米セガソフトが“エロティックスリラー”として1997年にリリースを予定していた、大人向けFMV(実写映像)ゲーム『The Sacred Pools』のプロトタイプのデータを、同社の元スタッフが所有していると発覚。PC/PSX版のデータを「Gaming Alexandria」がネット上で公開しました(データを導入する際は自己責任でお願いします)。
『The Sacred Pools』は1996年のE3で伝説的なデビューを飾ったものの、実際に発売されることはなく、写真データやそのほか情報も表に出ないまま、長年ゲーム雑誌に残されたわずかな文章だけが知られていました。当時のプレスリリースによれば、ゲームの舞台はかつては安全で美しかったが今や誘惑と危険に満ちた土地となったアマゾニア島。ストーリーはこの島にある神秘的な聖なるクリスタルを中心に展開し、各地に点在する迷路の探索や敵との遭遇を経て、クリスタルを手に入れるというものです。開発予算は当時としては巨額の200万~300万ドル。ゲーム内には多くの女性キャストが登場し、ヌードや性的描写は無いけれど“ちょっときわどい”衣装だったようです。
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Gaming Alexandriaの解説によると、本作が開発された背景には“セガにとっての悲惨な年”が大きな影響を与えているとのこと。新型ゲーム機「セガサターン」が、同年発売の「プレイステーション」と比較して振るわず小売店は激怒、経営陣の内紛は最高潮に達し、90年代前半に築き上げた同社の信用は徐々に失墜。1996年2月に設立されたSegaSoftはアメリカの起業家的風土の中で勝負するべく、セガ・オブ・アメリカとCSKコーポレーションの下にある独立した支社であり、子供向けを意識する必要がなく、自分たちの好きなものを開発する自由を獲得。その中で『The Sacred Pools』のようなタイトルが実現したとのこと。
1996年『The Sacred Pools』はE3に出展。ゲームのモチーフであるアマゾンをテーマにした豪華なパーティーを開き注目を集めましたが、FMVというジャンルは衰退を見せ始め、多くの批評家はこの作品を「遅すぎたもの」と判断。ゲームは何度も発売延期を繰り返した結果、1997年半ばにはスケジュールからひっそりと姿を消し、今回20 年以上保管されていたデータの存在が発覚するまで、ほとんど情報のないタイトルとして知られてきました。
セガの失われた“遺物”である『The Sacred Pools』ですが、Gaming Alexandriaは同社が過去にリリースしたどのFMVゲームよりも「セットのデザインと衣装は目を見張るレベル」「安っぽさはどこにもない」と高く評価しており、未発売のまま幕を閉じたことはファンにとって残念でなりません。