スクウェア・エニックスによるシミュレーションRPG『トライアングルストラテジー』が10月14日にSteamで配信開始になりました。ドット絵と最新3D表現を合わせた「HD-2D」スタイル、新IPのタクティクスRPGということで、Switch版では好評を博しています。追加要素はないほぼそのままの移植のため、ゲームの内容についてはスイッチ版のレビューをご参照ください。本記事ではPC移植による挙動と映像の変化、マウスでの操作感をお伝えします。
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グラフィックスオプションは元々あった被写界深度、ビネット効果の他に、解像度、シャドウ、アンチエイリアス、ポストプロセスの項目が追加されました。ドット絵との親和性もあるのでしょうが、高解像度テクスチャなどはなく、くっきり見やすくなった以上の変化はあまりありません。
フレームレートが重要なゲームでもないので、スイッチで十分遊んだ人が高解像度目当てで買い直すだけの価値があるか、というと、そこまでではないと言わざるを得ないでしょう。
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同じシーンをSwitch、PCで比較します。Switchの解像度だと全体的になじんだまろやかな画面です。PCの高解像度にすると、遠くにいるキャラクターのドットも滲まず、目のドットも見分けが付いています。その代わり、高精細の部分とそうでない部分の違いも見えて、3Dのフィールドからやや浮いている感じがします。
小物はローポリのままなので、くっきりしすぎるとむしろ違和感が気になってしまいます。どちらが良いかは人によると思いますが、この手の表現手法だと単純に高解像度であればあるほどいい、という訳ではなさそうです。あえて720pにすると画面に統一感が出るので、好みに応じて調整するのもいいでしょう。
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戦闘場面はさすがPCと言える淀みないキビキビとした動作です。Switchではフレームレート制限もあって、やや重い「もったり」とした挙動でした。重厚感のある「味」でもあるのですが、ハイフレームレートに慣れているとやはり物足りなさを感じてしまうところ。処理能力が十分にあるPCでは早送りにしても動作が緩むことなく、すいすいとキャラクターが動くのは見ていて気持ちがいいものです。箱庭タイプなので推奨スペックもGTX1060とハードルが低く、数世代前のミドルレンジでも軽快に動作するはずです。
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先程映像面の変化はあまりないと書きましたが、動作の軽快さと高精細化によって、フィールドのジオラマ感が一層増した印象です。特に夜間や屋内のステージでは、たいまつやランプの照明がより明るく表現されており、陰影の表現がオリジナルよりも際立っています。被写界深度も効果的でズームアウトした際の「引きの画」はPC版で洗練されたように思います。映像面ではここが満足できるポイントではないでしょうか。
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マウスでの操作に関しては、コントローラーの操作が前提のゲームなので、若干のやりにくさはあります。戦闘マップ上で移動位置を指定した後にコマンドが開かれるのですが、一旦左上で選択した後、もう一度中央に戻して相手を指定する、という動作にどうしても手間を感じます。キーボードを併用すれば解決しますが、せっかくなのでマウス一つでスムーズに操作したかったですね。
また、シナリオ選択の全体マップでもスティック操作の挙動がそのままで、マウスを動かした後で画面が遅れて動くためとても違和感を感じます。そのあたりの最適化ができたらPCでもプレイしやすくなるはずです。
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これは贅沢な希望になりますが、家庭用機のタクティクスRPGは30fpsを下回る重めの挙動が多いので、FPS制限の機能があると良いと思いました。ドット絵のアニメーションはどうあっても高速化はできないので、それに合わせてあえて挙動を重くするというのも需要があると思います…ありませんか?
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『タクティクスオウガ』『FFT』の系譜を継ぐ箱庭タイプの「タクティクスRPG」は、インディー作品で多くのフォロワーが登場しているように今も根強い人気があります。HD-2Dという表現によって、ファミコン、PS世代に培われてきたドット絵の技術や、当時のコンパクトにまとまった面白さが現代に継承される道筋ができました。PCのフィールドに乗り込むことで、このジャンルの新たなスタンダードになり得るのではないでしょうか。