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特にRPG系の名作を数多くリリースし、多くのゲームファンを抱えているスクウェア・エニックス。2023年6月には『ファイナルファンタジーXVI』が、そして2023年冬には『ファイナルファンタジーVII リバース』と、大ヒットを予感させるタイトルが今後控えています。
こうした活動が目立つため、長寿シリーズの展開が多いようにも見えますが、新規IPの立ち上げやそのシリーズ化にも意欲的に取り組んでいます。2022年だけでも『トライアングルストラテジー』や『春ゆきてレトロチカ』、『ディオフィールド クロニクル』に『ハーヴェステラ』など、全く新しい作品を次々と放ち、様々な切り口でユーザーに刺激を与えました。
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もちろん、新たに立ち上げた作品が全て大ヒットするわけではありません。ですが、厳しいゲーム業界に挑み、ユーザーからの支持を受けてヒットした作品も当然あります。ドットテイストで美麗なグラフィックを描く“HD-2D”で話題となり、2018年に発売された『オクトパストラベラー』が、その顕著な例と言えるでしょう。
高い完成度と独自性によって好評を博した『オクトパストラベラー』は、全世界累計出荷・DL販売本数が300万本を突破。世界的に認められる人気作へと成長します。
新規IPへの飽くなき挑戦が、『オクトパストラベラー』という大ヒットを生み出しました。そして次のステップとして、現在シリーズ展開が実施中です。まずは、スマホ向けRPG『オクトパストラベラー 大陸の覇者』が、2020年10月に配信開始。こちらは、わずか1年で1,500万ダウンロードを超える人気ぶりを見せています。
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そんな本シリーズが満を持して放ったのが、ナンバリング2作目に当たる『オクトパストラベラー II』です。PC(Steam)/PS5/PS4/ニンテンドースイッチに同時発売(Steam版のみ一日遅れ)され、待ち望むユーザーに向けて広く届けられました。
8人の主人公がそれぞれの目的のために旅立ち、その道行きの中で出会い、互いの人生を重ねていく。そんな旅人たちの冒険に、多くの方々が今も挑んでいます。
本稿では、終盤までのゲーム体験を通して感じた独自性や魅力などを、レビューとしてお届けします。なお、今回プレイに用いたのはPS5版です。
■編成から立ち回りまで、自分で組み立てるバトルに醍醐味あり―前作から正統進化
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弱点属性への攻撃で敵の「シールドポイント」を削って「ブレイク」(無防備化)させ、大ダメージを狙うターン制コマンドRPG――これが、本シリーズの基本的なバトルシステムです。そして、行動を強化できる「ブースト」を使うことで、ブレイクを早めたりダメージ強化したりできます。この「ブレイク」と「ブースト」の存在とバランスがあるため、凡庸な“互いに殴り合うだけ”なRPGと一線を画しています。
ブーストを使うには、毎ターン溜まっていく「BP」の消費が不可欠。またBPは、使用した次のターンは溜まらない仕様なので、小出しにするより溜めて一気に投入する方が恩恵が大きくなります。しかし、それはあくまで理想的な使い方。戦闘の運びによっては、BPの配分を調整する立ち回りも重要です。
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また、ブーストを使えばシールドポイントを早く削れますが、そうするとブレイク後のチャンスに投入できるBPが不足しがちで火力不足に陥ることもあり、かといってブレイク後までBPを溜め込んでおくと、戦闘はどうしても長引き、相次ぐ敵の攻撃でこちらがジリ貧になることもしばしばです。
レベルを上げれば基本的なステータスが上昇するので、戦闘は少しずつ楽になっていきますが、根幹に「ブレイクとブースト」があるため、「決定ボタンの連打だけで敵が倒せる」といった安易な状況にはならず、レベルに関わらず戦闘に思考の余地があり、飽きにくいゲーム性を実現しています。
こうしたゲーム性を、「手応え」と取るか「面倒」と感じるかで意見が大きく分かれるところです。ただし本作は、1戦1戦を大事にしている分、単純な戦闘回数に比べてレベルが上がりやすく感じました。あくまで体感の話にはなりますが、バトルが濃密な分、総合的なバトル数を減らすことで、満足度と負担を上手く調整しているという印象です。
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そして『オクトパストラベラー II』のバトルは、従来のシリーズ要素に加え、味方のキャラクターごとに効果が異なる「底力」が用意されています。例えばパルテティオの場合、底力を使うとBPが最大まで溜まります。強敵とのバトルは、どうしてもBPが足りなくなりがちなので、底力でのBPは非常に便利です。
魔法(全体攻撃)を使いこなすオズバルドの底力は、その魔法を単体に収束し、威力を上昇させるという効果があります。本作の全体攻撃は、複数の敵のシールドを同時に削ることもできるのでかなり便利です。そのため、普段は雑魚相手に全体攻撃を活用し、強力なボスには底力で魔法を単体化、大ダメージを狙うという立ち回りで効果的に戦えます。
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また本作では、「ジョブ」や「アビリティ」をかなり自由に設定できるので、極端に言えば誰もがアタッカーになれますし、回復役を務めることもできます。しかし、この底力を含め、キャラクター固有の能力もあるので、全く同じになるわけではありません。
むしろ、各キャラの個性をどのように伸ばし、足りない部分を誰でどう補うか。その組み合わせを見つける楽しさが、『オクトパストラベラー II』のバトルをより大きく盛り上げてくれます。
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8人の主人公が仲間になり、それぞれ固有のメインジョブを持つほかに、ひとつずつサブジョブを装備可能。そこに無数のアビリティを組み合わせれば、パーティ編成の広がりは無限にも思えるほど。それでいて、各キャラ独自の能力があるため、それぞれの個性が薄れることもありません。
1作目の『オクトパストラベラー』の時点で、ブレイクとブーストによる戦闘は好評を博しました。そこに底力という新たな要素が加わり、編成の選択肢も増えた本作のバトルは、着実な正統進化を迎えたように感じます。