス自身が巨大な上に高速で移動するので、一種お祭りのような楽しさがあるのですが、グリッチ的な方法で倒せてしまったりと粗の多い印象でした。
シリーズでも珍しくJRPGを遊んでいるような楽しさの盛り上がる部分なのですが、やはりそれまでのNPCイベントに気付きにくいことから、プレイヤーによっては「あなたたち誰?」となってしまいかねないと感じます。
喜び、怒って、楽しかった
何時間も挑んで倒せないボス、ちょっとしたミスで招かれる死、思わせぶりでスキのない嫌らしいモーションなど、長いプレイ時間の中で筆者はめちゃめちゃキレてる場面がけっこう……いや、かなりありました。
その反動のように得られる撃破した時の達成感は、さすがフロムゲーと叫ばずにはいられません。イライラすることも、すんごいキレてることもありましたが、面白くないゲームならばそもそも心は動きません。
これらの達成感もキレそうになるのも、結局は『ELDEN RING』が持つ質の高さが呼び起こしたものであることは間違いありません。ミステリアスさとわかりやすさを数直線上の左右に置いた時、その実装をどこに落とし込むのかという挑戦は、総合的に見れば高い要求を見事に満たしたと言えるでしょう。それは、売れ行きと幅広いプレイヤー層が証明しているのではないでしょうか。
これだけのレベルの高いことを達成しようと思えば、うまく落とせなかった要素が出てきてしまうことは当然とも言えます。魅力だと判断しがたかったり、もったいない部分についても、あくまでその範囲に入るという程度のものです。
『ELDEN RING』はオープンフィールドの採用により、落とし所のスイートスポットそのものを広げました。これは明らかに、シリーズにとってのブレイクスルーです。
一周90時間という冒険を終えてなお、実は筆者のマップはすべての開放が済んでいません。後半を急いでもこれならば、丁寧な進行で簡単に3桁時間のボリュームに到達するはずです。
遊びながら「まだあるのか!?まだ広がるのか!?」という喜びは、楽しい冒険という衝撃として記憶に残りました。どうか、これから遊ばれる新しいプレイヤーの皆様は、腰を据えてじっくりと、様々な可能性を試す余裕を持ちつつ、登場するキャラクター達の個性を楽しみ、厳しい世界へと飛び込んでいただければと思います。
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『ELDEN RING』はアクションRPGとしてのシンプルさを軸に置きながら、丁寧にボリュームを積み上げていけば勝負できる、と改めて世に示したタイトルでした。それらのボリュームは一見して地味ですが、それぞれがオリジナリティを強く持った贅沢な構成だと言えます。
全体としては大味な印象を残す作品ではありますし、後半のボス構成に辟易することもありましたが、それは筆者の悪いこだわりを叩き壊し、楽しむ心を修復するのには、良いきっかけだったのかもしれません。
良い点
シリーズ最高峰の圧倒的ボリューム
シリーズ最高峰の圧倒的な幅広さ
挑戦と報酬が散りばめられていて、体験も色彩も豊かなフィールド
自分で調整できる柔軟な難易度調整
徹底して練り込み、徹底して詰め込まれた、探すに値する謎の数々
悪い点
多彩さに気づき活用できるまでの導線が長い
拭いきれない大味な構成
ユーザビリティの欠如とナラティブの説明不足が混濁している