現代を舞台に、少年少女の葛藤と成長を描いてきた『ペルソナ』。人気のあるRPGシリーズは数あれど、ジュブナイルを軸とする現在劇のシリーズ展開はかなり珍しく、貴重かつ優れた内容で高評価を博しています。
そんな『ペルソナ』シリーズのナンバリング最新作『ペルソナ5』をベースに、様々な追加要素を加えた『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』(以下、P5R)のリマスター版が、10月21日に発売。PS5を筆頭に、ニンテンドースイッチやSteam、Xbox Series X|Sなど、幅広いプラットフォームに『P5R』の魅力が広がります。
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新たな展開で多くのゲームユーザーを引き付けている『P5R』ですが、これだけ注目を集めている理由のひとつは、シリーズでも類を見ないほどのスタイリッシュさにあります。
オリジナル版の『P5R』は発売から3年近く経ちますが、プラットフォームの拡大により、リマスター版で初めて遊ぶ方も多いと思いことでしょう。そこで、物語面の大きなネタバレは回避しつつ、『P5R』のスタイリッシュさをお届けします。
■シリーズ初のピカレスクな『ペルソナ』
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ジュブナイルRPGとして人気を博した『ペルソナ』シリーズの基本的な姿勢は、『P5R』でも変わりません。ですが、本作はそこに「ピカレスク」の要素を取り入れ、常識や良識を踏み越えてでも貫く「反逆の意思」を、物語の軸に据えました。
RPGにおける主人公側は、正義であり善の象徴として描かれがち。ですが、『P5R』の主人公たちは「心の怪盗団」となって人の心に忍び込み、欲望の象徴たる「オタカラ」を盗みます。これは、相手の精神に影響を与える行為なので、善か悪かの2択から選ぶとすれば、「悪」に属する行為でしょう。
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しかし、怪盗団がオタカラを盗む相手は悪人のみ。地位を利用して生徒にハラスメントを行う教師、盗作で己の地位を築き上げる芸術家など、いずれも保身が巧みで法では裁けず、彼らを止める大人は誰もいません。
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怪盗団の面々は、多かれ少なかれ、大人に虐げられたり裏切られた経験を持つ者ばかり。大人の悪を大人が裁かないのであれば──と立ち上がった彼らの「反逆の意思」は、倫理的には間違っているかもしれません。しかし、その真摯でひたむきな力強さに惹かれるのも事実。また、彼らの行動によって救われる誰かがいることも否定できません。
光の当たらぬ闇に潜む悪を、正義ではなく、しかし悪でもない怪盗団が立ち向かう。見た目だけに留まらない、心の在り方も「スタイリッシュ」なのが、この『P5R』なのです。
■怪盗団そのものがスタイリッシュ!
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最初に主人公たちの内面について触れましたが、ここからはビジュアルや設定など、一目で分かりやすいスタイリッシュなポイントを紹介します。まず主人公たちの見た目ですが、普段は年相応ながら、相手の心──パレスに忍び込む際は、いずれも怪盗姿に一変。伊達男にパンク風、ボディースーツなど、それぞれの個性を感じさせる装いを纏います。
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そして彼らが集うアジトは、学校の屋上から始まります。「一般生徒の立ち入りが禁じられている場所に、自分たちは集まる」という背徳感と優越感も、ひとつのポイントでしょう。しかも、状況によってアジトは移り変わり、ビルの連絡通路や喫茶店の2階に集うことも。このようにアジトを点々とするのも、実に怪盗らしく、プレイヤーの心をくすぐります。
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法に縛られず、自らの意思を信じて行動する──そんな怪盗団に協力する人々の中には、社会の陰側に近い者も多く、アンダーグラウンドからの支持が主人公たちの一助になることも少なくありません。学会から問題視されている医師、ゴシップを追いかける記者、過去に不祥事を起こした政治家など、癖のある人物たちと関係性を深めていくのも、王道物語にはないクールさを感じさせます。
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そして何より大きいのは、怪盗団メンバーのほとんどが高校生という点。人生経験の少なさからくる不器用さと純粋さは、大人が目を逸らしがちな尊さに満ちています。彼らだけの青春物語が根底にあるからこそ、ただの格好良さだけでなく、実体を伴うスタイリッシュさに昇華されているのです。