浅い岩礁の中にぽっかりと空いた奇妙な穴、底知れぬ深い藍の向こうには危険な深淵が口を開けて待ち構えている……『デイヴ・ザ・ダイバー(DAVE THE DIVER)』はそんな謎めいた場所「ブルーホール」が舞台です。ブルーホールは海中にできた縦穴の地形で、周囲に比べて穴の中の海水が青く見えることから名付けられました。
水の流れの影響で入り口がきれいに丸くなる場合が多く、上空から撮影するとまさに絶景。観光名所として高い人気を誇ります。潮の影響もないので格好のダイビングスポットになるブルーホールは、長い年月をかけた生物の営みと浸食の結果で作られています。その成り立ちのプロセスを見ていきましょう。

まず、ブルーホールができる地形の条件は炭酸カルシウムでできた「石灰質」であること。浅瀬の珊瑚が土台として作る珊瑚礁が分厚く成長し、時にキロメートル単位までなる石灰質の地層がまず作られます。地盤の隆起や海水面の低下で地上に露出すると、酸性の雨水や地下水に溶けやすい炭酸カルシウムが流れ出して鍾乳洞、そして秋吉台や『FF14』のラノシア地方のような、なだらかな起伏や急な陥没が多いカルスト地形を形成します。海中にあるだけでは浸食が進まず、カルスト地形はできないのがポイントです。

鍾乳洞は蟻の巣のように入り組んだ構造に発達します。探索に数ヶ月はかかるような超巨大な洞窟は、天井まで100メートルを超えるほどの空間ができます。石灰質は脆く雨が流れ込んでひび割れが起き、支えきれなくなった天井が一気に崩落。こうしてできた縦穴をシンクホール(ドリーネ)と言い、再び地盤が下がって海水が流れ込むと「ブルーホール」ができるのです。
中南米は陸上のシンクホールが多く、これらを「セノーテ」と呼び、メキシコのマヤ文化ではセノーテと鍾乳洞を冥府と繋がる道として神聖視していました。雨乞いで捧げ物を投げ入れる中に生贄もあったようで、調査をするとそれらしき人骨が見つかりました。
横穴が海に繋がって、真水と海水の2層になっていることもよくあります。「Holocline」と呼ばれるこの現象は、比重の違いで境目にうっすらもやが張り、不透明になっている場所ではまるでダイバーが砂の中に沈んでいくように見えるのです。
近年見つかった最深のブルーホールは東シナ海のパラセルにある「龍の穴」で、深さは約300メートル。『デイヴ・ザ・ダイバー』のブルーホールほど深いものはまだ見つかっていないものの、鍾乳洞の広がりを考えれば、龍の穴よりももっと深いものが出てくる可能性は十分あるでしょう。

ゲーム内で読めるメールには実在のダイビングスポットが紹介されています。こちらは第1回の沈没船「シスルゴーム(Thistlegorm)」の映像。沈没船は小さい魚にとっては絶好の住処になり、朽ちていく人工物とそれを飲み込んでいく自然のコントラストが面白いですね。
2回目で紹介されているのはコスタリカのバホ・アルシオーネ。シュモクザメを初めとした様々なサメがひしめいています。ほとんどは穏やかな性質なので、下手に刺激しなければ至近距離で観察が可能です。
マリアナ諸島にある「ロタホール」は、最も美しいダイビングスポットと評される奇跡的な光景です。狭い縦穴に横から入っていくと、真上から真っ直ぐ光が差し込んできて、スポットライトのように海底を照らし出します。水中は透明度が高く、何もいない静かな空間をゆらゆらと青い光が靡いている。この景色は『クロノ・クロス』のタイトル外面のモチーフになりました。
光の届かない向こう側の世界に人間は神秘性を感じ、冒険家は未踏の地へ踏み込む。その向こう側には我々の常識を越えた何かが潜んでいる……かも?