■スタイリッシュを極めつつ、視認性を確保するUIや演出
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作品の切り口や主人公たちの立場、そして物語と、作品の根幹に関わる部分が既にスタイリッシュな本作ですが、ゲームとして触れる部分にも洗練された格好良さが詰め込まれています。
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特に目を引くのがUIの部分で、例えばメニュー画面は赤と黒を基調とした配色。「赤」は『P5R』のイメージカラーなので、その色味が採用されている理由は分かりますが、RPGのメニュー画面には珍しい配色です。また、メニュー項目の文字もデザイン性が高く、切り張りの予告状のような不均一の文字が並んでり、クールさが漂います。
ダーティな格好良さが際立つメニュー画面ですが、これだけ特徴的なのに文字の見づらさはあまり感じられず、一定の視認性も確保。デザインが際立つと利便性が損なわれがちですが、デザイン性と両立させる手腕は、舌を巻くほどです。
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また、買い物などの画面では、相手に合わせてメニュー画面も変化。女医から薬を買う画面では、その女医のシルエットも浮かび上がっています。メニュー画面の実用性にはなんら関わりませんが、あるとないとではこの場面の印象が全く異なります。
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そうしたスタイリッシュ感はメニュー画面だけに留まらず、ほぼ全編にわたって本作を彩っています。目にする機会が多い会話画面では、一般的には長方形がポピュラーなテキストウィンドウを敢えて崩し台形に近いシルエットを採用。漫画を模したデザインになっており、「その人物が話している」という印象をより強く受けます。
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何気ないロード画面も凝っていて、電車通学の途中なら、乗客がひしめく満員電車のサイドビューを表示し、あたかも実際に移動しているような表現が差し込まれます。ちなみに、帰宅時も電車風景のロード画面が挟まりますが、その際の乗客はややまばら。状況によって混雑率が変わるなど、細かい点までこだわり抜くその姿勢も、地味ながらスタイリッシュです。
■ダンジョンやバトルもスタイリッシュ!
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『P5R』はRPGなので、敵との戦いが避けられません。ファンタジーRPGにおける「ダンジョン」に相当する「パレス」や「メメントス」が、本作における主な戦いの舞台となります。
特に「パレス」は、歪んだ欲望の持ち主を改心させるために乗り込む場所なので、物語を描く上で決して外せない場所。欲望が形となったような外観は、おぞましくもどこかコミカルで、非常に印象的です。
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持ち主の罪深さは別として、人の心が具現化したパレスの作り込みも『P5R』で楽しめる要素のひとつ。最初に挑むパレスは城を思わせる作りになっており、そこに怪盗が忍び込むというシチュエーションは、なかなか味わい深いものがあります。
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また状況によって、主人公たちの華麗なアクションが見られるのもパレスならではの魅力。ギミックによっては、月をバックに空を舞う、といった怪盗らしい展開も飛び出します。
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そしてスタイリッシュなアクションと言えば、RPGの華でもあるバトルこそ最大の見せ場。敵に不意打ちを仕掛けると戦闘が有利になるのはRPGの定番要素ですが、その過程が「忍び寄り、頭上から襲い掛かって敵の仮面を剥ぐ」というもの。敵の正体を暴き、隙をつく……戦闘前から、鮮やかな怪盗アクションを披露してくれます。
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当然バトルそのものも、実にスタイリッシュ。ペルソナによる様々なスキルや、武器を使った近接攻撃に加え、弾数こそ限られていますが銃撃も可能。しかも、敵を追い詰めると交渉に持ち込めますが、その際に「HOLD UP!」と銃を突きつけ敵を包囲する姿からは、“奪う側”が放つ圧倒的な強者感が漂います。
怪盗なので、奪うのは至極当然の話。また、奪うためには相応の努力や準備が必要なので、この強者感はプレイヤーが費やした努力の現れとも言えます。苦労したからこそ、敵を制圧する姿にスタイリッシュな心地よさが伴うのでしょう。
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なお「HOLD UP!」にしてから、交渉を選ばず「総攻撃」を繰り出すという選択もあります。パーティ全員が敵に苛烈な攻撃を加え、フィニッシュのポーズと同時に大ダメージ! 雑魚であればこれで殲滅できますし、ボス相手でも十分すぎるダメージソースになります。
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しかも決めポーズはキャラクターごとに用意されており、それぞれの個性が感じられるものばかり。スタイリッシュに敵を倒し、締めくくりも華麗。怪盗の美学が集約された総攻撃は、何度繰り出しても飽きません。
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設定や物語、演出にバトル、そしてシチュエーションと、どこを切り取ってもスタイリッシュな『P5R』。今回、リマスター版がリリースされたことで、アクセスする選択肢が飛躍的に拡大しました。この機会に、スタイリッシュでピカレスクな名作RPGを手にし、夜な夜な怪盗活動に励んでみるのも一興でしょう。