皆さん、登ってますか?
2017年頃に“壺おじ”こと『Getting Over It with Bennett Foddy』が理不尽な落下と神経を逆撫でるナレーションで話題を呼んだことは記憶に新しいかもしれませんが、最近巷では『Only Up!』の人気に端を発して、フォロワー作品が次々と登場し、こちらも流行の兆しを見せています。
そんな中で今回ご紹介するのは、本格クライミングシム『New Heights: Realistic Climbing and Bouldering』であります。Wikkl WorksとWhisperGamesが手掛け、2023年7月7日にSteamにてWindows PC向けに早期アクセスリリースした本作。
「どうせありふれた腰砕けシムのひとつなんでしょ」と、どこかヒネた心を持っていた筆者の予想を本作は見事に裏切り、操作につられてモニター前の身体も動いてしまうという、素晴らしい没入感と再現度を誇るゲームとして堂々たる登場でした。
『New Heights: Realistic Climbing and Bouldering』とは?
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改めて本作は、「究極のクライミング&ボルダリングゲームを体験しよう」という謳い文句の通り、よく再現されたクライミングシムであります。たしかにグラフィックという面においては、あえて辛口に評価するなら及第点と言えなくもないですが、本作の真髄はその「現実に近い」プレイフィールにあります。
筆者は趣味でボルダリングをしているのですが、そこで培った技術を本作へ適用したところ、ちゃんと登れたんですよね……。しかもマウスとキーボードで操作しているのにもかかわらず、あのホールドに指を引っ掛けて腕をプルプルさせている時の息遣いというか、そういう感触を錯覚するくらいにはしっかりとした没入感がありました。
たしかに早期アクセス故に荒削りな部分もありますし、謎判定による珍プレー好プレーからの壺おじ化といった事件(という名の撮れ高)もありますが……個人的には本作はシミュレーションと名乗っても全く問題のない完成度だと感じます。
操作・設定・言語
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本作はコントローラーならびにキーボード&マウスに対応しています。例えるなら『I Am Bread』に近い操作系かもしれません。個人的には、ひとつひとつホールドを確かめながら登るという点において、後者の方がしっくりくる操作感でした。設定画面からはそういった操作の感度やカメラワークの反転、キーボードであれば配列QWERTYキーか、他パターン2つを選択という項目が並びます。
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他には音声やグラフィックについてのオーソドックスな設定調整が可能。言語はありがたいことに、早期アクセス時点で日本語が実装されています。翻訳の精度も申し分なく、全くプレイに支障がありません。またフォントもありがちな謎フォントではなく、一部の表示ではゲームのグラフィックに合わせるよう手も加えられているようで、かなり好感度が高いですね。
本編開始
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さあ始まりました『New Heights: Realistic Climbing and Bouldering』。トップ画面から装備品まわりのカラーのみキャラクターカスタマイズが可能ですが、体型は今のところ女性タイプのみですね。気の狂ったマッスルスパくんを作って、崖に取り残されたヤギのような一生を終えたかった(錯乱)。
ジムで練習しよう!
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まずはウォーミングアップということで、チュートリアルも兼ねたジムステージで基本操作を学んでいきます。キャラクター操作は肩越しカメラの三人称視点。字幕と立て札とナレーションボイスのレイチェルトレーナーの指示に従いつつ、ステップ・バイ・ステップで学んでまいりましょう。
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最初に挑戦するのはこちらのコース。ピンクのホールドを両手で掴む練習をしましょう。ホールドとは、こういったボルダリングなどのコースに設置された「でっぱり」や「突起」のことを指します。ここに指をかけたり、手で掴んだり、足を乗せたりして上手に体重移動をしながらじわじわとコースを登っていくのがボルダリングの醍醐味と言えましょう。ほんのちょっとでも四肢の位置や捻りがずれるだけで、身体に感じる負担がだいぶ異なるのも面白い。
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そんな事を話しているうちに我らが操作キャラはなんだか面白い体勢になっていますね。本作の操作はいたってシンプルで、四肢をそれぞれ動かして安定を探りつつホールドに引っ掛けていきます。今回であれば両手をホールド上部にひっかければOK。手足の先に表示されている矢印メーターがその力のかかり方「グリップ」を示していますが、これが真っ赤になるとスタミナゲージが画面下部中央に表示され、ゲージがゼロになると力尽きて身体が落下してしまいます。
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スタミナゲージが減少しはじめても慌てずに、壁に張り付いた状態で体幹を上下左右へズラしてあげることで、姿勢が安定して小休止を取れるタイミングがあります。また身体を壁に向かって前後させれば、壁に張り付いて安定したり、少し腰を離してバランスすることでゲージ回復といったことも可能です。
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別コースですが無事に登りきりました。こうやってやや引いたカメラで見るとそうでもないかもしれませんが、実際に自分の視点で見下ろすと結構高さを感じて怖かったりします。現実では、ゴール後にジャンプなどで飛び降りることはなるべく避け、どのホールドを使っても良いのでそろそろとゆっくり降りた方が安全ですね。油断は即怪我のもと……それでは聞いて下さい『俺のコシガ・ジ・エンド』、何の話だ。
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閑話休題。本作のゲームプレイは作業的には地味ですし、見た目も巷で流行りの『Only Up!』系と比べれば派手さはあまりありません。ただチュートリアルの時点で筆者は既に、コースを眺めながらどこのホールドに手を置こうかなとか、ここはちょっと悪い位置だなとかガンバ!とか思ってしまったりと、自分が実際に登っているかのような錯覚がありました。これはかなり大きい得点だと思います。
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そんな訳で次のマップが解禁されました。本作はこのように各マップの各コースをクリアするなどして条件を満たし、さらに新しいマップやコースがアンロックされる……という流れで進行します。
大自然に挑戦しよう!
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さてさてやってまいりました大自然。メニューより各コースが選択可能で、それぞれざっくりとしたルート表示と、てっぺんに難易度が表示されています。各ルートには達成目標とタイムアタック要素があり、それぞれ条件を満たせば経験値など報酬が増えて新コースがアンロック。一度クリアしたコースは勘所を掴んでいると思うので、再トライすればハイスコアも狙えることでしょう。
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岩場に一部杭などを打ち込んでコースとしていますが、ほぼ自然環境そのものに挑戦するため、ボルダリングの時とは異なり、わかりやすいホールドが見当たりません。カメラを拡大縮小および回転させつつ、スタミナゲージに気を配りながら、手が届く範囲へ恐る恐る腕を伸ばしていきましょう。
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登るとき特に意識を向けたいのは足ですね。慣れていない頃はついつい腕の力だけで無理に登ってしまいがちですが、そうすると結局体力が続かず後半苦しくなります。足を使って荷重を分散させることでスタミナを温存しつつ、ここぞという場面でガッと腕を使うのが良いでしょう。いやほんとに、実際の登りと同じアプローチをゲームで行えるのが楽しい。
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もちろんゲーム的なお助け要素もしっかり用意されています。こちらは途中で一度落下してしまったところ、最後の地点に足場付きでリスポーン(?)しました。ただ早期アクセスゆえか、たまにこの足場からも落ちると、リスポーンせずにもう一度したからやり直しになります。しかもコース上に足場が存在するため事実上通行止めを食らってしまうという。そういう状況になったら、メニュー画面からコースリスタートを選択しましょう。
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ちなみにコースはある程度の広さをもったマップとして存在しますが、だからといってどこへでも自由に移動できるわけではなく、見えない壁などで行く手を阻まれています。画像は「お控えなすって」のポーズで見えない壁へ抗議を行う筆者。
おわりに
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順調にコースをクリアして新しいマップとコースが解放されました。ここはちょっとカメラワークに癖があり、他のオブジェクトや斜面に干渉してしまうのか、プルプル震えだして止まらなくなる現象がしばしば発生しました。コース自体も少しテクニックが要求されるので少々手こずるかもしれません。
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繰り返しになってしまいますが、「実際に登ってる感」を楽しめるという点において本作は早期アクセス時点でも十分なクオリティを発揮しています。それでありながら、ゲーム的な寛容さも持ち合わせ、ある程度は手足を引っ掛ける場所判定を緩めにしてくれているので登りやすい。
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今後も製品版に向けて開発が進んでいく本作。もし贅沢な望みが許されるのであれば、キャラクターのカスタマイズ要素がもっと増えたら嬉しいですね。ともあれもし、本作でボルダリングなどに興味を持たれた方がいらっしゃれば、是非近場のトレーニングジムで講習を受けつつ安全に楽しまれると良いでしょう。シューズはレンタルで試しつつ、本格的に始めるのであれば例えばSCARPAブランドが初心者向けとしても十分で(早口になっていくので以下省略)
¥17,747
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
対応機種:Windows PC
記事におけるプレイ機種:Windows PC
発売日:2023年7月7日
著者プレイ時間:2.5時間
サブスク配信有無:記事執筆時点においては、無し
価格:2,300円(2023年7月15日まで2,070円のセール中)
※製品情報は記事執筆時点のもの
スパくんのひとこと
プレイしている時ゲームだとわかっててもつい画面の前で身体を捻ってしまったスパ!そんくらいの再現度スパよ!