■『ヴィクセン357』
「ロボットもの+SLG」と聞けば、多くの方は『スーパーロボット大戦』を思い出すことでしょう。その始まりは1991年まで遡りますが、翌年の1992年に発売された『ヴィクセン357』も、「ロボットもの+SLG」のジャンルに登場しました。
こちらもOPはCGアニメで、動きこそ少な目ですが、一人ずつ姿を見せては消してを繰り返したり、最初にキャラを大きく見せた後に枠を出して収めるといった、こちらが自然と目を向けてしまう構成が光る映像です。


ゲームシステムは、マス目で区切られたマップを舞台に、ターン制で戦くポピュラーな形。ただし、パイロットと機体は自由に組み合わせることができ、エース級の機体を女性パイロットに任せるといったプレイも可能です。
また、機体によっては武装も選択できるので、射程の長い武装を揃えて遠距離戦主体で挑んだり、ダメージ重視で構成したりと、自分好みの編成で攻略する楽しみがありました。

そして特徴的だったのが、やられたパイロットや機体は、そのままロストする点です。やられる=死亡と言えば『ファイアーエムブレム』シリーズが有名ですが、『ヴィクセン357』でも同じような緊張感を味わいました。
このように個性をしっかりと持った作品だったのですが、まず難易度が高めで、爽快感よりも手間が上回るゲームバランスでした。戦闘シーンにおける機体の動きも乏しく、せっかくカッコいい機体に乗っていても盛り上がりに欠けてしまいます。

力の入れようを感じる部分はあるものの、ゲーム部分が万人に向けたものとは言い難く、やられる=ロストの厳しさも手伝って、本作の存在はどうしても埋もれがちでした。
ちなみに『ヴィクセン357』は、1990年に発売された『飛装騎兵カイザード』と同じ世界観を持つ続編的な作品でしたが、『飛装騎兵カイザード』はPCエンジンのゲーム。対するこちらは、メガドライブ向けでした。関連性はあるのに、機種をまたいでの展開だったのが、あまり知られなかった要因のひとつかもしれません。
■『ソーサルキングダム』

ここまで、マイナーな作品として2本をチョイスしましたが、それでも『アローフラッシュ』は魅力的なパッケージで、『ヴィクセン357』は『飛装騎兵カイザード』とのつながりで、ある程度の人が覚えているかもしれません。
ですが、RPGジャンルのマイナーゲームとして今回ピックアップした『ソーサルキングダム』は、そうした“目立つポイント”に恵まれておらず、見た目の地味さも手伝ってあまり知られることのない作品でした。

当時、RPGは非常に人気が高く、ヒット作が次々と生まれていきます。しかし、必然的に競争相手も多く、注目される作品がある一方で、その影に隠れてしまうものも少なくありません。この『ソーサルキングダム』も、そちら側に回ってしまったゲームです。
しかし、 1992年の発売から30年以上の時を経て伝えたいのは、『ソーサルキングダム』が持つ素晴らしい点の数々です。特に分かりやすいのがバトル回りのシステムで、本作はシンボルエンカウント制のターンRPGですが、敵と接触して戦闘に突入しても画面は切り替わりません。

本作におけるバトルは、フィールドがそのまま戦いの舞台になります。戦闘前は自由に移動できますが、戦闘が始まるとマス目を移動するタクティカルバトルへとシームレスに移行。敵の後ろに回りこんだり、味方同士で挟んだりしながら、隣接して接近攻撃を加えたり、遠距離から魔法を繰り出してダメージを与えます。
フィールドがそのままバトルの舞台になるシステムは、前例がないわけではありませんが、当時のRPGは移動とバトルを切り離すことが多く、この体験は刺激的でした。
また、経験値の概念がなく、主人公や仲間は冒険の過程で徐々に強くなっていきます。戦闘の結果でステータスが伸びることもありますが、いわゆる「レベル上げ」の必要性がない気ままさも嬉しいポイントのひとつです。

戦闘以外のシステムでは、プレイヤーへの気配りを感じる箇所が多く、まずキャラクターの歩く速度は速めで移動に関するストレスはありません。そして住人に話しかける時は、接触するだけでOK。一般的なRPGにある「ボタンを押して話しかける」という手間がないので、情報収集も実にスムーズです。
ありふれたものではないバトルシステムや、遊びやすいシステム周りなど、感心する点が多い『ソーサルキングダム』。そんなゲームがなぜ、知られなかったのか……と嘆きたいところですが、ストーリーの弱さが大きな要因だったと推測しています。

特に大きな問題がある、というわけではないものの、RPGにおいてストーリーの重要性は問うまでもないほど。それは今も昔も変わらないので、嘆きとしては「もっと盛り上がる物語だったら……」という思いの方が強い作品でした。