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『FF7』原作は未プレイ、『FF7 リメイク』のプレイ時間は1時間未満という筆者による、ちょっと変わった視点からの『FINAL FANTASY VII REBIRTH』(以下、『FF7 リバース』)レビューをお届けします。
筆者はRPGもオープンワールドゲームも好きで、ゲームライターとしても様々なゲームを手に取ってきています。ただし『FF』シリーズは実はあまり触れておらず、『FF5』と『FF6』をプレイしてから次の『FF』に触れるのは『FF13』という隔たりがあります。
『FF7』はその人気ぶりから『キングダム ハーツ』シリーズや他作品にもキャラクターが出演しているので間接的には触れていますが、本編そのものには触れたことがありません。関連シリーズも『FF7 AC』を視聴しただけで、ある程度の知識はあるけれど本筋は知らないという程度です。
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『FF7リメイク』が発表されてから発売されるまでの間、筆者は当時のゲームショーに行くたびに新トレイラー発表を現地で観ていたので、同じ会場にいたファン達の熱に当てられて『FF7リメイク』が発売したときは初日購入したのですが、PS4 Proでのカクツキと30fps制限に画面酔いしてしまい最初のボス戦でゲームを終了してしまいました。プレイしたのは1時間にも満たず、これではプレイ済みとはとても言えない程度です。
このように、筆者には『FF7』に特別な思い入れがないので『FF7 リバース』はスルーしようと思っていたのですが、先行プレイをしていた知り合い達からオススメされた点、本作がオープンワールドに変化した点から興味が湧き、発売4時間前に購入を決意しました。クリアまでにかかった時間は80時間です。
原作を知らないとストーリー序盤の盛り上がりは抑えめ
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『FF7 リバース』のストーリーは、原作や前作の知識をある程度持っていないと置いてきぼりを食らいます。前作のダイジェストをゲーム内から視聴できますが、『FF7』という世界観を完全に把握するには少し足りないレベル。シーズンドラマを途中から鑑賞し始めるようなものなので、仕方がありません。ダイジェストの存在に気づいたのは終盤になってからだったので、これは自分の落ち度ですね。でも、ゲームが面白くてタイトル画面に戻ることがなかったので仕方がないのかもしれません。面白すぎるのが悪い。
ユフィについては、キャラクターとしての背景がほとんどわかりません。ダイジェストでは前作本編しか説明されないので、DLCのユフィ編はノータッチだったのです。最初はユフィが自分から旅に出たのだと思っていましたが、終盤で「任務」と言い出して、自分の認識がずれていたことに気づきました。このあたりはフォローがもっと欲しいところでした。
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ストーリー序盤には「神羅から逃げつつセフィロスを追いかける」という目的があるのですが、神羅は執拗に追ってきているわけではなく、セフィロスを追跡しようにも彼を捕まえて何をするのかぼんやりとしていて、イマイチ掴めません。 各クエストをこなすことに夢中になっていると、旅の目的を忘れることがしばしばありました。
正直に言うと序盤はストーリーへの理解度が低いことから本筋を進めたいというモチベーションが湧かず、サイドクエストやオープンワールド要素ばかり追いかけていました。しかし中盤あたりでボンヤリしていた目的が「黒マテリア」で明確にされてからは、本筋の面白さが急加速します。
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同じタイミングで、エアリスが古代種ということで迫害され、普通の生活への憧れを吐露するシーンがあります。筆者自身が日本で暮らす日本人という「マジョリティ」と、現在はアメリカで暮らすアジア人という「マイノリティ」というどちらの立場も体験していることから共感しやすく、エアリスという思い入れのあるキャラクターが定まったことでエアリスの生死が気になり、ストーリーに没入して一気にエンディングまで進めるようになりました。
ところが、エンディングに到達すると筆者は冷めてしまいました。正確にはエンディング直前。
実はラスボス戦でボスが無敵になるバグに遭遇してしまい、戦闘をやり直してもバグが再発するのでチャプターごとやり直すハメに。せっかく盛り上がるところだったのに最悪の展開です。結局その日はモチベが上がらず翌日にやり直して、 ようやくバグを乗り越えたら今度は安直な某エンドゲームのオマージュ演出で、ますます冷めてしまいました。
しかも「マルチバース」展開を示してしまったので、最終作でうまく風呂敷を畳めるのだろうかという疑問も湧いてしまいました。
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総じてストーリーは各キャラのエピソードをしっかりと描いているものの、当然ながら原作ファンに向けた作品なので、原作を詳しく知らない身としては勉強不足による隔たりを感じてしまい、不完全燃焼感が残ります。 しかし、全3部作の2作目ながら1本の単体作品として見ると、クライマックスはちゃんと用意されていて、ファンなら考察が捗るエンディングなので、今後への期待も高まる終わり方だと思います。
『FF7 リバース』の良かった点
ド派手でやりごたえのある戦闘
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ストーリー部分では最後の最後に冷や水を浴びせられてしまいましたが、本作を通して「戦闘」と「オープンワールドのマップデザイン」、ミニゲームの「クイーンズブラッド」はとても楽しめました。
戦闘は最初は慣れが必要なものの、最初のエリア「グラスランド」を越える頃にはすっかりと馴染み、サクサク進めるようになりました。難易度は「ADVANDED」でしたが、無心でボタン連発をしているだけでは苦戦するものの、しっかりとガードや属性を駆使すれば大ダメージを叩き込めるメリハリと手応えのある戦闘のおかげで、敵を見つけると喜んで戦いに行くくらいにはハマりました。強敵の召喚獣「オーディン」にクラウドだけで勝てたときの達成感は本作で一番印象に残っています。
80時間プレイしていて戦闘そのものはずっと楽しめました。
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要望を挙げるとすれば、戦闘時でもメニューからオプションを開いたり、マテリアの付け替えくらいはできると嬉しかったですね。キャラが固定されたときに「みやぶる」や弱点属性の魔法を付けていなかった時に、戦闘をやり直して装備を変更するのは面倒でした。
そして、戦闘中にスキップできないムービーを挟むのはやめていただきたい。戦闘フィールド切り替えのロードなど制限があると思うんですが、再挑戦時に同じムービーを見せられるのは退屈です。画面暗転でもいいので、次作ではスキップ実装を強く要望します。
また、エフェクトが派手過ぎたのか2回のエラー落ちに遭遇しました。 エラー落ちは「80時間で戦闘中の2回のみ」と捉えるか、「たしかにエラー落ちはある」と捉えるかはアナタ次第。
ワクワクが詰まったオープンワールド
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オープンワールドは各エリアごとに特色が変わり、新エリアを訪れると何があるのだろうかという期待でワクワクさせられます。冒険を描くRPGはこういう部分がたまりません。 本作は広大なエリアをシームレスに移動できるので、冒険感がより高まります。
最初は徒歩で始まる探索もすぐにチョコボに乗れるようになり、一気に快適に。ほぼ全てのロケーションがファストトラベル出来るようになる点も高評価です。 各エリアごとに違うチョコボを用意することで、単一になりがちな移動にバリエーションを持たせて飽きをこさせない工夫もグッド。ニブルエリアの海チョコボはホバリングが出来るので、他エリアよりもレベルデザインが複雑になるはずが、破綻することなくしっかりと作られているのにはとても感心しました。
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ただしゴンガガエリア、テメーはダメだ。
このエリアでの探索はキノコによるジャンプが要求されてうまく進めず、道は細いのでチョコボを走らせるとすぐに衝突。探索するにもストレスが溜まり、さっさとストーリーを進めて次のエリアに行こうと初めて思わされました。このマップのBGMはノイローゼになりそうだったので、BGM音量をゼロにした唯一のマップです。
単体リリースしてほしいほど楽しめた「クイーンズブラッド」
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ストーリー本編よりもハマっていたのがカードゲームの「クイーンズブラッド」。『FF7 リバース』は大量のミニゲームも用意されていますが、「クイーンズブラッド」はミニゲームどころか独立したコンテンツとしてもリリースできそうなほどの作り込み。 新エリアや新チャプターに入るとまず先にしたことはクイーンズブラッドの対戦相手とショップでの新カード探し!星の生命を救うことよりもバウターの頂点を目指すことを何よりも優先するクラウドにセフィロスも困惑したはず。
ミニゲームなのにストーリーまで用意されており、最初は楽しいカジュアルな雰囲気から次第に命を懸けた決闘に発展していくなど、まるで遊戯王のようなストーリーも展開されます。 豪華客船での和気藹々とした大会は必見。非常に楽しませてもらえました。「クイーンズブラッド」をスマホアプリで出してくれませんかね。
『FF7 リバース』の不満点
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『FF7』をよく知らない筆者の視点からのキャラクターや世界観への説明はもう一つ欲しいなと思いましたが、そこはあまり大きな不満ではありません。評価に響いた影響はなし。 それよりも多大なストレスを感じたポイントがありました。 それはテンポの悪さ。
探索やクエストをこなしていると、たびたび△ボタンやL2長押ししながらの作業などが要求されるのですが、これがとにかくテンポが悪い。
たとえばチョコボストップというファストトラベルスポットでは、△を長押ししてバス停の標識を持ち上げるのですが、長押しさせられる時間が少し長いんですね。チョコボ騎乗時だと持ち上げる速度が早くなるので、その代償として非騎乗時だと長めのアニメーションになっています。 どちらも同じ短さで持ち上げられるようにすればよかったのでは? そもそも長押しする必要はないのでは? 「△ボタンを押したらそれで完了」の方がよかったです。
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ボタン長押しが要求される箇所は他にも多々あり、たまにボタンUIの反応がよすぎて長押しが認識されず、チョコボストップだとクラウドが標識を持ち上げようとする→手放す→少し待機アニメーションが入る→また持ち上げられるようになるまでディレイがあるという、無駄な時間の流れが発生してしまいます。 1回の流れではわずか数秒ですが、これが何度も何度も積み重なると大きなストレスになっていきます。とくに80時間もプレイしているとそれだけ小さなストレスも溜まっているわけです。
他にも、探索中にギミックのテンポが悪いと感じました。一回一回の動作が遅いクライミングだったり、チョコボに隠れて近づいたり、汚染ガスを吸引したり、プラットフォームを形成する素材を集めるために毎回△を長押ししたりスティックを回したり、せっかく物語が盛り上がってドンドン先に進みたいという欲求を邪魔してくる要素が多いのです。△長押しやスティックグルグルに、達成感や喜びはあるのでしょうか?
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チャドリーのバトルシミュレーターも、テンポの悪さが目立ちました。バトルシミュレーターを利用するためには、チャドリーに話しかけてセリフを聞いて、バトルシミュレーターを選択してアニメーションを見なくてはいけません。 アニメーションはバトルシミュレーターのアセットを読み込むために必要なのだとは思うのでそれはいいとして、問題はバトルシミュレーター内で装備を付け替えられない点です。 装備を変えたいなら、いちいちバトルシミュレーターを閉じてセリフを聞いてチャドリーに話しかけられるようになるまで待ってからまた話しかけ、一連の流れを待たなくてはいけません。 やはりテンポが悪いと感じてしまいます。
総評
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『FF7』未プレイではストーリーが少しだけ分かりにくい点もありましたが、オープンワールドゲームとして非常によく出来ており、『FF7』ファンでなくても楽しめる秀逸なクオリティです。 しかし当然ながら不満な点もあり、80時間も楽しめるだけのボリュームがあるからこそ、小さなストレスも積み重なっていくわけです。 しかし、それだけで本作をオススメできないということは全く無く、筆者と同じように『FF7』も『FF7 リメイク』も未経験だけれど興味があるという方もプレイされてはいかがでしょうか。
良い点
・戦闘がサクサクした快適感とやりごたえを両立していて楽しい
・『ファイナルファンタジー』に求められる圧倒的なグラフィックをクリアしている
・オープンワールドに配置された途方もないボリュームの遊び要素
・ストーリーには1本の作品としてのクライマックスあり
悪い点
・ミニゲーム要素がストーリーに絡んできてナラティブのテンポが悪い
・オープンワールド散策ゲームとしてはアニメーションのテンポが悪い
・ゴンガガ