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ゲーム開発という仕事は「肉体労働」です。ケアもなくただひたすら働き続けていると、心身に変調をきたしてしまうこともあります。
しかし、現実は自分一人で悩みを抱えてしまう人も少なくなく、それが職場からの長期離脱につながることも。今回はCEDEC 2023で行われた講演「クリエイティブな現場における休職者の過去例と入社時のメンタルヘルスケア」から、ゲーム開発企業で実際に行われた社員へのケアや休職事例、復職までの過程を覗いてみましょう。登壇者はサイバーコネクトツー 業務部 ゼネラルマネージャーの吉満美希氏、同社業務部 企画課 チーフの百武由実子氏です。
リモート勤務で孤独感を覚える人も
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今回の講演では、サイバーコネクトツーで実際にあったことを例に取り上げています。
「メンタル不調で休暇を取得したスタッフの傾向として、昇格やプロジェクト異動に伴う環境の変化や、プライベートでの環境の変化、そして入社後の研修を経てプロジェクトに配属されてから半年~1年後という場合が多く見られました」(吉満氏)
その上で吉満氏は、一例を挙げます。実際に2ヶ月間の休職を取得し、復職時は時短勤務からスタートした開発者です。
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「産業医との面談の際、それまで携わっていたプロジェクトからの異動・変更も検討しましたが、本人の希望によりそれまでのプロジェクトを継続しました。復職直後は完全リモート勤務をやってみたものの、本人は独り暮らしだったこともあり孤独感でかえって体調が悪くなってしまいました」(吉満氏)
一般には「出社勤務よりリモート勤務のほうがメンタル面の負担が少ない」と思われがちですが、実はそうではないとか。中にはこの社員のように、孤独感に苛まれるケースもあるそうです。
現在は月1回の産業医との面談を行いつつ、1週間の中で出社勤務とリモート勤務を織り交ぜています。
まさか自分がメンタル不調に…
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次に、業務部デザイナーの30代男性(当時)の例を見てみましょう。
この男性、記事では「Aさん」と呼称します。Aさんは本来のデザイナー業務の他、キャリアアップのためにチーム管理業務も行うことになりました。これは言い換えれば、慣れた業務と不慣れな新しい業務に同時に取り組むことでもあります。
しかし、Aさんは上司に相談することができず、しかも周囲から「顔色が悪い」「溜め息が多くなった」と指摘されるまで「まさか自分がメンタル不調になるとは」という感じで自覚がなかったとのこと。周囲に勧められる形で心療内科を受診し、そこから休職に至ります。
休職期間中は、Aさんのかかりつけ医から会社へ診断報告をし、会社からは連絡窓口の総務スタッフのみがAさんに連絡を取るという仕組みを採用しました。即ち、「連絡は必要最低限にする」という配慮です。
約8ヶ月の休職後、Aさんの復職が決定します。しかし、いきなり元の業務に戻るわけではもちろんなく、まずは身近なメンバーでランチを一緒にすることで、本人には「会社に戻ってもいいんだ」と思ってもらったとのことでした。
否定をしない対話
休職から復帰後間もない社員との対話は、絶対に欠かせないものです。