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――“ハードコア”。この単語は「中核」「核心部」「(集団などの)強硬派」、または「過激」「危険」、ときには「攻撃的」だったりするモノを指すときに使われます。
Game*Spark読者の皆さまも、多くは「ハードコアゲーマー」であるでしょう。ゲームをやるために、“ゲームは一日一時間”なんて言葉を疎ましく思うほどにゲーム漬けになった経験もあるはず。“ハードコアゲーマー”なライフスタイルを貫き通しているのではないでしょうか。
本企画「ハードコアゲーマー・インタビューズ」では「ハードコアな趣味やバックボーンを持つゲーマー」に焦点を当てた独自インタビューを不定期で実施しています。今回は新宿・ゴールデン街で出会った“ガチ”のゲーマー達に突撃取材。ディープな街でお店を営む面々に連続ショートインタビューを行いました。
50年の歴史ある名店「しの」で、店長のりくさんに伺った『原神』―雷電将軍5凸の重みを感じさせる、一杯。
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まずは簡単に「新宿ゴールデン街」について説明しましょう。ここは新宿・歌舞伎町に軒を連ねる飲み屋街のこと。小さなバーが多く並ぶこの地区は、ゲームの舞台としても有名な歌舞伎町の中でも異質な雰囲気を放っています。最近では海外からの観光客が多く来訪するスポットともなっていますが、戦後から今に至るまで文豪や映画・演劇関係者など文化人たちが通った名所です。
そんなゴールデン街で、最初にGame*Spark編集部が訪れたお店は「呑家 しの」。 昭和48年創業というゴールデン街屈指の老舗バーです。時代の重みを感じさせるシックなデザインが印象的。今回は「しの」店長のりくさんに話を伺いました。
●ウイスキーや焼酎の水割りを頼みつつ、しっとりとインタビュー。
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――最近はどんなゲームにハマっていますか?
りくさん(以下、りく): 『原神』ですね。毎月どれくらい課金してるんだろう……雷電将軍は5凸までやりました。というか、とりあえず5凸で止めときました。最推しキャラも雷電将軍ですね。最もエロいと思ったキャラは八重神子です。
――雷電将軍が5凸! それは凄いですね……!
りく: まあでも、今はガチャ禁期間なんでよすね。『原神』ってキャラのレベル上げもそうなんですけど、大事なのは「聖遺物」じゃないですか。「聖遺物」厳選が本当に沼で、もう大変ですよね。
――4月に『崩壊:スターレイル』のリリースが控えていますが、『原神』ユーザーとしてプレイしようと思いますか? 同じHoYoverseブランドの作品です。
りく: 自分は『原神』のオープンワールドでの探索が好きなので、そのあたりの中身次第ですね。ああいったRPGも良いのですが、『崩壊:スターレイル』もオープンワールドで自由にキャラクターを動かせるなら……といった感じ。あと、『原神』だけでも大変なところで『崩壊:スターレイル』に手を出しちゃうと、破産しちゃうと思うんです。
――他には、どのようなゲームを遊んできましたか?
りく: スマホゲームがメインで、今まで結構な数を遊んできたんですけど……正直言って、自分はお金の使い方が非常に良くないんですよ。『ウマ娘』とかもやってたのに、1万円だけ課金して止めちゃったりして。最初のリセマラ終えて「良いキャラ出た!」って興奮しながら更に課金して、そこで良いのが出なかったからまた課金して、それで出なかったら止めてしまう。そんなことを繰り返すという、我ながら病んだ遊び方だったと思います。
あとは、オンラインで城を落とすようなストラテジー系もやってました。リリース最初期からギルドを作ってランキング上位までいってたんですけど、ふと飽きちゃって止めてしまいました。他は『ブレイブリーデフォルト ブリリアントライツ』もやり込んでました。当時はめっちゃハマって、コロナ禍のうちの1年間くらいは、接客しながらカウンターにスマホ置いてポチポチ触って、こっそり周回してましたよ。
――全然集中してない!!
りく: あと、ゲームにまつわる話で言うと……自分って霊感はないけど「取り憑かれやすい体質」なんですよ。
――ゲームにまつわる話……?
りく: あるとき、2人の知り合いと一緒に自動車免許の合宿に行ったんです。その宿泊先が海沿いの街にあって、ある日の夕飯としてカレイの唐揚げを買ってですね。そのうち食べようと思って冷蔵庫にしまったんですけど、なぜかみんなしてその存在を忘れちゃって、傷むまで放置してしまったんです。知り合い2人は「カレイに申し訳ないな」と思ったみたいで、海が見える場所にあったゴミ箱に捨てながら、両手を合わせて拝んでました。もったいないことをしてしまったが、どうか成仏してくれ、って。
――なるほど(?)。
りく: まあ自分は「こいつら変なことやってんな……」って傍観してたんですけど。でもその日の夜、みんなが寝静まった頃に自分が突然ガバッと起きた“らしい”んです。それで、知り合い達の話を聞くとなにやら独り言を呟いていた“らしい”んです。
――記憶がなかったのですか?
りく: はい。本当にまったく記憶にないんだけど、布団から起き上がった自分は虚ろな表情で「殺す!殺す!殺す!」って連呼していたみたいで、とにかく異常な状態だったと聞きました。その様子を見た知り合い達は完全に「こいつ、カレイの唐揚げの怨霊に取り憑かれてしまったんだ」と思い込んで怖がってしまい、とにかく恐怖を紛らわしたいという一心で、合宿所にあったニンテンドー64を立ち上げて夜通しで『マリオカート64』をプレイし続けていたんです。朝、自分が意識を持ってハッキリと起きたときまで2人とも『マリカー』やってて……「突然どうしたんだろう?」って思ってたら、そんな話を聞かされてびっくりしましたね。
――ゲームにまつわる話と言えばゲームにまつわる話ですね……! 本日はありがとうございました!
「あの時の女」でしっとり乱痴気……。ハードコアゲーマーな話題がゴールデン街で花開く!
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「生粋のゲーマーがいるバーがある」との情報を得ていた取材陣が次に赴いたのは、バーカウンターにハードコアゲーマー「ユウスケ」さんが立っているお店「あの時の女」。なんとオックスフォード大学卒という凄まじい経歴を持つ彼にお話を伺いました。
黒が基調の店内は非常にシックな雰囲気。店内はもちろん、ユウスケさんからも「ハードコアゲーマー」な雰囲気は感じられません。しかしゲーム関係者が来るとゲームミュージックを流してくれるとのことで、今回も我々にあわせて、レトロな名曲を聞かせてくれました。
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――最近はどんなゲームをプレイしてますか? 特にお気に入りのタイトルがあれば教えてください。
ユウスケさん(以下、ユウスケ): いきなりですけど「何のゲームやってるのか、どれが好きか」って質問、結構むずくないですか?(笑) 遊んだゲームってみんな好きになっちゃうし、選べないです! 挨拶代わりには難度が高いですよね。
――たしかにそうかもしれません! ちなみに、我々はよく「最近買ったゲームは何?」という話題を挨拶のように使ったりもします。
ユウスケ: それですと、一番最近買ったのは……『ホグワーツ・レガシー』かな。それに『WILD HEARTS』に『ウォーロン』。『ウォーロン』は買ったけど遊べてないんですよね(笑)。次は『天穂のサクナヒメ』と『Kenshi』も欲しいなーって思ってて……他にもいろいろあるけど、Steamのウィッシュリストはここでは見せられないです(笑)。
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――確かにウィッシュリストは見せられないです。 人によってはエッチなのとか入ってたりしますからね……。
ユウスケ: いやいや、エッチなのはまだいいんですよ! ドン引きされるのが「誰がやってるのこのゲーム!?」みたいなのです。めっちゃマイナーだったり、そうでなくても周りで遊んでる人が少ない作品で……例えば『Graveyard Keeper』とか。あとビーバーが町を経営する『Timberborn』も良さそうだなって思ってます。ジャンルとしては、シミュレーションとか経営系が好きですね。
――AAAからコアなインディー系まで網羅されてますね。
ユウスケ: FPSとかTPSもやってますけど、主に遊ぶのはシングルプレイ用のゲームです。以前は「友達と皆でワイワイ系」な『スマブラ』や『モンハン』も遊んでましたけど、周りに流されてたところもあったりして。
さっき挙げたようなゲームについて話せる人って本当に少なくて、「ユウスケは最近どんなゲームやってんの?」と聞かれても「言ったところで分からないと思う……」としか言えないんです。『パタポン』とかもめっちゃハマってたんですけど、『パタポン』の話をしても周りの友達はみんなピンと来てなくて、めっちゃ悲しかったなあ……(会話中に海外からの観光客が来店。英語で対応する)。
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――海外からのお客さんもいらっしゃるなら、英会話のスキルはだいぶ役立ってそうですね!
ユウスケ: でも、英語は“喋らない”です。喋れるけど喋らないというか。結局は英語ってコミュニケーションのためのツールであって、別にガンガン英語を使って会話したいわけではないんですよ。でも、ゲームで英語できてよかったなと思う瞬間があります。やっぱり、未翻訳ゲームをプレイするときですよね。特に『Frostpunk』は日本語対応が待ちきれなかったですし。Modなどが制作される前、「英語でしか遊べない状態」でプレイできるのは嬉しいですよね。
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今回は基本的には「その場の思いつき」で話を聞く突撃スタイルなインタビューでした。しかし話を聞けば、人気タイトルをやりこんでいたりコアなゲームを遊んでいる店員さんやお客さんばかり。10年以上にわたって海外ゲーム情報を届けてきているGame*Sparkとしては、改めて「時代は変わる」ということを認識できた取材でした。
ここ数年で「洋ゲー」「和ゲー」の線引きは非常に薄くなり、海外ゲームだからと言って一部のゲームマニアにしか遊ばれていないわけではありません。Game*Sparkが取り扱ってきたゲームタイトルやデベロッパーについて話す若い女性客も取材中に現れ、市況を見ればもはや自然なこととは思いつつも、妙な感慨深さを覚えたりもしました。
次回はどんな夜の街で「ゲームよもやま話」を聞けるのか。“ハードコアなインタビュー”にご期待ください。