THQ Nordicは、Purple LampとGolemLabsが手がけるシミュレーションゲーム『The Guild 3』を、PC向けに2022年6月15日に正式リリースしました。
本作は、中世ヨーロッパを舞台に交易や商売、政治などを行いながら一族の繁栄を目指す人生シミュレーション。2002年発売の『Europa 1400:Guild』の系譜を受け継ぐシリーズ最新作で、2017年から始まったSteam早期アクセス期間を経てついに正式リリースされました。
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本稿では『The Guild 3』のプレイレポートをお届け。自分だけの一族の系譜を自由に作り出せる、本作の魅力を紹介していきます。
『The Guild 3』はどんなゲーム?
『The Guild 3』の舞台となるのは、1400年のヨーロッパ諸国。ゲーム内ではロンドンやワルシャワ、パリなど13の都市が用意され、自由にルールを設定してゲームプレイが可能です。しかし、本作は一族の系譜を歩み続ける作品のため、非常に要素が豊富なので、まずはチュートリアルをプレイしましょう。
チュートリアルシナリオ「卑しい生まれ」では、プレイヤーは街外れの村で生活する平民の一人となり、街で暮らせる「市民」としての権利を得るのが目標です。まずはプレイヤーの作成です。名前、見た目、宗教、能力、一族の紋章(カラー)などを決定します。以降は一族の人間を選び、行動を指示することでゲームを進めていきます。
本作のチュートリアルは親切で、ゲーム内での序盤の基本となる要素をしっかりと目標立てで指示してくれます。プレイヤーは初期から自身の住居を持っていますが、そのままではお金を稼ぐことはできません。そのため、まずは一族のお金稼ぎの基礎となる事業所を設立しましょう。最初に制作できる施設は、プレイヤー作成時の職業で異なります。
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商売の基礎を学んだ後は、一族を存続させるための「恋愛」「結婚」「子作り」、事業を成功させるための「宣伝」などを学んでいきます。「賄賂」「他の一族への攻撃」と言った、この世界で生きるために大切な行動をしっかり教えてくれるのも親切です。
商売で稼いだお金は事業の拡張に使用するほか、「農奴」の身分から始まったプレイヤーランクを上げるためにも必要です。目標となる「市民」になるためには一定以上の影響力も必要です。最終的には市民となり、街の議員となる辺りでチュートリアルは終了します。
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なお、本作は操作可能な1日と、その後自動で経過する年単位の時間(経過年数はプレイヤー自身が設定可能)をあわせて「1ラウンド」とした単位で進行していきます。あっという間にプレイヤーキャラクターが年を取っていくので気をつけましょう。
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街で生き抜くコツは人々との関係を良好にすること!
ゲーム本編では、勝利条件や登場する他の一族の数、出自や難易度などを自由に決定できます。プレイヤーの職業も農家や漁師、職人などはもちろん、墓守や追い剥ぎ、吟遊詩人などを選ぶことも可能です。それぞれが独自のプレイスタイルやお金の稼ぎ方を持っています。また、マップによって登場させられるライバル一族の上限が異なります。
この世界で生きるために、決して怠ってはいけないのが、一族と他の人々との関係の管理でしょう。本作では、プレイヤーとNPCの関係を示すパラメーターには、街からの「人気」と、他の一族からの「評判」があります。この数値を管理することが『The Guild 3』で成功するための秘訣とも言えます。
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街の住民からの「人気」は土地ごとに分かれていて、人気の高い土地では商売や裁判、選挙などでボーナスを得られます。また、この街の政治を行う役人にも一族ごとの評判があり、司法での大きな影響力を持っています。役人との関係構築は、いずれ役人を目指すためにも欠かせない要素です。チュートリアルでもやりましたよね、賄賂の贈り方。
他の一族との「評判」が良くなれば、同盟を組んで交易や政治で心強い味方を得ることができます。逆に関係が悪くなれば抗争に発展することもあり、状況によっては大切な家族を失ってしまうこともあります。もちろん、こちらから抗争を仕掛けて相手の商売を妨害したり、一族を倒してしまうこともできますが……。
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人々との関係を良くするためには、地道な宣伝活動や細かい善行(ときには悪行も)を行っていくことが重要です。もちろん全NPCと仲良くする必要はありませんが、本作のゲーム内で生活するすべてのキャラクターに、生活や地位があることは覚えておきましょう。
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お金を稼いで一族の繁栄を目指せ!
本作の目標でもある一族の繁栄のために欠かせないものは、もちろん「お金」です。どれだけ綺麗事を言っていても平民の立場では何も変えることはできません。お金を稼ぐためには商売をいかに円滑に、効率よく動かすかが大切です。
当たり前ですが、商売の基本は「安く買って高く売る」こと。生産施設を所有している場合は、原材料を安く購入して加工品を売ることで、儲けを出すことができます。また、地区によって多少相場は変動するため、必要であれば店の配送員に指示を出して遠くの市場へ売りに行かせることも可能です。
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初期状態で作れるものは少ないですが、プレイヤーのランクを上げれば施設をアップグレードでき、新たな製品を扱えるようになります。さらに、ゲーム内で得た影響力を使用すれば、他の職業施設を作ることも可能です。つまり、原材料を自分の店で用意できれば生産コストは大きく抑えられ、利益を大きくすることもできるのです。
また、吟遊詩人や伝道師などの職業の小屋では、街中で曲を披露したり、説法することで利益を得ることができます。雇用コスト以外の元手がかからないのは利点ですが、儲けは大きいとはいえないので注意しましょう。ちなみに墓守は「骨」を手に入れ、加工して接着剤や骨のネックレスを作って売る立派な生産施設ですよ。原材料の入手も商売柄手軽ですからいいですね。
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商売は少し複雑な要素がありますが、オート指示などのコマンドもあるため、基本的には損をしない作りになっています。ゲームに慣れてきたら商売の手を広げ、交易ルートや原材料生産などを意識するようにして、利益を大きく増やしていきましょう。繰り返すようですが、本作はお金が重要なのです。お金と影響力さえあれば、貴族にもなれますよ。
そして、本作のタイトルにもある通り、街には「ギルド」が存在しています。ギルドは商業や錬金術などのいくつか存在し、それぞれの分野を牛耳っている組織。プレイヤーが地位を得ることで、ギルドから勧誘されることもあり、加入すれば街の暮らしにより深く食い込むこともできるのです。
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ゲームリプレイ:とある一族の記録
筆者は初回プレイでロンドンの街を舞台に、職業・吟遊詩人を選びました。Awesome一族(デフォルト名)の初代・ノーマンはステータスをカリスマに振り、口先一本でロンドンでのし上がっていくつもりです。しかし、吟遊詩人は初期の事業所「吟遊詩人の小屋」の儲けが乏しく、のし上がるための資金がありません。
そこで、ノーマンはこう考えました。「お金がなくても俺自身が財産ではないか」と。その日からロンドンの郊外や街中で、誰彼構わず女性に声をかけ、愛を囁く男が出没することになります。本作では基本的に恋人はいくらでも作ることができ、どちらかが結婚していたとしても「密通関係」を築くことができます。
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ノーマンはゲーム開始から常に複数人の相手と密通関係になり、彼女らのツテを頼って街での人気を上げていきます。ゲーム開始から10年も経った頃、少しずつ貯めていたお金で市民の地位を獲得。空いていた門衛の役職に応募し、その人気と少々の賄賂によって無事に当選します。役人になれば毎年報酬が得られるだけでなく、逆に自分が賄賂を受け取る立場になるのです。
ノーマンは役員期間中に稼いだお金でロンドンの街中に仕立屋を開業。女性関係も欠かさず、最終的に密通関係の女性が15人となりました。途中で「他の一族の女性と仲良くなれば評判を上げやすい」と気付いたため、一代にしてほとんどの一族と良好な関係を築いていきます。恋愛や宣伝などの会話コマンドは失敗してもデメリットが少ないため、かなり強力ですね。
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ちなみにノーマンが役員となったその年に、突如他の一族の人間から殴られるという事件が発生しました。ゲームでは暴力や盗み、建造物破壊などの被害を受け、それがその街で違法行為であるならば訴えることができます。人気の高いノーマンは裁判では負けなし(一方的な被害者なので当然ですが)で、対立した一族は大きくロンドンでの評判を失いました。
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カリスマと愛に生きたノーマンは最終的に64歳で他界し、2代目のデビッドが跡継ぎとなります。デビッドは真っ当に商売でお金と影響力を稼ぎ、父から受け継いだ事業を拡大することに注力。生涯一人も愛人を作ることなく、妻と息子のジェイコブを愛し、最期の日まで休むことなく仕事に精を出していました。
愛に生きた初代と、仕事に生きた2代目の血を引き継いだ3代目ジェイコブは、その高い能力を活かして商売と政治、愛の生活をバランスよく進めていきます。そして、一族は念願の貴族の地位を購入し、以降も繁栄の道を歩むことになるのでした……。
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もちろんこのAwesome一族の生き方は、筆者自身が作り出したロールプレイです。最初に商売にほとんど手を出さず放蕩な生き方を試してみたのですが、しっかりと一族の繁栄を目指せたので、本作の自由度を証明できたのではないかと思います。
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ここまで紹介してきた『The Guild 3』。決して万人向けではないのですが、プレイスタイルがとにかく幅広く、思うままに人生を過ごせるのは魅力満点です。真面目に商売を続けて大儲けするのも、筆者のように(倫理的には怒られそうですが)愛に生き続けることも自由です。ゲームモードも自由に設定できるため、フリーモードで一族の生活をのんびり楽しむこともできます。
ただし、その自由度ゆえに、それなりに親切なチュートリアルを経ても覚えることが盛りだくさんで、初回プレイではUIを含めてほとんどわからないことだらけかも知れません。特にわかりづらいのは身分が上がって追加されるコマンド群です。コマンドだけはどんどん増えていくのですが、それについての説明通知などはほとんどありません。
救いとしては、ゲーム内では各要素向けのヘルプが用意されているほか、コマンドごとに「リソースと結果」が表示されているため、まずは臆せずに色々と試してみることがおすすめです。なお、本作は日本語対応済みですが、一部テキストが分かりづらいところがあります。プレイヤーが“人生に浸る”ことが魅力の作品なので、もったいない部分ですね。それでも、これだけのハードコアなSLGが特に何もせず日本語で楽しめるのは嬉しい限りです。
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『The Guild 3』は、PC(Steam/GOG.com)にて発売中です。