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今回のプラモデルレビューは、2023年4月に再販されたコトブキヤの1/100「メタルギア RAY」です。メタルギアRAYには複数のバリエーションがありますが、このキットは6月12日に発売から15周年を迎えた『METAL GEAR SOLID 4 GUNS OF THE PATRIOTS』(以下、『MGS4』)で登場するモデルをキット化したものです。
本キットは元々2014年に発売されたものですが、1/100「メタルギアREX」に比べて再販の機会が少なく、入手するのが比較的難しいキットでした。5月末に発表された過去作移植の『METAL GEAR SOLID: MASTER COLLECTION Vol. 1』で本機のオリジナルが登場する『METAL GEAR SOLID 2』(以下、MGS2)のHDリマスター版が移植されることを含めて、「ここで取り上げておきたい…!」という気持ちからキットレビューに挑みました。
メタルギアRAYは、『MGS2』においてスネーク達がタンカーへ潜入する切っ掛けを与える存在であることや、主人公の雷電が大量の量産機と対決すること、そして核機能を搭載しない「対メタルギア用メタルギア」という点も含めて特異な存在です。『MGS4』でも有人機が登場し、メタルギアREX vs メタルギアRAYとの激しいバトルが繰り広げられます(無人機もAct5で登場する)。
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巨大なメタルギアRAY―一部パーツのタイトさに苦労も
コトブキヤの1/100「メタルギアRAY」は、完成すると横30cmを超える大型キットです。組立順は胸部→頭部(有人機、無人機の選択式)→腕部→脚部。ランナーも17枚と多く、パッケージが大きいことからも一層気合いが求められます。
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説明書には、組立順だけでなくメタルギアRAYのアートワークや作例、カラーガイド、デカール位置が掲載されています。特に、アートワークについてはカラーガイドと作例で補足仕切れない内容を補完していたために、制作時に色や構造が解らない部位を塗装するのに役立ちました。
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パーツの構造そのものは、手先などがないことを除けば他のロボ系プラモデルと似ていますが、1/100サイズであるためにパーツが大きく組立しやすい構成です。頭部から胸部、腕部、そして脚部までの一部パーツの構造には特異な部分があります。強いて言うなら、背中のミサイルハッチがある装甲は、T字型の突起に引っかける形で取り付けることでしょう。これで前後にパーツが動きつつも外れないようにできています。頭部は有人機と無人機が選択可能ですが、今回は有人機を選びしました。
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加えて、腕部の接続方法はH型のパーツ内側の先端にポリパーツを左右2つ付け、それを上下のパーツで挟み込むことで合わせ目を目立たせずに可動を実現するという構造にもなっています。
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一方で各パーツの色分けに目を向けると、極小部分を除けば黄土色部分の円形部分など最低限分けられている印象。特に脚部に関しては細部の色分けができており、メタルギアRAYのイメージそのままの仕上がりです。
ほとんどの部分で問題無いキットでしたが、制作中にトラブルが起きたのは脚部でした。脚部の太股とスネを繋ぐ黄土色パーツには、ポリキャップの穴に軸を通して組み立てると「コ」の字になるものが存在します。このパーツの接続がタイトでキツく、差し込むのに力を込めなくてはいけないため、前後に回転させながら取り付けようとしたものの、パーツに無理が生じて捻じ切れる寸前の自体に……。
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こうなってしまっては修理が必要です。乱れる心を落ち着かせて、金属棒とピンバイス、金属用のニッパーと必要な道具を揃えました。まず1mmほどの穴をパーツ中程まで開口し、太さ1mmの金属線(真鍮線が店頭で見つからなかったので、ニッケルシルバー線を使用)を挿入し瞬間接着剤で固定。はみ出た金属棒を金属ヤスリで削り、骨を埋め込むように補強しました。
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修復したものを再び取り付けて曲げてみたところ、靭性が増して捻じ切れる心配も無くなり、事なきことを得て安心しました。しかし、もう一方の取り付け穴もタイトさが目立ち、重量がある上半身を支える為とはいえ、動かしていたら後々破損しないか心配が尽きません。
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そんなトラブルがありつつも脚部ができ上がりました。そして頭部と左右の腕部、胴体、左右の脚部と、これまでの工程で制作した部位をつなぎ合わせて完成です。
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巨大で迫力満点な1/100 メタルギアRAY
完成したキットを眺めてみましょう。プラモデルそのもののプロポーションはまさに『MGS4』のゲーム内で見たものと遜色ありません。ただ最低限の色分けがされているものの、全てではないので色が分けられていない腕部の円形部などが少し寂しく見えてしまいます。
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メタルギアRAYの脚は細く設置面積も小さいため、そのままで自立が困難です。そこで、問題なく立たせるため付属の専用ベースを使いましょう。
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頭部の開口は、下顎を除き左右の接続パーツと上顎を差し替えることで表現。脚部は、個体差もあるかもしれませんがタイトなだけあって片足立ちも可能です。
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駐機状態にすると『MGS2』タンカー編でのスネークの撮影ミッションを彷彿とさせる状態にできます。レールガンを搭載しているメタルギアREXに比べて、様々な姿勢を取らせることができるのがメタルギアRAYの魅力なのかもしれません。
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まだだ、まだ終っていない!大規模になり工程も増えた塗装
さて塗装に入りましょう。今回の塗装は、大型キットであることに加え四肢の存在やゲーム本編での迷彩とメタリックな表現から、胴体部分はゴールドで、青緑部分はキャンディ塗装と解釈します。
しかしながら、今回のキットでは、それらを表現するために多くの工程を乗り越えなくてはならない大変なものとなりました。塗装へ入る前に合わせ目消しです。合わせ目は主に脚部に表れていますが、頭部の口先部分にも合わせ目が存在しているため、忘れてはなりません。
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合わせ目消しを終えたらいよいよ塗装です。メタリック塗装が中心となるために、サーフェイサーで光の透過を防止した後に、光沢ブラックを塗って塗料の粒子が反射しやすいように整えます。胴体と頭部内部などの円形部をガイア132パールゴールドで塗装し、マスキング後表面をGX210ブルーゴールドの2種類で塗り分けました。順序としては、黒サフ→光沢ブラック→パールゴールドで円形を塗装→マスキング→ブルーゴールドで全体塗装です。黒部分は作例を見るとガンメタル的に塗られているので、ガンメタサフで塗装しました。
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胴体や脚部の黄土色パーツをゴールドで塗装したら、青緑部分のパーツを塗装します。円形部をパールゴールドで塗装してマスキングをしたら、黒サフを含めた下地処理を実施。他にも頭部内部の白部分をマスキングの後に塗装し、関節の隙間から見える内側を黒塗りしておきます。
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全ての下準備を終えたらいよいよ青緑部分の塗装です。ここの工程は全てを含めると、黒サフ→光沢ブラック→パールゴールドで円形部塗装→マスキング→XC05サファイアブルー→デカール貼り付け→C138クリアーグリーン→デカール貼り付けと8工程分あります。また塗装面積も1/100というサイズからそれなりに広く非常に時間がかかります。所々同時進行させていたので工程的には、下準備を終えてマスキングし、XC05サファイアブルーを塗装する段階です。
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サファイアブルーを塗りおえたら、ガイドを参考にデカールを貼り付けます。ライン状のデカールを最後に張らないのは、作中の描写において黒ラインの上に緑色の透明な装甲が乗っていると解釈したのと、クリアカラーによるデカール保護の2つからです。特にこのデカール数が90以上と多量にあり、これらを立体的に貼り付けるに苦労します(反対側のガイドもないから単純に難しい)。
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最後はC130 クリアグリーンを全体に吹き付けて完成です。結果的にキャンディ塗装となるために、強い光沢と青緑感が合わさりゲーム本編で見られるような姿になります。
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全ての塗装を終えてパーツを全て組み上げ、デカールを貼り終えた瞬間の達成感は大きいものです。1/100 メタルギアRAYが、施されたキャンディ塗装で、プロポーションを強く引き立てられた姿に感動しました。
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水陸両用タイプだが飛行機を感じさせるメタルギアRAY
完成した1/100 メタルギアRAYを見てみましょう。全体的に光沢が目立つと共にメタリックな質感で、メタルギアREXと異なる対照的な雰囲気が出せたと思います。
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メタルギアRAYは、PS2の『MGS2』で初登場した機体です。ローポリで箱形だった前作のメタルギアREXと違い、ハイポリで曲線主体のメタルギアRAYは全体的に丸く、生物的な雰囲気も強く現れています。
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完成したメタルギアRAYをよりアクションさせてみようと、腕の可動を突き詰めてみると微妙に曲がりきらないのが気になりました。腕部の軸は主に上方向へ曲がるようにできていますが「振り上げて前に突き出す」ことや、「腰を回転させて腕先を正面に向ける」、「腕を盾の様に構える」というポーズが苦手で、腕部下部のカバーが外れやすいことも含めてポージングに制限があるように感じます。
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メタルギアRAYを眺めていて気がついたのは、繊細なパネルラインや曲線的なフォルムなどに戦闘機のようなエッセンスが見られるということです。腕に付いている円形部もラウンデルに見えますし、着座時の固定装置も飛行機の主脚のようです。
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1/100メタルギアRAYは、プロポーションがほぼ完璧な一方でアクション性が低いプラモデルキットでした。ですが、本キットが2014年発売の比較的古いキットの再販という点を留意する必要があります。また個体差があるかもしれませんが差し込み軸がタイトすぎて破損の危険性があることや腕の可動域が狭いこと、腕部カバーのパーツが外れやすいことなど、難点もいくつか存在しています(腕部のカバーパーツは接着剤で固定した)。
色分けランナーで構成され、前作の1/100「メタルギアREX」より見映えを含めて素組みでも作りやすくできていますが、脚部の色分けがほぼできているのであれば、腕部の円形部分の色分けも力尽きずに最後までパーツとして分けていればと思ってしまいます。
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完成したキットを正面そして左右と撮影するのは、まるでタンカー編のスネークを彷彿とさせる瞬間がありましたが、本キットは『MGS4』版であるため、尾が長く細部が異なったプロトタイプ版を作る事ができませんし、『MGS2』の際のマーキング再現のためのデカールなどもありません。メタルギアREXのように各種バリエーションが出てくれればと思う瞬間も多々あります。
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逆の違和感があったのが専用ベースです。六角形でデザインされたベースは『MGS2』のアーセナルギア体内の床を思わせますが、『MGS4』で同機が登場するのは雪と氷に覆われた港湾施設であり関連性が薄いのが残念でした。これは付属のミニフィギュアも同様です。
1/100メタルギアRAYは、10,780円(税込み)と高額な割りにアクションフィギュア的な要素や動かして遊ぶホビー的な要素については腕の可動域が狭いなど難点が複数付いてしまう、ディスプレイモデル的寄りのキットです。それでも値段相応に完成後は大きく、プロポーションとディテールを含めたクオリティの高さも発揮されていて満足はできるでしょう。
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・高額キット相応のディテールとプロポーションの良さ
・アートワークが付いた説明書
・大型キット故の存在感
・色分けランナーによって素組みでも楽しめる
悪い点
・組立時に破損しそうなほどタイトな脚部の一部パーツ
・腕部と腰の狭い可動域
・『MGS4』版メタルギアRAYと絡ませ辛い付属のミニフィギュアのポーズ