昼間は連日30度超えとまだまだ残暑が厳しいですが、朝夕は少しづつ涼しくなり秋の訪れをうっすらと感じさせる今日のこの頃。今回はホラー作品をご紹介しようと思います。
ホラーと言えば夏が一番とお思いかもしれませんが、この時期に楽しむホラーもまた乙なもの。日に日に早くなる日没に全てが赤く染まる夕暮れ時に、あるいは月明りがにわかに雲に隠れ風にそよぐススキの海に鳴く虫の音がはたと絶えるのを聞きながら。
うっすら涼しくなった秋の風を感じつつのホラーゲームは、これもまた趣のあるものではないでしょうか?
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今回はWW1の塹壕を舞台としたサイコホラー『Ad Infinitum』をご紹介します。
フランスとドイツの睨み合いが続く西部戦線に通信兵として配属された主人公でしたが、敵塹壕への突撃を主体とする大規模攻勢「朝焼け作戦」が発動し、戦列に加わり徒歩での突撃を行うことに。
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銃弾が飛び交う戦場を進む主人公でしたが、最後は重砲の至近弾により吹き飛ばされてしまいます。
幸いにも即死ではありませんでしたが、鉄条網に包まれた状態で意識を取り戻した時には左手を失っていることに気づきます。そして絶叫しつつまた意識を失ってしまいます。
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再度気がついたのは、自宅の、それも自室のベッドの上でした。が、上階には謎の気配がうろつき言い争う父母の声が響き、そして声はすれども人影が見当たらないとどこか不穏な空気が漂っています。
主人公はゆっくりと起き上がると、自宅の中を歩きはじめるのでした。
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異形の怪物が奇声を上げつつ徘徊する霧がかり見通しの悪い塹壕と、不気味に静まり返った自宅。言いしれぬ恐怖を胸に2つの視点を行き来していると、夢と現実の境目が入り混じり不安になること間違いありません。
もしこれが夢なら醒めてくれ、もし現実なら―そんな感情を抱きつつ怪物に気づかれないよう慎重に先に進むこととなるのです。
戦場の悲惨さを物語るメモは必見!不穏な空気に負けず先に進むべし
まずはこのタイトル画面をご覧あれ。いいですよね、この雰囲気。
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飛行機や戦車、それに毒ガスと様々な新兵器・新技術が登場したWW1ですが、19世紀に登場した無線通信もそんな新技術の1つ。木製の外装に無数の極太端子、いい感じです。
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オプション設定はこんな具合です。「DLSS」や「FidelityFX」にも対応しているので、負荷に応じて設定するのがオススメです。
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ゲームが始まると、塹壕のなかの通信局から始まります。と言っても簡単な送受信機がある程度のほぼ1人用の区画といった場所ですが。
ドアの開閉やアイテムの取得といったインタラクト可能なものには、わかりやすくアイコンが表示されます。とりあえずぐるりと周囲を見渡して、それから受信機を使用します。
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どうやら作戦発動のようです、こんな塹壕戦で突撃主体の攻勢ですか。どうも嫌な予感しかしません。
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とにかく小銃を手に取り通信局を後にします。既に作戦は始まっているようで、四方から怒号と銃声、爆発が響き渡っています。
入り組んだ塹壕を進み、少し開けた場所に到着…と思った瞬間に突如轟音とともに吹き飛ばされてしまいます。
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気がついたら鉄条網の中、幸いにも即死ではなかったようです。ですが、とあることに気がついて絶叫しつつ再度失神することに。
次に気を取り戻したのは、自室のベッドの上でした。それも懐かしき自宅のです。どこからか父母の言い争う声が聞こえますが、戦場帰りからすればこれもようやく帰ってこれたことを実感させてくれるものです。
気がつけば見慣れた天井がそこに。ただ、喜べない不穏な空気が漂う自宅…
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しかし懐かしき自宅もどこかしら不穏な空気が漂っています。上階には謎の気配を感じますし、不安を掻き立てるメモもちらほら。どうやら相次いで我が子を亡くした母親は、精神を病み交霊術に傾倒していたようです。
とりあえず交霊の儀式を進めてみます、なにか手がかりがあるかもしれませんからね。
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交霊術師の指示に従って、儀式は滞りなく準備完了…ですが最後で衝撃の事実が明かされます。
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どうやら良からぬ存在を召喚してしまったようです。謎のマネキンは姿を消し、床には謎の引きずったような跡が長々と続いています。ボールも見当たりませんね。
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跡を辿って浴室へと向かうと、意味深に浴槽内にボールが。躊躇しつつ手に取ると…。
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気がつくと戦場に。少し進むと荒れ果てた町へと出ます。教会に噴水にと、平和だった頃の様子が偲ばれます。教会は正面扉に鍵がかかっているので、大きく迂回していくことに。
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さらに進むと怪物と初遭遇、一心不乱になにかを食べているようです。TIPSによれば、どうやら「飢餓」と呼ばれる怪物で、音を頼り行動しているとのこと。よく見かける鳴子や警報機などの使い方が鍵のようですね。
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物音を立てると手を突き出して手探りモードに、さらに接近して位置を特定されると飛びかかり攻撃を受けます。こうなるとスペースキー連打で脱出です!
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ようやく教会に到着、積み上げられた「飢餓」の山に、床下で何かをあやすようなフードの女性、そして正体不明の巨大な怪物と様々な異形が登場します。
クリーチャーデザインやサウンド面など光る部分多数!ただし、もう少し練り込みがほしい気も
と、このような流れで進んでいく本作。ジャンプスケアしかり突如消える照明しかり、ホラーゲームとしてはしっかり怖がらせてくれる作品となっています。
まずクリーチャーですがデザインが秀逸です。腹部が大きく膨らみやせ細った手足の「飢餓」に、正体不明ながらも大きく裂けた腹部から内臓がはみ出しているようなグロテクスなものなど、見ている者の不安を煽るおぞましさとなっています。
クリーチャー接近時の画面エフェクトと、入り組んだ塹壕という見通しの悪さとの相乗効果がなかなかです。「近くにいるし声もする、でも何処に?」そんな緊張感がとても素晴らしいです。
ただし、残念な点もあります。どうやら敵には行動半径が決まっているようで、必死に追いかけてきた敵が突然諦めたかのように帰っていくことがしばしばありました。こういった行動AIの甘さみたいなのは少し気になる点ではあります。
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あとサウンド面にも注目したいところです。特に手回し蓄音機から流れる戦時下らしい勇壮な楽曲や、自宅のオーケストリオンの音色は必聴ですね。
また、戦場の悲惨さを物語るメモも興味深いものばかりです。市民が避難した教会への攻撃の様子を書かれたものなどもあり、読み進めるだけでもこう胸にくるものがあります。
本作同様にWW1の塹壕を舞台としたホラーゲームでは、今年の6月6日発売の『Amnesia: The Bunker』が挙げられます。そして、こちらのプレイレポも筆者が担当していたということもあり、少し比較したいと思います。
『Amnesia: The Bunker』では、ほとんどが地下の掩体壕が舞台で武器などのクリーチャーへの対抗手段も存在しています。
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一方で本作では体験した範囲では武器は確認できず、もっぱらギミックを使用した誘導や徹底した隠密行動などが主体となっていて、さらに霧がかっているとはいえ空が見える開放感や鳥といった動物も存在しているなどやや雰囲気からして異なります。
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正直なところホラーゲームとしての質に注目すれば、『Amnesia: The Bunker』のほうがシリーズ作品として積み重ねた経験の差というべき完成度の高さを有しているように思います。
ですが、本作には本作なりに光る部分があるのもまた事実。まだまだ残暑の続く中秋の夜長に涼しくなれるホラーゲーム、なんていうのはいかがでしょうか?
スパくんのひとこと
WW1での西部戦線を舞台にしたサイコホラーの本作、怪物のデザインなどはなかなかのものスパ。ただ、できれば銃剣やら銃やらなにかしら対抗策は欲しかったスパ。FPSで鍛えたスパくんのHSテク、見せつけてやるスパ!(震えてぶれまくりのレティクル)
タイトル:Ad Infinitum
対応機種:PC(Steam)
記事におけるプレイ機種:PC
発売日:2023年9月15日
記事執筆時の著者プレイ時間:3.6時間
価格:3,900円